「ちゃんと勉強させてくれる学校」を選ぼう…後藤卓也

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自ら進んで勉強する子は300人に1、2人の現実

 最近はたいていどこの学校説明会でも、「日本の労働人口の49%が人工知能(AI)やロボットに取って代わられる」という英オックスフォード大のオズボーン博士らの論文が引用されます。そして、「主体的・対話的な学び」と「答えのない問いへの取り組み」の必要性、短期留学プログラムや「グローバル・リーダーの育成」という教育目標が語られます。

 「2020年、戦後最大規模の教育改革が行われる」というキャッチコピーも見かけます。でも、小学校の英語を週2時限に増やしたり、ICT(情報通信技術)を導入したり、センター試験で英語の「4技能」の力を問うことで、本当に教育は抜本的に改革されるのでしょうか。

 「主体的な学び」や「グローバル化」という方向性については、異議はありません。私が懐疑的なのは、教育現場に対する現状認識と、それらの教育目標を実現する具体的な方策に対してです。

 進学塾に通う子供たちは、同年代の小学生と比べれば基礎学力も学習意欲も高いはずです。それでも「自ら進んで勉強する子」なんて、6年生でも1割程度。個人面談ではほとんどの保護者から「親の言うことは聞かないので、先生から厳しく言ってください」と懇願されます。彼らはまだ幼いので、私たちの言葉には耳を傾け、宿題もそれなりにやってきます。しかし、中学受験を終えた後も、「この子ならちゃんと自分で勉強するだろう」と確信できる教え子は、1学年300人の中で1人か2人でしょう。

 中学受験という厳しい関門をクリアし、塾教師という「手強(てごわ)い大人」の手を離れ、しかも親の言うことはますます聞かなくなる。そんな彼らが、「答えのない問い」に向かって、あるいは「グローバル・リーダー」という遠い目標を目指して、主体的に深く学ぶようになるのでしょうか。

 学校説明会で語られる教育理念や学習プログラムが、より素晴らしいものになればなるほど、「絵に描いた餅」という言葉と、現場の先生たちの苦労が脳裏をよぎります。それよりも、まずは「ちゃんと勉強させること」を第一に考えるべきではないのか。ちゃんと勉強させてくれる学校を選ぶべきではないのか。今回はそんな観点から、いくつかの学校を紹介してみようと思います。

「お呼び出し」や昼休みテスト、細やかな指導の女子校

光塩女子学院と晃華学園では、一人一人の生徒にきめ細かい指導を行っている(写真はイメージです)
光塩女子学院と晃華学園では、一人一人の生徒にきめ細かい指導を行っている(写真はイメージです)

 「塾(啓明舎)のように、いつも一人一人に声をかけてくれる学校」を希望する保護者に、いつもお薦めしているのが光塩女子学院(東京都杉並区)です。1学年4クラスを6人の教員チームで担当する「共同担任制」が光塩ならではの指導方法。年に3回実施される個人面談は毎回異なる担任が行い、毎週のようにチーム内で意見交換をすることで、1人の生徒をいろいろな視点から見守り、指導していくのが目的です。

 数学は週1回、国語と英語は隔週で小テストを実施し、合格点に達しない場合は直しノートの提出や再テストを行います。毎週水曜日の6時限目の「お呼び出しタイム」では、マンツーマンに近い状態で補習が行われます。さらに、期末テスト後のテスト休暇中も「お呼び出し」があり、お弁当を持って学校に通い、宿題や直しノートが終わるまで、教員の監督のもとで「勉強させてもらえる」という徹底ぶりです。

 こうした指導ができるのは、1学年140人×中高6学年に対して、教員数が80人(うち40人が専任教師)と多く、教員1人あたりの授業時間数が他校に比べて非常に少ないから。その分「共同担任制」のチーム内での意見交換や、「お呼び出し」指導のための時間を確保することができるそうです。

 同じカトリック系の女子校である晃華学園(東京都調布市)は、1学年の生徒数も光塩とほぼ同数。今年久しぶりに訪問して、詳しくお話を伺いましたが、細やかな指導という点でも、光塩と同じく「安心して我が子を預けられる学校」だと確信しました。

 ちょっと変わっているのは、午前中の授業が3時限で終わり、午後も3時限という時間割。通学時間の長い生徒が多いため、ランチタイムを早めているそうです。しかも昼食休憩が50分間とやや長めなのですが、小テストの不合格者はランチタイムの休憩中に15分間の再テスト。不合格が2教科重なると、20分で食事を済ませて再テストのかけもちになります。

 「ゆっくりお弁当を食べさせてあげたいという思いもあるけれど、放課後に再テストを行うと部活や委員会活動に支障をきたすからです」(富井尚子先生)

 習熟度別の授業や進路別の選択制授業も非常に充実しているのも晃華の強みですが、そうしたきめ細やかな指導を支えているのはやはりマンパワーです。1学年約150人×中高6学年に対して、専任教師57人、講師29人。人数だけで評価するのは失礼かもしれませんが、専任教師が多いのは、保護者にとってやはり安心感があります。

宿題終わるまで居残り、小テストにも厳しい男子校は?

 「宿題が多い」「指導が厳しい」男子校といわれて、多くの方が思い浮かべるのは巣鴨(東京都豊島区)ではないでしょうか。 「定期試験の結果を全科目、1位から最下位まで点数順に廊下に掲示する」という古き伝統は廃止され、定期試験の結果掲示は「成績上位者のみ」。ただし、ちゃんと勉強すればできるはずの小テストの結果に関しては、全員の成績が掲示され、もちろん再テストや補習が待ち受けています。

 とはいえ、女子に比べて精神的な成長が遅く、学習習慣が身に付いていないのが男子中学生です。「一番大切なのは家庭学習の習慣を付けること」(大山聡先生)。そこで宿題をやってこない生徒は、最長で夕方6時まで居残り。教室の中だと遊んでしまうので、廊下に1列に並べられた机で、宿題が終わるまで勉強させるそうです。「親がいくら言っても勉強しないので」というご家庭にとっては、ありがたい学校だと思いませんか?

 巣鴨に比べると、自由でのびのびしたイメージのある城北(東京都板橋区)でも、やはり宿題が終わらない生徒は、職員室前に並べられた机で、居残り勉強をさせられます。始業15分前からの小テストは、その日のうちに採点され、不合格者は再テスト。それでもダメなら始業30分前から早朝補習。昼休みにテストの採点をするのも、早朝補習をするのも、教師一人一人の自己判断だそうです。

 「『働き方改革』でいろいろ難しくなっている」とのことですが、これからも生徒と保護者のために頑張ってほしいと思います。ちなみに、私の知る限り、塾や予備校に通っている生徒の割合がもっとも低い男子校が巣鴨と城北の2校です。

「地道に」勉強や宿題させる工夫、学校はもっとアピールを

 今回は、私たちの塾からの進学者が多く、内部事情がよく分かる学校と、たまたま最近取材する機会があった学校から4校選んだだけで、他にも生徒1人あたりの教員数が多い学校や「ちゃんと勉強させてくれる学校」はたくさんあるでしょう。ただ、そうした情報がなかなか伝わってこない。

 説明会で「しっかり勉強させるため」「ちゃんと宿題をやらせるため」にどんな工夫(苦労)をしているのかについて、語られるのを聞いたことがほとんどありません。学校ホームページやパンフレットを見ても、小まめな小テスト・再テスト、宿題チェック、呼び出しや居残り補習などについての記載はありません。「塾や予備校に通っている割合」についても、せいぜい「学校の勉強をちゃんとしていれば、予備校に通う必要はありません」という紋切り型の「Q&A」が掲載されている程度です。

 今回取り上げた4校を「ちゃんと勉強させる学校」という側面だけで評価するのは失礼でしょう。無理に背伸びをさせず、「あるがままの自分」を受け入れ、認め合うことを大切にする光塩の教育理念。都内女子校の中では最高と言える、緑豊かで光あふれる広々とした晃華の教育環境。

 また、オックスフォード大学との友好関係によって、世界のトップエリートと過ごすサマースクールを実現させた巣鴨(詳しくはこちらをご一読ください)。子供の学力や性格を問わず、啓明舎の卒塾生保護者から、もっとも高い評価を受けている城北の懐の深さ……。

 それでも私はやっぱり、生徒たちにしっかり勉強させ、ちゃんと宿題をやらせるという「当たり前のことを地道に続けている学校」として、この4校がもっと評価されるべきだと思います。そして、学校側もそのことをちゃんとアピールしてほしいのです。

プロフィル
後藤卓也( ごとう・たくや
 啓明舎塾長。1959年愛知県生まれ。東京大学教育学部博士課程修了。1984年の啓明舎設立当初から時間講師として勤務。2年間の西ベルリン(当時)留学経験の後、再び啓明舎へ。94年から塾長。主な著書に「秘伝の算数(全3冊)」(東京出版)、「新しい教養のための理科(全4冊)」(誠文堂新光社)など。

 

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637193 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/06/18 05:21:00 2019/12/19 15:02:59 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190613-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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