際立つコース制、チャレンジする私学…森永直樹<2>

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 関西の私立中高の特長の一つに、コース制をとっている学校が多いことがあげられます。

 このコース制は高校で文系・理系に分かれるという次元のものではなく、目指す大学の難度の違いに対応するためや、より個性ある教育を実現するために設置されています。

 進学校では、難関国立大学または医学部進学を目指すコースと、その他の中堅国公立大学や人気私立大学進学を目指すコースに分かれ、前者に「特進」や「医進」、後者に「進学」や「総合進学」という名称が付いています。

 大学付属校では、他大学進学(国公立大学)を目指すコースと内部進学前提の下で特長ある教育を実践するコースに分かれ、それぞれ工夫した名称が付いています。

 未来に向かってチャレンジする私学。今回はコース制をとっている学校の中から、際立った特長をもち、孤軍奮闘する3校を紹介いたします。

1期生が来年度入試を迎える四天王寺「医志コース」

 1校目に紹介するのは、大阪市の女子校、四天王寺高等学校・四天王寺中学校です。

 関西では、医学部に合格する学力を付けるという教育目標の下、「医進コース」の名称を付けている学校がいくつかあるなか、同校は「医志コース」と名付け、医療を志す基盤としての心構えを、仏教教育や教養的でアクティブな放課後講座などを通して築きながらも、最高レベルの学力を身に付けることを目標に置いています。

 この「医志コース」は天才的な生徒を育てることが目標ではなく、従来通りの四天王寺生の強みである、真摯(しんし)に地道に勉強を積み重ねる能力を高めることを目指しています。「取り組み方の質と量が大切である」ということを確信して努力を積み重ね、クラスの仲間たちと励まし合いながら真の学力を養成。最高峰である難関大学の受験を突破し、その先に続く高度な学問研究に耐えうる知性を身に付けることが、究極の目標と考えられています。

 また大学新入試に向けては、これまで通り「知識をきちんと学習し、知性を重んじる」ことを大切にしたうえで、時代の流れに負けないようにeラーニングの教材の導入や、「SLICEプログラム(ハーバード大学生との校内英語研修)」に向けて、「総合英語コース アカデミック」を全員受講させるなど、対応が進んでおります。

 「医志コース」の1期生は高校3年生になりました。模試の結果だけで成果を確認することはできませんが、上位者の順位やコース平均において順調に推移しており、来年度の大学入試では、これまで以上の結果が予想されます。

 医学部進学者が最も多い女子校の「医志コース」。医学部への合格実績に加え、卒業生の進学後の活躍が期待されています。

21か月の留学がある清風「国際6か年コース」

清風中学校・高等学校の「国際6か年コース」では、留学期間は21か月だ(写真はイメージです)
清風中学校・高等学校の「国際6か年コース」では、留学期間は21か月だ(写真はイメージです)

 2校目に紹介するのは、同じく大阪市の男子校、清風中学校・高等学校です。

 英語を話す人材ではなく、英語で日本を語ることのできる真の国際人を育てることを教育目標とした「国際6か年コース」が昨年、新設されました。

 清風らしく「人間の根っこを鍛える」というコンセプトの下に作られた募集定員わずか5人のコースで、入学するためには高い学力が求められます。

 コースの特長は、1.長期の留学、2.厳選した留学先、3.徹底した日本文化の学習、4.日本の先端技術の体験、5.高レベルの英語教育、の五つ。中でも際立った特長である「長期留学」と「日本文化の学習」について紹介します。

 まず「長期留学」ですが、他校の国際コースよりはるかに長い21か月という留学期間で、中3の7月から高校1年生修了の3月までとなっています。初めの2か月は留学先の国にある語学学校に入学し、英会話力を磨いて留学の準備を整えます。その次の19か月間の留学で自立した国際人を目指します。トップ層が集まる学校で切磋琢磨(せっさたくま)しながら英語力と人間力を鍛え、寄宿舎生活を通して自立した個の力が磨きます。

 次に「日本文化の学習」では、留学先で美しいお茶のお点前(てまえ)ができるようになることを目標に、茶の湯の稽古と講義が昨年は合計42回実施されています。他にも狂言鑑賞や本格座禅体験、伊勢神宮(みそぎ)体験など、国際コース独自の体験学習が行われています。

 1期生(中学2年生)の近況を伺うと、生徒たちは日本を代表する国際人になろうと真面目に取り組み、この1年で大きく成長し、1年後に迫った憧れの留学生活を胸に元気に学校生活を送っているそうです。

 高い学力を備えた生徒がこの6年間を通して、どれだけの成長を見せてくれるのかが本当に楽しみなコースです。

CEFRのB2レベル以上目指す松蔭「GS」「GL」

 3校目に紹介するのは、神戸市の女子校、松蔭中学校・高等学校です。

 「英語に強くなる松蔭」のキャッチコピーで学校改革を進めている同校では、2020年中学入学生から、「中学校グローバル・ストリーム(以下GS)」と、それに続く高校課程「グローバルリーダー・コース(以下GL)」が設置されます。

 中学GS、高校GLは、国内外で活躍する人材を育成するために、従来の学校の枠に(とど)まらない多角的な教育コンテンツを積極的にカリキュラムに組み込み、他校にはない特色あるグローバル教育を展開するものです。以下、その教育の特長を一部紹介します。

 一つ目は、「ICT English」です。ICT機器を活用し、オンラインでの外国人との英会話とAI(人工知能)によるスピーキングに取り組みます。この授業は、中高6年間で毎日継続され、中学段階(GS終了時)で日常会話に不自由しない英語力を、高校卒業段階(GL終了時)でCEFRのB2レベル以上、英検準1級・1級レベルの英語力習得を図ります。

 二つ目は、インターナショナルスクール提携授業「Global English Saturday School」です。この授業は中学GSで毎週土曜日(年間約32日)に実施されます。英語イマージョン環境の中で、インターナショナルスクール同様のプロジェクト型学習が行われます。

 このほかにも「GL探究」や「人間力養成講座」など、これからの時代に必要とされる力を養成する講座や、さまざまなプログラムの海外研修旅行が用意されています。

 高校卒業後の進路としては、国内の国際系学部や併設大学の英語教育専門課程、海外大学への進学が想定されます。

 入学後の教育を見据え、入試は英語1教科で行われます。小学校でも英語が教科化されるタイミングとも重なり、注目のコースとなるでしょう。

 以上3校について紹介してきましたが、コース制をとってまだ間がなく、成果が確認できるのはこれからです。特に最後に紹介した「松蔭のGS」は来年度からスタートしますので、最初の卒業生が出るまでに6年かかります。それでも期待してしまう中身だと感じています。

 他にも魅力あるコースを持つ学校があります。多くはここでは紹介できませんが、独自のメソッドで海外の大学進学を視野に入れたグローバル教育を実践している花園中学・高等学校(京都市)の「スーパーグローバルZENコース」や独自のSTEM教育をベースに、国公立大学を目指す甲南高等学校・中学校(兵庫県芦屋市)の「フロントランナー・コース」にも注目しています。

プロフィル
森永 直樹( もりなが・なおき
 株式会社日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを歴任。現在は教室と広報セクションを統括しながら、学校・教育情報を発信している。私学教育の魅力を伝える講演など中学受験イベントに多数出演。

無断転載禁止
661659 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/07/03 05:21:00 2019/07/03 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190624-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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