動き出したミッション・スクール…北一成<5>

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 毎年中学入試では、多くの私立中がさまざまな入試変更を行い、それによって人気動向や各校の入試の難易度が変化しています。

 そうした変動が常態化している中でも、この1、2年目立っているのが、キリスト教系の私立中(ミッション・スクール)と仏教系の私立中の動きです。

 こうした宗教系の学校は、変わらぬ理念や校風、行動規範を大切にしている伝統校が多く、入試変更が当たり前になっているこの三十数年で見ると、中学入試の世界では、どちらかというと保守的で、あまり入試も「動かさない」学校が多かったように思います。

 しかし、この1、2年はそうした従来の印象を変えるかのように、キリスト教系の私立中と仏教系の私立中が一斉に、多様な入試改革に踏み切っているのです。

 今回は、そのうちキリスト教系の私学について注目してみたいと思います。

日本の近代教育を支えてきたキリスト教私学

 まず、キリスト教系の私学の多くは、明治の初期から日本の近代教育の一角を担い、現在の私立中高一貫教育の礎を築いてきたと言ってもいいでしょう。とくに女子教育においては歴史の大きな流れをなしてきたと言っても言い過ぎではないはずです。

 「日本最古の女子校」である女子学院やフェリス女学院は、すでに150年近い歴史を持っていますし、雙葉や白百合学園の系列校も、明治の初期にその歴史をスタートさせています。

 鎖国期の江戸時代から明治維新によって近代国家へ歩み出そうとした日本に、キリスト教主義と民主主義の息吹を吹き込もうと、宣教師や神父、修道士、修道女がはるか遠くから海を渡り、この国に教会や学校を作ることで、その芽を育てていこうとしたわけです。そして営々と現代に至るまで、キリスト教主義に基づく、変わらぬ理念の下で教育活動を続け、多くの卒業生を送り出し、その教育成果に対する世間の評価を高めてきました。

 今でも全国の大都市圏で、キリスト教系(主にプロテスタント系とカトリック系)の私立中高一貫校の多くが人気を集め、入試の難易度もトップレベルに位置しているのは、こうした歴史の中で積み重ねてきた成果や評価があったからでしょう。

学校数の増加で注目度が低下

 しかし、近年(この十数年くらいでしょうか)、こうした伝統や高い評価を持つキリスト教系列の私立中高一貫校の中にも、人気の低下や志願者数が減少する傾向が見られるようになりました。

 理由は定かではありませんが、一つ考えられることは、この三十数年の間に、首都圏だけでも100校以上の私立中学校、公立中高一貫校が新たに開校したことです。受け入れの間口が広がるにつれて生徒募集活動の競合は激しくなります。広報活動やさまざまな情報発信に力を入れる私立中が増える一方、どちらかというと広報活動に消極的であった多くのキリスト教系の私立中は、相対的に注目度が下がってしまったということなのかもしれません。

 小学生の保護者も年々新しい世代になってくる中で、旧来の伝統や知名度よりも、新たな教育や変化、話題性がある私立中を好む保護者が増えてきたとも見られます。

 こうした流れに抗するように、キリスト教系の私立中も多くはこの1、2年で様相が変わり、広報活動や入試改革にも積極的に取り組むようになったのです。

入試日程・内容や学校改革にも大きな流れ

今春から午後入試を新設した晃華学園の校舎
今春から午後入試を新設した晃華学園の校舎

 プロテスタント系のフェリス女学院は、2018年度から外部での相談会などにも参加したり、積極的に広報活動をしたりするようになり、今春の入試では志願者数が目立って増えています。また、同じプロテスタント系の香蘭女学校も2月2日の新設午後入試で730人以上の志願者を集めました。

 香蘭女学校のように、午後入試を導入する学校も増えています。カトリック系の晃華学園も、今春から午後入試を新設しました。プロテスタント系の普連土学園は、今年のトレンドにもなった「算数1科目」の午後入試に踏み切りました。カトリック系の湘南白百合学園は2月1日に「算数1科目」の午後入試と英語入試を新設します。プロテスタント系の共学校、啓明学園も「算数1科入試」を新設する予定です

 こうしたミッション・スクールの入試改革の動きは、来春2020年の入試にも引き継がれる傾向です。また、来年は2月2日が日曜日にあたる“プチ・サンデーショック”の影響もあります。プロテスタント系の青山学院は入試日を2月2日から2月3日に移行し、恵泉女学園は3回の入試すべてを午後に実施します。これまで長く2月3日入試を続けてきたカトリック系男子校の暁星は、従来の4科目入試を2月2日に移行させ、2月3日には午後の2科目入試を新設します。

 入試の内容面でもさまざまな取り組みが出てきています。カトリック系の清泉女学院は、「アカデミック・ポテンシャル入試」という名称のユニークな新タイプ入試を新設します。

 プロテスタント系男子校である聖学院は、これまで実施してきた3種類の「思考力入試」をさらにブラッシュアップします。小学生たちの多様な潜在的能力(タラント)や意欲を評価し、中高6年間で大きく伸ばそうというものです。そのほかにも、ともにカトリック系のカリタス女子や聖ドミニコ学園が、来春入試で募集要項の変更を行います。

 学校改革に踏み出しているミッション・スクールも数多くあります。神奈川のカトリック女子校である聖ヨゼフ学園は、来春2020年から共学化する注目校の一つですが、すでに併設の小学校で導入している「IB(国際バカロレア)」プログラムの導入に向けて動き始めています。プロテスタント系の桜美林はコース制を導入します。

 こうして「動き出した」ミッション・スクール(キリスト教主義学校)が今後どのように進化し、新たな時代に即した教育展開や入試のあり方を見せてくれるのか、大いに注目したいと思います。

 次回は「動き出した仏教系私学」をご紹介したいと思います。

プロフィル
北 一成( きた・かずなり
 首都圏模試センター教務情報部長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

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707321 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/07/25 09:30:00 2019/07/25 09:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190724-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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