仏教系の私立中高にも改革の動き…北一成<6>

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 前回は「動き出したミッション・スクール」というタイトルで、この1~2年の間に目立ってきたキリスト教系私立中学校の入試改革などの動きを紹介しました。今回は、同じように中学入試の改革が目立ってきた仏教系私学の動きに注目したいと思います。

仏教校の変わらぬ教育理念と時代の変化への対応

 仏教系の私学の中には、ミッション・スクール以上に長い歴史を持つ学校がいくつもあります。たとえば、世田谷学園中高(東京・世田谷区)は1592年に曹洞宗吉祥寺の学寮(後の旃檀林(せんだんりん))として創立され、420年以上の歴史を持っています。駒込中高(同・文京区)も1682年に天台宗の禅師によって創立された学校で、330年以上の歴史があります。

 それだけに、創立時から変わることのない教育理念があり、その理念に基づく変わらぬ教育姿勢を現代まで受け継いできた学校が多いと考えて良いでしょう。

 総じて仏教系の私学には、人間一人一人の尊厳を大切にするとともに、「生きとし生けるもの」に対しての思いやりや感謝の心を忘れずに生きるという価値観があります。芝中高(港区)が掲げる「共生(きょうせい=ともいき)」という思想などがそれです。その意味では、今、世界中の教育の課題となっている「多様性」を最も早くから認め、それを大事にしてきた学校群であり、これからのグローバルなボーダーレス社会で、多様な価値観を持つ人々と生きていくために必要な共感、協調、協働の力を、人間教育の柱にしてきたと言えるでしょう。

 その揺るがぬ理念のゆえに、外部に向けての広報活動よりも、伝統的な教育姿勢を守ることに力を注いできた学校が多かったのですが、この2~3年、やはりミッション・スクールと同様に、入試改革や学校改革に動き出すケースが目立っているのです。

都内でトレンドとなっている「算数1科入試」

 まず、都内の学校に目を向けると、やはり、新しい入試方式の導入が目を引きます。

 宝仙学園共学部理数インター(中野区)は、16年にそれまでの4科目入試と公立一貫対応入試に加えて、自己アピール(プレゼンテーション)型の「リベラルアーツ入試」を導入して以来、今春まで毎年新しい入試方法を導入しています。最近では「日本一入試の種類が多い学校」と自ら宣言し、各方面から注目されています。これらの新入試によって同校は「多様な受験生(=小学生)と出会うことができた」と手応えを語っていて、さらに来春も、「読書プレゼン入試」を新設する予定です。

 同校を傘下に置く宝仙学園は、真言宗豊山派の古刹(こさつ)・宝仙寺の第50世住職の手によって創立されました。

 ちなみに真言宗の開祖・空海(弘法大師)が平安時代に創設したわが国初の私学「綜藝種智院(しゅげいしゅちいん)」に源を発する学校があります。真言宗総本山東寺の境内にキャンパスを置く洛南高等学校・附属中学校(京都市)です。全国でも屈指の大学合格実績を上げる一方で、多くのスポーツで全国トップレベルの活躍を見せており、まさに「文武両道」を地で行く学校と言えるでしょう。

 先にも触れた、曹洞宗の世田谷学園は今春、「算数1科特選入試」を新設し、高い人気を集めました。同校は、釈尊の言葉「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」を、国際的に通じるよう「Think&Share(智を極めて分かち合う)」と英訳し、約30年前から教育理念としています。教室にも掲げられている「明日を見つめて、今をひたすらに」と「違いを認め合って、思いやりの心を」という学園モットーは、同校の教育が目指す理想を表しています。

攻玉社の校舎外観
攻玉社の校舎外観

 この「算数1科」入試を首都圏で最も早く、1994年に導入したのは攻玉社中高(品川区)でした。次いで、2002年に高輪中高(港区)が「算数1科」による午後入試を新設しています。高輪中高はもともと1885年に京都の西本願寺によって設立された学校です。創立から約20年後に仏教との関係を離れていますが、「見えるものの奥にある、見えないものを見つめよう」という教育モットーからは、仏教精神に通じるものが感じられます。

 浄土宗系の淑徳巣鴨中高(豊島区)も、中学入試で思考の基礎力・展開力を問う形式か、「算数1科」を選択できる「未来力入試」というユニークな入試を導入しています。同じく「大乗淑徳学園」の傘下にある淑徳中高(板橋区)は、中学では「スーパー特進東大選抜」を始めとしたコース制の導入で着実に成果を挙げ、年々中学入試のレベルを高めています。

都内で新しいコース制の導入や入試方式の多様化

 積極的な教育改革・学校改革を進めて成果を挙げている学校もあります。

武蔵野大中高の校舎外観
武蔵野大中高の校舎外観

 武蔵野大学中高(西東京市 旧・武蔵野女子学院中高)は、今春から中学を共学化し、校名変更を行いました。来年には高校も共学化します。同校は浄土真宗本願寺派の私学であり、同系列の仏教校(24学園71校)による全国ネットワーク「龍谷総合学園」の後押しを受けて、新たに「グローバル&サイエンス」をコンセプトに掲げ、思い切った「体験&モチベーション重視」の教育にシフトしています。

 また、同じ武蔵野大学の系列の武蔵野大学附属千代田高等学院(千代田区 旧・千代田女学園中高)は、中学募集を停止し、IB(国際バカロレア)コースを含む六つのコースを持つ、新たな共学の高等学校として生まれ変わりました。ともに大きく人気、注目度を増している学校です。

 天台宗系の駒込中高(文京区)は、高校にSTEM教育に基盤をおいた「理系先進コース」と、イマージョン授業とグローバル教育に基礎を置いた「国際教養コース」を設置し、さらに中学にはそのジュニアコースとして「国際先進コース」を設置して新たな教育に踏み切っています。さらに、今春から中学入試にプログラミングの要素を含む「STEM入試」と、自己アピールの要素を含む「自己表現入試」を新設し、多様な受験生との出会いの機会を広げています。

 日蓮宗の系譜に連なる東京立正中高(杉並区)は、今年4月から、元中村中高の校長・学園長を務めた梅沢辰也先生を校長に迎え、「生徒を必ず幸せにしてみせます」というフレーズを掲げ、新たなスタートを切っています。「人の心の中に塔を建てよう」という精神と「生命の尊重・慈悲・平和」という理念のもとに、五つの学園目標を立てた新生・東京立正中高の今後の進化が楽しみです。

神奈川の私学でも広がる多様な入試改革の動き

鶴見大学附属中高の校舎外観
鶴見大学附属中高の校舎外観

 神奈川県の学校を見てみると、鎌倉学園中高(鎌倉市)は、15年入試から「算数1科入試」を導入しました。今春の「算数1科入試」トレンドの先駆けともいえる私学です。鎌倉五山の第一位で臨済宗建長寺が母体の学校で、キャンパスも建長寺に隣接しています。

 時宗系の藤嶺学園藤沢中高(藤沢市)は、以前から最終回の入試で、「得意科目選択型入試」を採用して新たな受験生との出会いの機会を広げてきました。来春の入試では、2月1日の午後に「得意2科目選択型入試」を導入する予定です。同校は時宗の総本山清浄光寺の境内に創設された僧侶養成機関「時宗宗学林」を前身とする学校です。

 曹洞宗大本山の総持寺が設立した鶴見大学附属中高(横浜市)も、2009年に完工した「教科エリア+ホームベース型」の新校舎や、恵まれた広いキャンパスの魅力に加え、数年前から中学入試に導入した「適性検査型入試」で注目を集め、今、人口増加エリアと言われる横浜市鶴見地区で人気を高めつつあります。

 ほかにも仏教系の私立中学校・高等学校で、新たな入試の間口を広げたり、教育・学校改革を進めたりしている学校はいくつもあります。これからもこうした改革に注目していく必要があるでしょう。

プロフィル
北 一成( きた・かずなり
 首都圏模試センター教務情報部長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

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782639 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/09/06 17:09:00 2019/09/06 17:09:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190906-OYT8I50006-T.jpg?type=thumbnail

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