「10回音読」3か月で「僕、文章が分かってきた」…水島醉<4>

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国語指導の多くは苦手部分の分析ができていない

 国語力を上げる確かな方法があります。

 例えばスイミングスクールに通いますと、今は指導クラスが20級とか30級とかに細かく分かれているようですね。私が子供の時は、10級ぐらいにしか分けられていませんでした。今は当時の2倍ほど詳細に段階が分けられています。それは、それだけ指導技術が向上した、ということです。

 この子は何ができていないのか、この子はどこが苦手なのか、上達するためのそういう要素を詳細に分析して、そしてうまくできていない部分を修正してやれば、(おの)ずから伸びるものです。

 学習指導も同じです。何ができて何ができないかをきちんと分析して、その対応をすれば必ず伸びるはずです。国語以外の科目では、およそそれができています。例えば算数なら「あなたは内容の理解はできているのに計算が不得意だから点数が取れないのです。まず計算を速く正確にできるように訓練しましょう」とか、「あなたは角度の理解が浅いので、図形が苦手なのです。まずは角度の問題を基礎からやり直しましょう」とか、不得意な部分を強化するような指導を受けているはずです。

 ところが進学塾では、国語に関しては、「長文切り抜き問題」(以下 切抜問題)が中心で、あとは少しの漢字と文法と言葉の問題ぐらい。国語の中心である読解力の対策としては、ほぼ「切抜問題」しかしていないのではないでしょうか。

「文字」は読めても「文」が読めない子供は多い

 読解力にも段階があります。その詳細を述べるには紙幅が足りませんから、国語力の低い多くの子供に共通している要素だけを述べます。それは「文章が読めているか読めていないか」の1点です。

 ひらがな、カタカナなど、文字そのものは読める。漢字もそこそこ読めるし、知らない漢字でもふりがながふってあったり、教えてもらったりすれば読める。そういう「文字は読める」状態でも「文は読めていない」という子供がたくさんいます。ほんとうにたくさんいるのです。

 この、文字は読めるが文(文章)は読めない、という状態もさらに細かく幾つかの段階に分けられるのですが、それもここで詳細に述べることはできません。お分かりいただきたいのは、文字(ひらがな・カタカナ・漢字)が読めても、それは文(文章)が読めるということとは決して等しいわけではない、ということです。

 国語ができない子供のおよそ8割は、この「文字が読めても文が読めない」段階です。さらにこのうちの半分は、文章を音読させてみると、すぐに、ある特徴が分かります。この特徴を持つ者をAタイプと名付けておきましょう。

 Aタイプの子供に、音読をさせてみましょう。漢字はふりがながふってあるものとします。
 「ある春の日ぐれです。唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空をあおいでいる、一人の若者がありました」

 これをAタイプの子供は、
 「あるはる/のひぐれですとう/のみやこらく/ようのに/しのもんのしたにぼん/やりそ/らをあおいで/いるひとり/のわかも/のがありまし/た」

 というように、文節や単語の区切りでないところで、区切って読みます。文字は読めて、かろうじて音読はできていたとしても、これでは意味は全く理解できていないでしょう。どれが一つの単語か、どこが意味上の区切りなのかが分からないまま読んだところで、全体の意味がとれるはずがありません。

 意味の分からないことをするのは誰しも苦痛ですから、もしAタイプの子供に黙読をさせれば、文字を目で追うことすらしないでしょう。黙読なら手抜きをしていてもバレませんが、音読ならどうしても読まないわけにはいきません。だから、Aタイプの子供は、音読することを嫌がります。

「10回音読」は国語力を上げる必要条件

国語力を上げるためには音読が必要(写真はイメージです)
国語力を上げるためには音読が必要(写真はイメージです)

 Aタイプの子供の国語力を上げるのに、確かに有効な訓練法が「10回音読」です。そしてかつ、「10回音読」を避けては国語力は上がりません。Aタイプの子供にとって「10回音読」は国語力を上げる必要条件です。

 「10回音読」とは、同じ範囲を繰り返し連続で10回、声に出して読むことです。ポイントは、量はそんなに多くなくても良いし(10行程度以上)、質もそんなに難しい文章である必要はありませんが、「同じ範囲を」「10回連続で」音読させ、かつそれを「毎日」続けることです。あるページを「今日4回、明日3回、明後日3回」というのは効果がありません。同じ範囲を繰り返し連続で「10回音読」させてください。

 もう一つのポイントは、お母さん(お父さん)が横で一緒にその本を読みながら、子供が間違えたところは指摘して直させることです。

 先にお話しした「あるはる/のひぐれですとう/の……」のように、切れ目のおかしな読み方をした場合は、「ある/はるの/ひぐれです。とうの/」というように、正しい切れ目を教えてあげてください。

 また、読み間違いも指摘してください。ひらがな・カタカナの言葉や、明らかに知っているだろう言葉の読み間違いは、「ん?」と一声かけて間違っていることを教えても良いし、「ゆっくりと落ち着いて読んでみよう」などの言い方でも構いません。本人に間違いを気付かせる指摘の仕方が良いでしょう。

 読めない漢字や、知らないだろう言葉については、正しい読み方や意味をその場で教えてください。

 最初の数回は、こうして読み方を指摘して直させる必要がありますが、これが8回、9回、10回目になると、多くの場合スラスラ読めるようになります(それでスラスラ読めないようなら、翌日も同じ範囲を「10回音読」してください)。

 初見の文章をスラスラ読めないのが、Aタイプの子供の特徴です。スラスラ読めていないならば、内容は正しく読み取れていないに違いありません。そして、内容が正しく読み取れていないのに、深く鑑賞したり、正しく読解問題の設問に答えられたりするはずがありません。

 Aタイプのような、1文字1文字は正しく読めるのに成績が低迷している子供になら、この「10回音読」は間違いなく効果があります。

 「10回音読」はスポーツで言えばランニングや筋トレに相当する基礎訓練です。多くの子供は嫌がりますが、それを避けての上達はありません。

 「10回音読」以外の国語の学習は一切不要です。「10回音読」だけを正しい方法で毎日(週に5日程度以上)続けてみてください。おそらく3か月ほどで、子供さん自身が「あれ、僕国語が分かるようになった気がする」と自覚できるようになります。6か月ほど続けていただくと、テストの点数や学校の成績など、数字でその効果が表れるでしょう。

プロフィル
水島 醉( みずしま・よう
 1990年から「エム・アクセス」講師。「問題を解かせる→解説」という授業は国語力の向上につながらないと考え、「読書・思考・記述」を中心とした国語指導を展開している。「読む・聞く⇔書く・話す」の4ルートを鍛えることによって国語の地力を向上させる「視聴話写」という教材を開発。子供の心の成長と学力との関係を重視し、「マインドフルネス学習法」を提唱、授業に応用している。著書に「国語力のある子どもに育てる3つのルールと3つの方法」(ディスカヴァー携書)、「進学塾不要論」(同)など。

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824231 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/10/04 05:22:00 2019/10/04 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191001-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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