大学入試で躍進の3校、チャレンジする私学…森永直樹<3>

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 関西では大学付属校人気が高まっていますが、学校数が首都圏ほど多くないこともあり、依然、難関進学校を目指しての中学受験が主流です。そのためか、大学合格実績への注目度も高く、学校人気にも影響しています。また、関西では近年、難関国立大学と国立大医学部医学科だけでなく、定員厳格化で難化した人気の私大「関関同立」の実績にも関心が寄せられています。

 そこで今回は、今春の大学入試において実績を伸ばした学校について紹介します。中堅進学校の中から、難関国立大への合格実績、国立大や関関同立への実績で大きく躍進した学校を3校選んでいます。

難関国立10大学へ2桁合格、復活の初芝富田林

 1校目に紹介するのは、大阪府富田林市の共学校、初芝富田林中学校・高等学校です。

 立命館グループの学校として、「大阪府下に確固とした地位を占める進学校の復活と新時代を代表する学校づくり」というミッションを担い、2018年4月に就任した平井正朗・新校長の下、さまざまな学校教育改革を実践しています。

 「生徒ファースト」をキーワードに「チーム初富」を意識し、生徒のモチベーションを高めることや授業改善に伴う教員の意識改革からスタート。生徒一人一人が確かな伸びを実感できる確かな授業を提供するカリキュラムマネジメントの確立を目指しています。

 注目の初年度の実績を見ると、東大に3人が合格(過去最高)、うち1人は推薦合格で学園初となります。旧帝大を始めとする難関国立10大学への合格者が2桁に達するのは5年ぶり。国公立+医歯薬系の合格者は100人を突破し、まさに進学校「初富」の復活といえる躍進です。

 平井校長に伺うと、校長就任時から掲げている「超進学校化宣言」にある四つの指針が、早くも効果として表れ始めたようです。

新大学テスト対策としてイギリス・オックスフォード大学での研修も受けられる(写真はイメージです)
新大学テスト対策としてイギリス・オックスフォード大学での研修も受けられる(写真はイメージです)

 四つの指針とは、(1)生徒ファーストの明るく楽しい進学校へ、(2)到達度に応じた「最適学習」に取り組み、生徒一人一人の可能性を大きく伸ばす、(3)大学入試新テストに対応した授業づくりを行い、「合格力」を高める指導を行う、(4)進路満足度100%の実現を目指すというものです。躍進の理由は(2)(4)のように生徒個々の最善の進路実現に向けた進路指導体制の強化にあります。

 これから始まる大学新テスト対策として「ロサンゼルス研修」「オックスフォード研修」「グローバル・リーダーズプログラム」といった異文化理解やディベート、オンライン英会話なども積極展開され、さらにはICT(情報通信技術)を活用した個別最適学習や校内予備校の併設など、着々と強化が進んでいます。

 今春の結果を受けて、「これに続け」と現高3生のモチベーションも上がっており、東大見学会参加者の数も増えているようです。

 名門復活へのスタートをきったばかりの「初富」。今後の躍進に期待が寄せられています。

国公立大合格者3.5倍の77人、躍進の箕面自由学園

 2校目に紹介するのは、大阪府豊中市の共学校、箕面(みのお)自由学園中学校・高等学校です。

 今春の実績は、地元の難関国立大である京大・阪大・神戸大の合計で10人と初の二桁合格を達成しました。しかしそれよりも注目すべきは実績全体の「伸び」です。国公立大学合格者数は昨年の22人から今年は77人に、関関同立の合格者数は95人から127人となり、まさに大躍進の年となりました。

 田中良樹校長に伺うと、「やらされる」から「自分事に」へ転換させる三つの取り組み、「朝学習」「デザインタイム」「自主研修」の成果が、今年の躍進につながったようです。

 「朝学習」とは、早朝の時間を利用した学習です。始業時間は午前9時なのですが、学校長が出勤する7時には、すでに複数の教室に電気がつき、たくさんの生徒が机に向かっています。

 「デザインタイム」とは、放課後の時間を強制の補習ではなく、学年の先生が開講する講座とし、生徒自ら選択して受講するものです。各教科の超基礎・基礎・発展講座や海外研修に向けての語学講座、グローカル講座などがあります。自分で選んだだけに、受講する生徒の集中力は高く、指導する教員の間で絶賛されています。

 「自主研修」とは、国内外のさまざまな校外学習プランから、生徒が自ら選択し、参加する研修旅行です。韓国短期交換留学やフィリピン・セブ島での語学研修、北方領土研修や東北研修などがあり、関心のある講座を選択し、それに向けての事前の準備や事後の振り返りなどを行って、これからに必要な力を身に付けます。

 このように「自分のことは自分で決める」姿勢が、日々の学習から進路決定にまでつながっています。これを実現するためには、早い段階からの学習習慣の定着や、進路決定にかかわる教員の経験や技量が必要となります。さまざまな学校で進路指導部長を経験した教員が常駐するキャリアセンターの存在が大きく貢献しています。

 生徒は明るく元気に自分を高めることに集中しており、今後の実績も期待できそうです。

難関国公立大の現役合格30人に倍増の雲雀丘学園

 3校目に紹介するのは、兵庫県宝塚市の共学校、雲雀丘学園中学校・高等学校です。

 今春の実績を見ると、難関国公立大(旧帝大+神戸大)への現役合格者数が昨年の15人から30人へ倍増しました。またこの10年で見ると国公立大学の合格者数も6倍近くまで伸びてきています。この数字は、10年間で少しずつ着実に伸ばしてきたものであり、学校もこの間の取り組みには自信を持っています。

 この学校の魅力は、生徒が自主的に学問や進路について関心を持ち、それを勉強へのモチベーションにつなげていけるように、環境を整えていることです。

 その一つが、毎年6月に30以上の大学から講師を招いて行う「ワンデーカレッジ」で、生徒は1日2講座、大学の講義を体験でき、学問の面白さや大学で学びたいことを感じ取っています。もう一つは、夏休みに最長3日間、大学の研究室に通って研修を受ける「アカデミックサマー」です。これにより、大学での学問への興味の芽がさらに大きく育っています。

 私自身もこの取り組みに興味を持ち、5年前に鳥取大学の医学部・農学部での実習に同行させていただいたのですが、そのとき、生徒が研究に夢中になっていく様子を見たり、受け入れる大学側も夏の実習を楽しみにしているという話を聞いたりして、感動したのを思い出します。

 今春、躍進を見せたこの学年について聞くと、日常の学習にとどまらず、体育大会や文化祭などの行事にも一致団結の気概で取り組んでいたとのことで、それが受験においても発揮されたようです。

 これから始まる大学新入試対策にも早い段階から対応していて、進学校としてさらなる高みを目指す姿勢は頼もしいかぎりです。

 上記3校について、躍進につながったと思われる取り組みを紹介しました。「学問への興味・関心」「よりよい進路選択につながる情報提供」「新時代へのマインドセット」など、各校で工夫されていますが、共通しているのは、「生徒の自主性」を重んじている点でしょう。

 大学の新入試では教科の学力に加え、多面的な力が求められます。その中で進学校のありようも大きく変化していますが、6年かけて体系的に取り組める私立中高一貫校へ寄せられる期待は特に大きくなっているようです。

 来年度以降、さらに躍進する学校はどこか? 新たな躍進校はどこか? 注目しましょう!

プロフィル
森永 直樹( もりなが・なおき
 株式会社日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを歴任。現在は教室と広報セクションを統括しながら、学校・教育情報を発信している。私学教育の魅力を伝える講演など中学受験イベントに多数出演。

無断転載禁止
840758 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/10/11 12:59:00 2019/10/11 12:59:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191010-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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