「思考コード」で読み解く2020年からの「新しい学力」…北一成<7>

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「2020年3部作」となる話題の新刊

 「2020年からの新しい学力」(SB新書)という本が9月6日、発売されました。著者の石川一郎先生は、香里ヌヴェール学院学院長であり、聖ドミニコ学園カリキュラムマネージャーでもあります。さらに、教育界で注目される「21世紀型教育機構(21st CEO)」の理事として同機構を設立し、新しい教育と学力について研究と実践を進めていることでも知られています。

 石川先生は、2020年度からの大学入試改革後に求められる学力と、その先の大きく変化する社会で求められる新たな力を見通した著書をこれまでも刊行していて、今回の本を含めて「2020年3部作」となります。

 この本では、首都圏模試センターの開発した「思考コード」という、新しい学力の評価軸を使い、この先の社会と大学入試で求められる「新しい学力」について分かりやすく伝えています。

 石川先生は、この「新しい学力」を解説するために、今回の本の冒頭で、フランシスコ・ザビエルという歴史的に有名な人物を題材とした例題を取り上げています。ザビエルに関するさまざまな例題や、それらが求める力を、「A軸(知識・理解)」「B軸(応用・論理)」「C軸(批判・創造)」で整理したものがこの「思考コード」です。

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 ザビエルはご存じのように、フランスで結成されたイエズス会という修道会から派遣され、はるばる海を越えて訪れた日本に、キリスト教や新たな文化をもたらした人物です。種子島に漂着したポルトガル人による、1543年の鉄砲伝来から6年後の1549年と伝えられていますので、今から470年も前のことです。

 「思考コード」の右上にある問題を考えてみましょう。「もしあなたが、ザビエルのように知らない土地に行って、その土地の人々に何かを伝えようとする場合、どのようなことをしますか。600字以内で答えなさい」

 ザビエルは、ローマからはるか遠い日本に派遣され、その長い船旅の中ではきっと何日も何日も「日本の人々にキリスト教を伝えるために、どのようなことをしようか?」と考え続けていたに違いありません。

子供たちの近未来を示すザビエルのあり方

 まだ見ぬ東洋の島国の様子を当時のザビエルが想像することは、今の子供たちが生きる近未来の社会、とくに現在の小学生が大学や大学院を卒業して社会に出る2030年以降、さらには「AI(人工知能)の能力が人間を上回る」シンギュラリティ(技術的特異点)が訪れると予想される2045年以降の、未知の世の中を想像することに近かったのではないでしょうか。

 そうした変化の激しい時代には、「まだ見ぬ世界」で直面する課題や、「答えが一つに定まらない問い(オープンエンドの問い)」に対して、自分の頭で考え、使える知識を組み合わせて、最適解を導き出していく力が求められています。

 この問題は、「C軸(批判・創造)」の力が求められる問いの一例で、従来の大学入試では出題されることのなかったタイプの問題です。このタイプの出題は、「もしあなたが~」「あなた自身が~」といったように、課題をいわゆる「自分ごと」として受け止め、それにどう関わることができるかを考え、記述させるものであり、この先の大学の個別入試でも求められることになる「自分軸」が試される出題です。

 石川先生は、「2020年からの新しい学力」の中で、「思考コード」の「A軸(知識・理解)」「B軸(応用・論理)」の力はもちろん大切で必要なものであるとしながらも、この先の社会で求められ、子供たちに身に付けてもらいたいのは「C軸(批判・創造)」の力だと述べています。

多様化する中学入試の先駆けとなった「思考力入試」

 首都圏の私立中学校でもこの2~3年、「入試の多様化」が目立って加速していて、その中に「思考力入試」というタイプの入試があります。導入している学校はまだそれほど多くはありませんが、いち早く「思考力入試」を導入した私立中の一つが、かえつ有明中学校であり、導入を進めた当時の校長が石川先生なのです。

 導入の当初は、現在のような「思考力入試」という名称ではなく、「作文入試」という入試名だったそうですが、十数年以上前にかえつ有明中で導入された、この「作文入試」は、現在の多様化した中学入試の先駆けだったと言えるでしょう。

 現在では、かえつ有明中のほか、男子校では聖学院中、静岡聖光学院中、女子校では、昨春から聖ドミニコ学園中、富士見丘中、和洋九段女子中、共学校では工学院大学附属中、聖徳学園中などが「思考力入試」を導入しています。いずれも「21世紀型教育機構(21st CEO)」の加盟校です。このほかにも、十文字中、日大豊山女子中、文京学院大学女子中、淑徳巣鴨中など、いくつかの私立中が導入しています。

 これらの「思考力入試」や、公立中高一貫校の「適性検査」、さらには光塩女子学院中がすでに10年以上にわたって実施してきた「総合型入試」、共立女子中が実施している「合科型(論述)入試」などでは、知識の多寡や正確さよりも、むしろ、問題文中に提示されている情報(表やグラフ、地図や文中に与えられた知識)を読み取り、既知の知識と組み合わせて「その場で考え」「自分の言葉で表現する」力が求められています。

 ちなみに出版社の晶文社が編集・発行した2020年入試用の「首都圏中学受験案内」には、それぞれの学校の入試問題を、首都圏模試センターが「思考コード」に照らして分析した資料も掲載されていて、多くの私立中の先生方から注目を集め始めています。

 首都圏模試センターの「思考コード」についてご関心のある方は、公式Webサイトの紹介記事や、「2020年からの新しい学力」をご一読いただきたいと思います。そして、そういう「新しい学力」を育てる教育と学校、新しい入試のあり方を知るためには、やはり多くの学校に足を運んで、その教育内容(改革による進化の状況、最新の成果も含めて)や入試のコンセプトを知っていただく必要があるでしょう。

 保護者がそうしたアンテナを立てて、我が子の「未来につながる学力」を育ててくれる学校を探すことが、子供たちにとっての豊かな未来を作ることにもつながっていくのではないでしょうか。

プロフィル
北 一成( きた・かずなり
 首都圏模試センター教務情報部長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

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887698 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/11/08 10:09:00 2019/11/08 10:09:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191107-OYT8I50056-T.jpg?type=thumbnail

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