マニアックな普連土学園の文化祭…辛酸なめ子<23>

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ストイックな中にもピースフルな空気

クエーカー教はものを大切にするそうで、備品は古いものを長年使っているそうですが、クラシカルなデザインが素敵に見えます
クエーカー教はものを大切にするそうで、備品は古いものを長年使っているそうですが、クラシカルなデザインが素敵に見えます

 秋は文化祭のシーズン。なかなか足を踏み入れる機会のない女子校の内部を拝見できるチャンスです。今回は普連土学園中学校・高等学校の学園祭に伺いました。学園に向かう、聖坂という坂の名前にすでにサンクチュアリの気配が……。

 校庭を挟んで中学と高校の校舎があり、居心地の良いアットホームな空気が漂っています。ミッション系の中でもクエーカー(キリスト教プロテスタントの一派)というかなり珍しい宗派で、その前知識のせいか学園祭のプログラムもいちいちマニアックに見えてきます。今年のテーマは「Once in a Blue Moon ~一期一会~」だそうで、忘れられない一期一会になりそうです。

 広報の先生に案内してもらいながら、まず中学の展示の部屋へ。中学ではクラスごとの展示で高校は有志が参加、その他にも部活や委員会単位で発表しているそうで、パンフを拝見するとまじめなものが多いです。お化け屋敷とかフィーリングカップルとか浮ついたものは見られません。フレンド出身の知人が、チャラついた人は白い目で見られる校風だと話していたのを思い出しました。他校の男子の姿もほとんど見かけません。ストイックさがあふれる教室内展示は、港区の散歩、東北修学旅行、冠婚葬祭、手話、学園生活について、など。

普連土生活についての展示。文字が整然と書かれています。インターネットより模造紙が目に優しいのを実感
普連土生活についての展示。文字が整然と書かれています。インターネットより模造紙が目に優しいのを実感

 普連土の学園生活についての中1の展示を拝見。その中で特徴的だったのは……

 「沈黙の礼拝」

 20分間沈黙を保ち、神と自分とのつながりを感じる時間だそうです。20分とはかなり長いですが、雑念が消えて集中力が増しそうです。

 「収穫感謝祭」

 全校生徒が一人一つずつりんごとみかんを持ってきて、講堂に飾ります。講堂にフルーティーな香りが広がる中、賛美歌422番を歌います。そのあと病院などに果物を寄付するそうです。献金の風習はあっても果物(しかも種類指定)を(ささ)げるイベントは珍しいです。

 また、放課後や休み時間についての生徒さんへのアンケート結果も模造紙に書かれていました。「昼休みは楽しいですか?」「楽しい39人 普通6人」という答えが正直です。クラスに一定数、冷静な人がいるのが伝わります。ちなみに放課後何をしているかという質問で、一番多い答えは「勉強」でした。まじめな校風を表しているようです。

 ストイックな展示では、青年海外協力隊や赤十字などについて調べた部屋もあり、生徒さんが流暢(りゅうちょう)な英語で活動報告していました。ローズホールで高2有志の劇を拝見したら、神社の呪いで手がつながったままくっついた男女のストーリーでした。それを先生が見(とが)めて「15やそこらで手をつなぐなんて」「不純異性交遊です」といった禁欲的なセリフがありました。もしかして生徒の価値観を反映していたり……? 先生に聞いたら「そもそもそんな男子と交友関係ない子が多いですよ」とのことでした。ちなみに学園祭パンフに「共学校よりも女子校の方が良いと思うところ」についてのアンケートもあり、1位は「男子の目を気にしなくていいところ」2位は「男子をめぐってのいざこざが無いところ」でした。この学校に漂うピースフルな空気の理由が少しわかりました。

独特のセンスで突き進む普連土生

「Friends Fab」の部屋。プログラミングが必要ですが「理系と思われますが全然文系でもできます」と生徒さん
「Friends Fab」の部屋。プログラミングが必要ですが「理系と思われますが全然文系でもできます」と生徒さん
中3Aのチェーン店についての展示に、インスタ映えコーナーが。ストイックな学園祭の中でおしゃれなコーナーでした
中3Aのチェーン店についての展示に、インスタ映えコーナーが。ストイックな学園祭の中でおしゃれなコーナーでした

 まじめだけれど人気の部活が「Friends Fab」。レゴを使ってロボットを作りプログラミングして動かすという活動で、選ばれた生徒が大会出場のために海外遠征したことがあるそうです。ややソフトな話題を扱っていたのは、チェーン店(マックやスタバ、ロッテリアやモスなど)の人気について調査した中3のクラス発表と、平成と令和の流行の移り変わりについての中3の発表。驚いたのが現代の中3女子の好きな俳優ランキング。1位吉沢亮、2位新田真剣佑(あらたまっけんゆう)、3位がなんと阿部寛でした。元祖イケメンでもありますが世代が違うような……。普連土生のセンスは独特です。こちらの二教室は、教室内に手作りのインスタ映えするオブジェ(巨大なマックのポテトやフラペチーノ、平成という文字のバルーンの飾りなど)も置いていて今の時代を感じました。

 校内では平成どころではなく、昭和時代同じ中学に通っていた同級生Hさんと再会。普連土で先生をしていらっしゃるそうです。やはり毎日十代と接しいろいろ吸収しているからか若さを保たれていました。校風を伺ったら、生徒さんは激しく反抗してくることはあまりなく、「普連土らしい」という価値観を大切にしているそうで、愛校心が強く基本的には平和なようです。それを実感したのは、校庭にいる先生を見ながら交わされた生徒さんの会話。「◯◯先生、脚長いね」「モデルになれそう」と男性教師に対してポジティブな会話が展開していました。こう言ってはなんですが自分が中高時代、先生(とくに男性教師)のことは他の同級生もたいてい、基本的に呼び捨てしていました。ほめたりすることもほとんどなかったような……。自分の当時のすさみ具合を反省しつつ、普連土生の性善説を感じました。

フォークダンス部は男役と女役にわかれて踊ります。笑顔がかわいいです
フォークダンス部は男役と女役にわかれて踊ります。笑顔がかわいいです
理科部の「ロケット打ち上げ」。高く打ち上がりパラシュートがちゃんと開けば大成功です
理科部の「ロケット打ち上げ」。高く打ち上がりパラシュートがちゃんと開けば大成功です

 校庭では、人気のフォークダンスのパフォーマンスが行われていました。牧歌的な曲で、各国の伝統の踊りを踊る笑顔の女子たち。中世のヨーロッパの小さな村の祭りに来たような錯覚に襲われました。後半、バンブーダンスも踊っていて、聞いたらフィリピンから来た英語の先生が四十年前に教えた民族舞踊がそのまま定着したそうです。こちらもレアなジャンルです。

 続いて理科部のロケット打ち上げが始まりました。え?女子校の校庭の真ん中でペンシルロケットが? シュールすぎる演目に、事態を脳で処理するのが追いつきません。と思ったら、前にいた上品な老婦人に突然振り向かれ「本当に良い学校よ。孫は無遅刻無早退無欠席なの」と告げられたり、カオス状態です。そんな中「高空低空飛行物体なし、発射台よし、3、2、1」というアナウンスがされ、発射する生徒に、ギャラリーの声援が飛び交います。シューッ!という音とともに天高くロケット発射。見た感じ数十メートル飛んだロケットもあり、歓声が上がっていました。普通の女子校では見ることのないシーンが続いていて、個性的すぎる学園祭。周りに惑わされず自分の道を極めれば、普連土生はあのロケットのように高く飛び立てることを確信いたしました。

プロフィル
辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
 漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

無断転載・複製を禁じます
943352 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/12/11 12:01:00 2019/12/11 12:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191209-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail

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