立教女学院の平和な校風…辛酸なめ子<24>

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ヤンキー小学校から、逆に「すごいとこ来ちゃったな」

イラスト・辛酸なめ子
イラスト・辛酸なめ子

 先日仕事でお会いした同年代の新聞記者のRさんはなんとなくフィーリングが合う感じがして、聞いたら立教女学院中学・高校のご出身とのこと。母校と同じくプロテスタント系女子校ということもあり、出身者はなんとなく同窓生に近い雰囲気で勝手に親近感を抱いておりました。(中高時代の遠足の場所でもニアミスが……)後日、Rさんに改めてお話を伺うことができました。まずは公立小学校のワイルドな思い出から……。

 「実家が行徳なのですが、通っていた小学校はヤンキー系が多く、高校まで進学するのは3分の1という割合でした。そのヤンキー小学校に通いながら、東京に行ったら何か楽しいことあるかな……と思って受験を決めたんです」

 当時は「積木くずし」「毎度おさわがせします」「不良少女とよばれて」といった作品が話題になって、ヤンキーが隆盛を誇っていた時代。私の通っていた小学校にも女番長がいて、目立つクラスメイトが体育館の裏に呼び出されていました……。なんとなく空気感がわかります。

 「その小学校ではドッジボールが生きるか死ぬかの真剣な戦いでした。フェイントをかけて相手にぶつけるとか、元外野が横からぶつけるとか、めちゃめちゃ燃えるスポーツだったんです。私は運動できないけどドッジボールは好きでした。片手でボールを投げつけていました」

 ヤンキー小学校では運動ができるかできないかがヒエラルキーを決める要素。私の場合、ドッジボールで最後まで逃げ回っていたり、100メートル走20秒かかったり、運動音痴で虐げられていましたが……Rさんはそこそこ運動もこなせて順応できていたようです。

 「立教女学院に入学してすぐにドッジボールの授業があったんです。そしたら、女子たちはボールを両手で持って『行くよ~』って予告してから投げて、当てられる側は『キャーッ』って逃げ回っていました。ボールが当たったら、当てた側が『ごめんね~大丈夫?』って走り寄って泥をはらってあげるんです。すごいとこ来ちゃったな、って思いました。あれ、私この学校に6年通うんだっけ?って……」

 先日、カトリック系女子校の球技大会を取材した時に、膝が汚れないようにタオルをしいて膝立ちしてる女子や、チームメイトをあおいであげる女子たちの姿を見て、女子校の独特の雰囲気に感じ入っていたところでした。ヤンキー小学校のワイルドなドッジボールとは真逆の牧歌的な空気。それをものたりないと思う人もいるかもしれませんが、私の場合は体育がそこまでキツくないというのはありがたかったです。Rさんは卒業後しばらくは小学校のドッジボールのスリルや刹那的な空気が忘れられず、わざわざ地元の中学の体育祭を見学しに行っていたそうです。「生きるか死ぬかの緊張感っていいよね」とか言いながら……。

あの頃はみんなラルフローレン

 「立教女学院はすごくおっとりした校風でした。お嬢様学校のイメージですが、私のような中学受験で入った生徒は庶民が多くて、幼稚園や小学校からの子はお嬢様が多かったです。キツい性格の人がいなくて、ポワーンとしてる。男の子と遊んでる子もほとんどいなかったです。ただ当時の流行でスカートは短かったですね」

 たしかコギャルブームが始まる寸前の時代。立教女学院は服装はカバンと校章だけが決まっていて、スカートをはく、という点さえ守ればあとは自由。冬はセーター、夏はポロシャツの襟を立て、ボトムはチェックのプリーツスカートにラルフローレンのハイソックス、というスタイルが主流だったそうです。遠足で遭遇した時の立教の中学生の洗練されたファッションに憧れたことを思い出します。

 「制服かと思うくらいラルフローレンを着てる子が多かったですね。セーターと靴下の色を(そろ)えたりして。スカートの丈は膝上何センチ、というよりパンツ下何センチ、で測った方が早い、というくらいの短さでした。文化祭にはパンチラ狙いのカメラマンが入り込もうとして、門前払いされていました。決まった制服がないので、体育祭でみんなでお揃いの衣装を着るダンスとか(うれ)しかったですね」

おしとやかそうで絶対折れない生徒たち

 Rさんにとって思い出深いのは、体育祭で高3が踊る「ペルシャの市場にて」の演目だそうです。

 「高3だけ踊れるオリエンタルなダンスで、中学の時から見て憧れていました。最後、みんな感動して泣くという宗教っぽい空気なんですけど。ダンスのあと、好きな先輩に花束を渡す、という風習がありました。ただ、もらえない人がかわいそうということでその風習はなくなってしまいました…」

 もともと立教女学院は、先輩を好きになるという風潮があまりなく、先輩後輩の関係もベタベタしていなくてドライだったそうです。ボーイッシュな子がいるとちょっと人気になるくらいだったとのこと。自然に囲まれたキャンパスなので、悶々(もんもん)とした思いが浄化されやすいのかもしれません。いろいろな意味でバランスが取れた女子が育ちそうですが、卒業生で才能を発揮している方々は皆さん知性と品格を持ちつつウィットを感じさせます。松任谷由実さん、酒井順子さん、中村江里子さんなど……。

 「酒井順子さんや中村江里子さんを見ていると、すごいうちの学校っぽいって思いますね。うちの生徒はおしとやかそうだけど絶対折れない。飄々(ひょうひょう)としている。お嬢さんっぽくて、一見親ウケが良さそうですが、譲らない強さがあります」

 そんなRさんも、品格と芯の強さを併せ持っているようにお見受けします。そしてヤンキー小育ちのワイルドさも……。

 「テレビ局で仕事していた時、立教女学院に呼ばれて高校生の生徒の前で話をしたことがあったんです。講堂に入った瞬間『ねえ、どうせテストの勉強とかしたいんならしてていいよ。寝たいなら寝てていいから』って。『ここで認められなくても大丈夫。社会に出たらたいしたことないから』と言ったらざわざわしてました」

 後輩を鼓舞する先輩の言葉はきっと女子高生の心に残ったことでしょう。おっとりした空気感には時々刺激が必要です。

プロフィル
辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
 漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

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1004596 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/01/17 12:01:00 2020/01/17 12:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200114-OYT8I50055-T.jpg?type=thumbnail

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