「心の教育」重んじる男子仏教校の芝・世田谷学園…広野雅明<16>

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 今回は男子校の中で仏教系の学校を2校ご紹介したいと思います。仏教というと伝統的な、あるいは言葉を変えると保守的なイメージがありますが、各学校とも創立以来の教育理念は守りながら、先進的な部分も多く取り入れています。何より心の教育を重視し、一人一人を大切にする学校が多いので、ぜひ一度説明会に参加したり、見学したりしていただきたいと思います。

基調は保守的ながら新しい学びにもチャレンジする芝中学

 まずは12月のサピックスオープンでの志願状況です。

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 今年度、芝中学校は微減です。昨年度減少した世田谷学園は、やや増加基調です。

 芝中学校は、江戸時代に浄土宗増上寺の僧侶養成と徒弟教育のために整備された機関を淵源(えんげん)とします。1887年に浄土宗学東京支校となり、1906年に「男子に須要なる高等普通教育を()す」という目的で宗門外の一般子弟にも門戸を開放し、私立芝中学校が設立されます。48年に新学制により芝中学校・芝高等学校として再出発し、82年に高校募集を停止して中高一貫校となりました。

 芝中学校の校訓は「遵法自治」、同校のホームページでは、「『遵法(じゅんぽう)』とは法に従うこと、つまり全世界や宇宙の法、永遠の真理などに逆らわずに生きること。『自治』とは、自主・自立の態度で自分を治めることです。法をより所とし、法の光を受け取ることにより、自己も輝きを発して自分自身をより所とすることができるようになるのです。こうした考えは、釈迦(しゃか)が説いた『法』、法然上人が身命を賭して『法』に生きる『みずから』を主張されたことに、遠く伝統を受けるものです」と説明されています。

 また、もう一つ大事にされているのは、共生(ともいき)の精神です。同校のホームページには、「浄土宗の宗祖法然上人が唱導された思想です。私たちがいま持っている『いのち』は、はるか昔の祖先から綿々と伝えられているのと同時に、子や孫といった未来へと(つな)がっていく『いのち』でもあります。一人の『いのち』であって、一人の『いのち』ではない、ご先祖から未来へと繋がっていく多くの『いのち』と共に生かされているというこの繋がりが共生です」と説明されています。

 この二つの言葉が芝のさまざまな教育の場面で大切にされ、同校の校風を支えているように思います。芝中学校をよく表す言葉として、「芝温泉」があります。男子校では、ハードな体育会系の行事が目玉になっている学校が多いですが、芝は比較的そのような行事が少ない。また、仏教校では、多くの仏教行事が年間行事として組み込まれている学校もありますが、比較的そのような行事も少ないです。

 また、中高一貫校なので中1から高3まで同じメンバーで過ごし、先生方もあまり入れ替わりがないので、学校が大きく変わらない。そのため、男の子が男の子らしく、それぞれ好きなことを好きなときに好きなだけできる。そんな雰囲気があります。運動が好きな子はしっかり運動し、いわゆる「オタク」系のことが好きな子は自分の趣味に没頭する。勉強が好きな子は勉強に励み、東大などの難関大を目指す。どのような子にも居場所がある、そんな学校です。

 先生方も生徒のことを、温かく見守っています。トップダウンの学校ではないので各先生がそれぞれの領域で生徒のためにしっかりと授業を行い、大学進学、部活、学校行事など各場面で生徒の自主性を尊重しながらフォローしていく。また、先生方は非常にチームワークがよいので、さまざまな問題に対して、学校全体で取り組んでいく、そのような雰囲気があります。

 このように比較的保守的な学校ですが、新しい動きもあります。昨今は海外修学旅行や海外留学などさまざまな海外プログラムを実施する学校が多いですが、学校独自のプログラムではなく、既成の業者プログラムをそのまま実施しているケースも多いです。

 芝中学校は先生方の手作りのプログラムです。高1、高2の希望者十数人が参加するベトナム研修は圧巻です。ホーチミン市から車で2~3時間離れた、英語の通じない地域で、現地の学校との交流と生活体験をする。生徒からは「日本では言葉は通じるけど心が通じない人がいるが、ベトナムでは言葉は通じないが心は通じる」との感想が聞かれているとのこと。先生方の手作りのプログラムが、日本の青少年に一番欠けている大切な部分を成長させているように思います。

 男子だけの6年間に不安を抱くお子さまもいらっしゃるかと思いますが、芝中学校の先生方はいつもお子さまを見守っていただけると思います。校地は若干狭いですが、東京タワーが間近で交通の便は非常によく、各地から通学可能な絶好の立地です。また学校の周囲は緑も多く、さまざまな施設も至近にあります。制服や白かばんなど伝統を大事にしながら新しい学びにもチャレンジする、ぜひ一度訪ねていただきたい学校の一つです。

仏教精神に加えICT・国際理解教育も充実の世田谷学園

 世田谷学園は、1592年に神田に開かれた曹洞宗の学寮・旃檀林(せんだんりん)が源流です。1902年に私立学校令に準拠し、曹洞宗第一中学林と改称しました。地元の一般子弟に入学を許可し始めるのは14年からです。第2次世界大戦後は世田谷中学、世田谷高等学校と改称し、さらに83年に現在の世田谷学園中学校・世田谷学園高等学校と改称しました。高校募集を停止し、中高一貫校となったのは95年です。

 教育理念は、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」を独自に英訳した「Think & Share」。モットーは「明日をみつめて、今をひたすらに」「違いを認め合って、思いやりの心を」。これらをベースに「智慧(ちえ)・慈悲・勇気の人」を育てています。

 世田谷学園の年間行事には、4月に釈尊降誕会(しゃくそんごうたんえ)、6月に総持寺一泊座禅、7月に精霊祭(しょうりょうまつり)、9月に両祖忌、達磨忌(だるまき)、10月に2年生は永平寺一泊座禅、11月に太祖降誕会(たいそごうたんえ)、12月に臘八摂心(ろうはつせっしん)成道会(じょうどうえ)、1月に高祖降誕会(こうそごうたんえ)、2月に涅槃会(ねはんえ)と数多くの仏教関係の行事があります。

 また、学園の施設に観性館(かんしょうかん)がありますが、その1階は60人が座れる禅堂です。登校時はまずは校門で学園に一礼します。同校が建学の理念とともに曹洞宗による心の教育を非常に大切にしていることが分かります。家庭ではなかなか教育の行き届かない面を、学校でしっかりとフォローしてもらえます。

 中高の6年間は前期、中期、後期に分けられ、前期は学習習慣の定着、中期は主体的な学習の確立、後期は大学進学に向けてのキャリアプランの探求を、それぞれ学習目標としています。中学生は1人1台のタブレットを持って学習するなどICT教育にも力が入ります。

 また、校外学習も盛んで、中1では2泊3日の黒姫サマースクール、沖縄を訪れて平和学習を行う中3の修学旅行、高1が全員参加する10日間のカナダ英語研修を行っています。他にも希望者には中2でのニュージーランド研修旅行が用意されています。

 中学2年からは特進クラスも設置され、ハイレベルの授業が展開されるとともに、一人一人を丁寧に見ながら各種の特別講習や補習を実施するなど、学習面でも非常に面倒見がよいです。高2からは文理に分かれ、高3からは志望校別のコースに分かれます。

 このような学習面でのフォローや国際理解教育の充実が大学合格実績にも表れ、特に2019年度は東京大学15人を始めとして国公立大学に58人が合格、私立大学では早慶上智に201人が合格、そして医学部医学科に38人合格、海外大学に5人合格と高い成果が出ています。

 入学試験は全部で4回、2月1日、2日、4日の午前中に4科目の試験、1日の午後には算数特選を実施します。1日の午後、2日の午前中の試験では特待生も選抜されます。1日午前の試験は第1志望の児童が多く受験し、他の試験に比べると比較的合格しやすくなっています。1日午後の算数特選は、都内の御三家レベルの難関校の受験者も多数併願します。算数が得意な児童にはチャンスが大きく広がりました。

 世田谷学園といえば座禅や柔道のイメージが非常に強いですが、これは同校の一つの側面にすぎません。仏教校らしい面、男子校らしい面もある一方でICT教育や国際理解教育も充実しています。また、比較的規模が小さい中高一貫校ですので、非常にきめ細かい生徒指導がなされています。三軒茶屋の駅から若干距離はありますが、閑静な住宅地にありますので、通学にも安心です。男の子らしく成長させたい。心の教育も充実した学校がよい。そのようなご家庭にはぜひおすすめしたい学校の一つです。

プロフィル
広野 雅明( ひろの・まさあき
 サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。

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1029271 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/01/31 12:01:00 2020/01/31 12:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200129-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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