国語力の低さは2タイプ、それぞれに合わせた勉強法を…水島醉<6>

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文章はスラスラ読めるのに、なぜか成績は芳しくない

文章はスラスラ読めるのに成績がよくない子供も…(写真はイメージです)
文章はスラスラ読めるのに成績がよくない子供も…(写真はイメージです)

 前回はPISAについての考察を差し挟みましたので、今回は前々回に続いて、国語力を上げる確かな方法についてお話しします。さて、前々回に述べましたように、文字は読めても文は読めていない子供(Aタイプ)には「10回音読」が非常に有効です。「10回音読」を正しく続けていただいた場合、私の指導する限り、例外なく国語力が上がっています。

 「10回音読」は、他の国語の勉強を一切しなくても、それだけで大きな効果があります。むしろ他の国語の勉強はしない方が良いでしょう。特に「長文切り抜き問題(以下 切抜問題)」はさせないようにしてください。Aタイプのような子供には、「切抜問題」は、よほど適切なものを用いてベテランの先生の指導の下でさせない限り、悪いクセが付いてしまう可能性が高いからです。

 Aタイプとは異なり、初見の文章をほぼスラスラと読むことができるのに、国語の成績が芳しくない子供もいます。これをBタイプと名付けることにします。国語ができない子供のおよそ8割のうち、半分がAタイプで、半分がBタイプです。

 もちろんBタイプの子供にも「10回音読」はたいへん有効です。国語力を上げる必要条件の一つですし、ぜひなさっていただきたいと思います。しかしBタイプの子供には、さらに有効な訓練法があります。

 Bタイプの子供は、文字も文(文章)も、読めてはいるけれどもそれを意味としてとらえられていない可能性があります。例えば「花子さんは公園に行きました」という文を読んだ時に、「(×年生ぐらいの)花子さんが、(どんな)(どこにある)公園に、(何のために)(いつ)行った」というような内容が頭の中で考えられないといけません。( )の内容は文中に書かれていませんが、読解力の高い子供は、それらも想像、仮定しながら、あるいは疑問に思いながら読んでいるのです。

Bタイプの子供は「意味化」ができない

 私は「意味化」という言葉でよくご説明しますが、文字はただの記号であって、それを「意味化」しない限り、いくらスラスラ読めたとしても、その文を理解したとは言えないのです。Bタイプの子供は、「意味化」ができないところに問題があります。

 Bタイプの子供は、教科書程度の文章ならば、比較的スラスラと読みます。しかしその直後に、その文章に書かれていたごくごく簡単な内容をそのまま質問しても、Bタイプの子供はそれに答えることができません。いくらスラスラ読めていても、言葉という記号が頭の中を風のようにすり抜けて行っているだけなのですね。まさに「右の耳から左の耳」という慣用句の通りです。

 これは、「文字」という書かれた記号を音声化するところまではできても、それを意味化することができていない状態です。

 文字はせいぜい5000年の歴史しかありませんから、文字記号を音声化するためには、それなりの個人レベルの訓練が必要です。それが「10回音読」です。しかし、耳で聞いたことを理解する、つまり音声化された情報を「意味化」するのは、人が赤ちゃんの時から日々の生活で無意識に訓練されていることですし、ほぼ間違いなく人間の本能に組み込まれていますから、自然に使えるようになるはずのものです。

 にもかかわらずBタイプの子供は、音声情報を意味化できない。これはおそらく「本から得た音声情報(頭の中で音声化した情報)は、意味化しない」という悪いクセが付いたものではないかと、私は考えています。嫌いな読書、嫌いな国語の授業を強制されてきたため、また自分の理解を超える言葉や内容の羅列を頭に入れ続けられたため、本から得た音声情報は「右の耳から左の耳に流してしまう」という習慣になってしまったのでしょう。

 (文字からではなく、耳で聞いた話し言葉を理解できない、また理解するのに時間がかかる、というような子供の場合、国語力ではない「集中力」や「聞き取りの力」などが不十分な可能性があり、別の訓練が必要かもしれません)

 確かに、難しい内容の文章ならば、仮にスラスラ読めたとしても意味化できない、というのは、十分理解できることです。しかしBタイプの子供は、非常に易しい文章でも、意味化できていないのです。

Bタイプは「(かっこ)要約」の訓練で力が付く

 さて、Bタイプの子供には「(かっこ)要約」がたいへん有効です。

 「(かっこ)要約」とは、ある文章のあらすじ、あるいは要約の一部分が(かっこ)抜きになっていて、そこに正しい言葉を元文章から書き入れる、というものです。

 以下に例を挙げます。元文章は「走れメロス」(太宰治)です。青空文庫でも公開されていますから、それを見ながら解いてみてください。

 メロスは(ア)した。かの邪智(じゃち)暴虐の(イ)を除かなければならないと(ウ)した。メロスは(エ)だから(オ)のことはわからないが、(カ)に対しては(キ)だった。

 元文章を読みながら(かっこ)内に記入すれば良いのだったら、こんなの誰にでも解けるだろう、と国語のできる方なら思われるかもしれませんが、それは間違っています。多くの方々の知っていらっしゃる内容の文章を、と考えて、ここでは「走れメロス」を選びましたので、使用されている言葉が少々難しいのですが、仮に内容も言葉も、もっともっと易しい文章であっても、Bタイプの子供は、元文章に書いてある内容そのままの設問に答えられないのです。

 この「(かっこ)要約」は、国語力がBタイプ以下か、それを超える(業者模試で偏差値60程度以上)か、を明確に判定します。

 Bタイプより上の国語力を持つ子供は、「こんなの簡単!」とばかり、スイスイ、スラスラと解きます。

 しかしBタイプおよびそれ以下の子供は、この「(かっこ)要約」を解くのをたいへん嫌がり、真面目に解いたとしても、Bタイプより上の国語力を持つ子供が解く時間の何倍もの、場合によっては何十倍もの時間がかかってしまいます。

 教科書程度の文章がスラスラ読めるにもかかわらず、なかなか点数につながらない。そういう子供さんの場合、「10回音読」に加えてこの「(かっこ)要約」を訓練していただくことをお勧めします。

 「(かっこ)要約」がスラスラ解けるようになれば、それだけで偏差値60あたりには達しますから、結構な国語力です。また、その段階にまで達すれば、さらにその上、超難関校を目指すために「切抜問題」をなさっても、効果があるでしょう。

(かっこ)要約の解答
ア:激怒  イ:王  ウ:決意  エ:牧人  オ:政治  カ:邪悪  キ:敏感

プロフィル
水島 醉( みずしま・よう
 1990年から「エム・アクセス」講師。「問題を解かせる→解説」という授業は国語力の向上につながらないと考え、「読書・思考・記述」を中心とした国語指導を展開している。「読む・聞く⇔書く・話す」の4ルートを鍛えることによって国語の地力を向上させる「視聴話写」という教材を開発。子供の心の成長と学力との関係を重視し、「マインドフルネス学習法」を提唱、授業に応用している。著書に「国語力のある子どもに育てる3つのルールと3つの方法」(ディスカヴァー携書)、「進学塾不要論」(同)など。

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1064577 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/02/21 09:43:00 2020/02/21 09:43:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200217-OYT8I50048-T.jpg?type=thumbnail

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