「算数に取り組む楽しさ」感じられていますか…粟根秀史<1>

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 お子さんの日常の学習の様子についてチェックしてみましょう。

1.宿題は「提出すること」が目的になっている。
2.分からないことがあったら、じっくり考えず「すぐ質問」している。
3.復習テストで良い点数を取るために解き方を「暗記」している。

 どうでしょうか? あてはまる項目はありましたか? 「身に付く学習」とは「その内容に取り組む楽しさ」を感じられることが前提となります。上記三つの学習にはその前提が存在しないため、見直す必要があります。

「形式」だけの学習ではなく「実質」の伴った学習を

 どの大手進学塾でも、それぞれの科目の先生が自分の教えた内容を復習させるために、生徒たちに大量の宿題をこなすことを要求します。なかには宿題用のノートやプリントを提出しないと叱る先生もいます。保護者の方も「うちの子は宿題がないと自分から勉強しないから」「とりあえず宿題をやっていれば力が付くはず」と思いがちで、お子さんに宿題だけはきちんとやるように声掛けをし、ときには手伝って何とか終わらせようとします。そして、いつの間にか家庭学習の到達目標が「大量の宿題を片付ける」になっています。追われている状態で「身に付く学習」ができるでしょうか。

 そもそも学習とは「知識を得る」「考える力を伸ばす」など、それ自体が子どもにとって楽しい活動のはずです。ところが実際は無味乾燥な作業となっているケースも少なくありません。「やっつけ仕事」的な学習に追われる日々、まずこれを改善しない限り「算数に取り組む楽しさ」を感じることはできません。宿題を全部やる必要はないのです。何をやれば我が子の学力が伸びていくのか。効率的な学習にするために、やるべきことを絞るべきです。

 お子さんの学習の様子についてチェックしたとき、問題を解いて、ただ○と×を付けるだけの答え合わせをしたり、赤ペンで解説を写しただけの間違いノートを作ったりしていませんか? それが「思考停止の流れ作業」で行われているのでは意味がありません。限りある時間を無駄に使ってしまうばかりか、全く正しくない学習観を植えつけてしまうという点でも「百害あって一利なし」と言えるでしょう。それよりは、たとえ手を着けた問題の数が少なかったとしても、「なぜ解けなかったのか」「なぜ間違えたのか」「なぜこのような式になるのか」と丁寧に考えて理解した方がよほど身に付きます。当たり前のことなのですが、塾の課題に追われる日々が続くと、こんな基本的なことまで見失ってしまうのです。

 クラス全体を対象とした宿題は、個々のレベルに合わせたものではありません。ご家庭で何を削ればよいのか判断しづらい場合は、保護者の方から塾側にお子さんの学習状況を説明して、塾の先生から具体的にアドバイスしてもらいましょう。これは重要なことですから面倒がってはいけませんし、遠慮してもいけません。お子さんのレベルを把握している先生に、その週の学習ポイントを絞ってもらうのが最も効率的です。

「何が分かっていて、何が分からないのか」を自分ではっきりさせること

 「分からないことがあったらいつでも質問に来てね」と塾の先生は言ってくれます。保護者の方も、問題を前にして手が止まっている我が子を見ると、「時間がもったいないから質問に行けば」などと促します。また、子どもの方も早く終わらせたいので、たいして自分の頭で考えることなく、少しつまずいただけで質問に行くようになります。授業ではクラス全員の先生が、質問の時は1対1、自分だけの先生です。そして、問題の意味の説明から始まって、最後の答えに至るまでを丁寧に自分のためだけに解いてみせてくれます。よく分かった気になるだけでなく、満足感が得られるのかもしれません。さらには、家に帰ると質問してきたことを保護者に褒められます。

 周りが良かれと思ってさせていることが、実のところは肝心な思考力や理解力を伸ばす機会を奪っています。なぜなら、この過程ではお子さんの頭に負荷が全くかかっていないからです。質問することがいけないことではありません。質問しないと前に進めないことも多々あります。ただ、利用の仕方を誤ってしまうと、「思考することを面倒がる子」になってしまいます。

 質問を最大限に活用するには、質問に行く前に「分からないことの絞り込み」という過程が必要です。この過程には必然的に論理的思考の訓練が伴います。「いま、何が分かっているのか」「自分はどこまでできているのか」「まだ、使っていない数値はないか」「何が分かれば答えが出せるのか」。質問をする前にじっくりとそういったことを考え抜く過程こそが大事です。この過程があるからこそ、質問して説明を聞いたときに「なるほど!」と納得感のある理解ができるのです。こういった体験を積み重ねることによって、本当に身に付く学習法のコツが自然と分かるようになります。

「目先の点数」だけを追うと、「真の実力」は付かない

 多くの大手進学塾では、週に1回のペースで復習テストを行います。このテストはその週に学習した単元の問題が解けるかどうかを試すことを目的として、塾によっては塾内での順位や偏差値なども返却されるほどの徹底ぶりです。苦手な単元やできない問題を洗い出すという点では、このテストは有効です。それ自体を否定するものではありませんが、大きな落とし穴があることも事実です。

 算数のテストでは、内容がその週に学習した問題の数値替えや類題になっていて、短い時間で多くの問題を解くことを要求されます。一問一問じっくりと考える時間はなく、条件反射的に処理していかなければ高得点は取れません。したがって、「問題のパターンと解法のパターン」をセットにして、丸暗記に近い状態でテスト当日を迎える子どもが出てしまうのです。

 一夜漬け的な学習では、範囲の狭い復習テストで仮にその時は高得点が取れたとしても、そのテストが終わってしばらくすればその内容を忘れてしまう子は多いです。そうなると範囲の広い「実力テスト」には対応できません。

 「考える→理解する→繰り返す」の三つのステップを踏むことが大切です。前述の丸暗記による学習では、「考える→理解する」という二つのステップが抜けています。当然のことながら、算数の問題への取り組みではここが最重要であり、そして楽しさを感じることができるプロセスでもあります。この「考える→理解する」という土台の上に「繰り返し」(=反復練習)が行われることによってのみ、本当の定着がなされていると言えます。

「考える子に育てる」ために保護者の方にやっていただきたいこと

 自分で考えて、理解しているかどうかのチェック法は、「お子さんに解き方を説明してもらうこと」です。このとき、保護者は説明を聞く側に回ることが重要です。この方法は、解法丸暗記に陥るのを防ぐだけでなく、理詰めで考える論理的思考力を伸ばすことができます。さらには、最近増えている「解き方の説明を書く」記述式問題対策につながるなど、さまざまなメリットが期待できます。

 ただし、保護者の方は聞き役を演じることに徹底するということが絶対条件となります。「どうしてこんなのができないの?」とか「そんな説明じゃよく分からないわ」などと余計な一言(二言、三言…?)を言ってはいけません。重要なポイントは、お子さんが頭の中で、授業で習ったことや自分が書いたことを振り返りながら、学習で得た情報をつなぎ合わせて整理していくことにあります。説明が上手かどうかに厳しいコメントを伝える必要はありません。説明の中に多少たどたどしい部分があっても、保護者の方は「なるほど!そうだったの」「ママよりかしこいね!」などの承認の言葉掛けでお子さんの気分をよくしてあげてください。まさにこの時間がお子さんにとって「算数に取り組む楽しさ」を思いっきり感じられる時間となるのです。

プロフィル
粟根 秀史( あわね・ひでし
 教育研究グループ「エデュケーションフロンティア」代表。森上教育研究所客員研究員。大学在学中から塾講師を始め、35年以上にわたり中学受験の算数を指導。首都圏の大手進学塾教室長、私立小学校教頭を経て、現在は算数教育の研究に専念する傍ら、教材開発やセミナー、講演を行っている。また、独自の指導法によって数多くの「算数大好き少年・少女」を育て、「算数オリンピック」金メダリストや灘中、開成中、桜蔭中の合格者などを輩出している。「中学入試 最高水準問題集 算数」「速ワザ算数シリーズ」(いずれも文英堂)など著作多数。

無断転載禁止
1191949 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/05/02 16:00:00 2020/05/02 16:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200428-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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