読書は「文字」を理解するために必要な訓練…水島醉<8>

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中学入試レベルの国語なら読書だけで十分

国語が良くできる子供の共通点は大量の読書(写真はイメージです)
国語が良くできる子供の共通点は大量の読書(写真はイメージです)

 本質的な国語力を高めるには、乱読・多読が良いのだ、と私は前回申し上げました。英語でも「多読」がブームになり、それは現在でも続いています。書店に行けば、「英文多読」のコーナーがあるぐらいです。英語に限らずどの言語であっても、語学を鍛えるには「多読」は有効なのでしょう。

 英語の場合、それは日本人にとって外国語だから「多読」だけでは学習に足りません。単語の暗記や文法の理解など、他の学習も必要です。

 しかし日本人にとって日本語(国語)は母語であり、たとえ小学生であっても、外国人から見れば十分レベルの高い「日本語話者」です。特別な暗記の学習時間を取らなくても多くの単語を覚えていますし、体系的な学習はまだしていなくても、体で文法を理解しています。ですから日本人が国語(日本語)の学習をする場合、特に中学入試レベルまでの国語ならば、読書だけで十分そのレベルに達することができます。また、以前にもお話ししましたように、本当に高い読書力を持っている子供なら、小学生であっても難関大学の入試国語で合格点を取ります。その子供たちが何か国語の勉強をしたでしょうか。いいえ、していません。国語が飛び抜けて良くできる子供のほとんどは、国語の勉強などほぼしていないのが現実です。ただし、大量の読書はしているというのが共通点としてあります。

 国語学習の基本は読書です。外国語を学ぶ場合になら必要な単語の暗記や文法の理解も、日本語が母語の者にとっては、それほど大変な作業ではありません。難しいのは「文字情報」を「音声化」することであり、さらに難しいのは、「音声化」された情報を「意味化」するという作業です。

人間は本能として「文字」を使いこなせる力を持たない

 人間が「コトバ」をインプットするインターフェースは、基本的には「耳」と「目」です。「耳」から入るのは「音声情報」で、「目」から入るのは「文字情報」です。

 カラスが言葉を話しているという事実は、もうかなり以前から分かっています。「餌がある」だとか「危険だ」とか、また「遠い」とか「近い」とか、そういった内容のことを「カァー」という発音の抑揚などを用いて、単語1語で伝えているようです。

 また近年、シジュウカラという鳥が、単語を単独ではなく、2単語以上組み合わせて「文」を作っている、という研究データが発表されています。

 私は専門家ではありませんので、どの動物がどの程度の内容を、「コトバ」を使って話し、理解しているのか、正確には知りません。しかし動物が、原始的ながらも「コトバ」を話しているのは確かなようです。おそらく進化の過程で自然に獲得してきた力の一つなのです。

 ですから、音声としての「コトバ」は、それを使いこなす力を、人間が生まれた時に本能としてすでに持っているのでしょう。

 しかし「文字」はそうではありません。遡っても、人間が「文字」を使うようになったのは、ほんの5000年ほど前のことです。動物の進化の歴史と比べると、5000年というのは、ほんのわずかな時間にすぎません。人間が本能として「文字」を使いこなせる力を持っているかというと、そうではないでしょう。ですから人間が「文字」を使いこなすためには、まずは「文字」を読んで理解することを訓練しなければならないのです。

 もし、入試が「口頭試問」、つまり耳で聞いて口で答える試験方式であれば、入試対策に私が言うような「読書」など全く必要ないでしょう。しかし現実の入試のほとんどはペーパーテストです。「文字」を読んで理解し、そしてそれに対して「文字」で解答しなければなりません。そのためには、どうしても「文字」を読んで理解し、「文字」で表現する訓練が必要となります。

 国語以外の学習について、仮に「歴史」なら、日本語を読んで理解し、そしてさらに歴史の内容について答える必要があります。ですから「文字を読む」訓練だけでなく「歴史」の内容についても学んでおく必要があります。

 しかし「国語」の試験は、日本語を読んで理解し、その内容について答えるものです。ですから日本語を読んで理解することができれば、多くの場合はその内容に答えることができるのです。文字を読むのが得意な子=読書が好きで好きでたまらない子にとって、国語の試験などそんなに難しくありません。むしろ国語のできないことが不思議なのです。国語の本当に得意な人に聞けば「国語の勉強などしたことがない」と言いますし、「どうして国語ができないのかが理解できない」と言います。国語の得意な人にとって、それは嫌みでも何でもなく、本心よりそう思うからです。足の速い、かけっこの得意な小学生に、その理由を聞いてみてください。「とくに練習などしていない」「元々速く走れた」などと答えるでしょう。国語と同じことです。走るのが好きなその子にとって、普段から好きで走っていたら、勝手に足が速くなっていただけのことです。それを「なぜ」と聞かれたら、困るに違いありません。

「コトバ」を駆使する脳の部位を鍛える

 「文字」を読んで理解する力は、本能にはまだ備わっていません。ですから訓練が必要です。それが読書なのです。また「文字」を書いて表現する力も、生まれ持ってはいないので、それはそれの訓練が必要です。

 「コトバ」のインプットのインターフェースが二つあったように、「コトバ」のアウトプットも二つあります。「口」から出す「音声」と、「手」から出す「文字」です。

 情報をインプットしてまたアウトプットする場合、それぞれのインターフェースが二つずつありましたから、そのルートは2×2で4ルートあることになります。それらは「耳(音声)→口(音声)ルート」、「耳(音声)→手(文字)ルート」、「目(文字)→口(音声)ルート」、「目(文字)→手(文字)ルート」の4ルートです。

 専門家によると、脳の中で、音声情報と文字情報を処理している部位は異なっているそうです。そうすると上記のイン→アウトの四つのルートは、それぞれ脳の異なる部位を使用していることになります。

 イン2、アウト2のインターフェースを組み合わせ、駆使する「聴き・話し・読み・書きの能力」は、そういう脳の機能によるところが大きいということです。つまりは、それぞれの部位・ルートを鍛えることが、国語力の向上に欠かせないということになります。

プロフィル
水島 醉( みずしま・よう
 1990年から「エム・アクセス」講師。「問題を解かせる→解説」という授業は国語力の向上につながらないと考え、「読書・思考・記述」を中心とした国語指導を展開している。「読む・聞く⇔書く・話す」の4ルートを鍛えることによって国語の地力を向上させる「視聴話写」という教材を開発。子供の心の成長と学力との関係を重視し、「マインドフルネス学習法」を提唱、授業に応用している。著書に「国語力のある子どもに育てる3つのルールと3つの方法」(ディスカヴァー携書)、「進学塾不要論」(同)など。

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1311204 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/07/04 16:00:00 2020/07/04 16:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200630-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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