玉川聖学院の最先端オンライン授業の現場…辛酸なめ子<30>

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オンライン礼拝だと部屋まで学院長が来た感じ

 新型コロナウイルス感染症の流行により、長らく全国の学校が休校になり、生徒さんたちの学ぶ機会が失われたことを老婆心ながら案じておりました。6月からは徐々に学校が再開となりましたが、その間はどうなっていたのでしょう。いち早くオンライン授業のシステムを取り入れた玉川聖学院に取材に伺い、話を聞くことができました。世の学校がこんなシステムを持っていたら、これから第二波、第三波が来ても学び続けられると、安心材料が得られました。

 玉川聖学院では、早くも高等部は4月13日から、中等部は4月23日からオンライン授業をスタートできたそうです。それを可能にしたのは5年前にすでにネット環境の下地ができていたから。2015年に高等部の生徒に1人1台iPadを持たせる計画がスタート、それと同時にWi-Fi環境を整備。学校では導入しているところが少ない、本格的なCisco社のWebexシステムを採用したそうです。姉妹校とのやりとりに活用されていたシステムが、コロナ禍で役に立ちました。

谷口ホールにて、心で歌う讃美歌。教職員が歌った音源が流れているのでそんなにさびしくありません
谷口ホールにて、心で歌う讃美歌。教職員が歌った音源が流れているのでそんなにさびしくありません

 ICT(情報通信技術)にくわしい先生を中心にプロジェクトチームが発足し、全教職員がWEBで授業を行えるようにマニュアルが作成されました。分散登校が可能になった6月以降は、登校日以外の生徒さんは家でオンライン授業を受けているそうです。これで学習の遅れも抑えられて本当に良かったです。

 実際に校舎を回って今の状況を拝見させていただきました。朝8時すぎ、大きめの谷口ホールには高2の5クラスの生徒さんが集まっていました。講堂の壁にはWi-Fiの無線を飛ばす機械が4つ設置。ステージの机の上にはパソコンが置かれ、そこから各家庭の生徒さんに向けて礼拝を放映します。担当されたのは話術に定評がある安藤理恵子学院長。礼拝は讃美歌から始まりますが、このご時勢なので歌わず、心で讃美する形に。自宅から見ている人は部屋でひとりで歌えます。お祈りに続いて、今回の聖書の箇所はルカによる福音書の一節で、イエス・キリストが悪霊を追い払ったり、熱にうなされた老女を救うという場面でした。イエス・キリストが熱を叱りつけたら熱がひいた、という聖書の記述に、もしかしてウイルスも叱りつけたら出ていってくれるのではないかと一縷(いちる)の望みを抱きました。

オンラインと講堂で同時にハイブリッド礼拝をこなす安藤学院長。講演のテクニックがすごいと評判で、話に引き込まれます
オンラインと講堂で同時にハイブリッド礼拝をこなす安藤学院長。講演のテクニックがすごいと評判で、話に引き込まれます

 「今は生徒は皆マスクをしていて、表情がわかりにくいのでちょっと話しづらいですね」と、礼拝を終えた安藤学院長はおっしゃっていました。お互い目しか見えていない状態なので、生徒さんの目の輝きで集中度を察知するしかありません。

 「オンラインの礼拝は画面に集中できるので、センシティブな話題でも素直に受け止められるかもしれません」とのこと。目の前の画面に学院長が映っていると、部屋に来てくださったようなありがたい感じもします。

 あとで改めてオンライン礼拝について学院長に伺うと、「聖書の言葉が助けになっていると信じています。3月4月はどうなるんだろうという空気感がありましたが、リモートで働きかけることで、よりどころはここにあるよ、と伝えることができて良かったと思います」と、おっしゃっていました。家で毎日讃美歌を聞くことでも、不安を軽減できそうです。

やはり本物は「教育系ユーチューバー」とは違う

生物の授業をしている先生。教室は無人ですが画面の向こうにはたくさんの生徒たちが……
生物の授業をしている先生。教室は無人ですが画面の向こうにはたくさんの生徒たちが……
「質問がある人はマイクをオンにしてして質問してください」と、受け身だけではない双方向性のオンライン授業です
「質問がある人はマイクをオンにしてして質問してください」と、受け身だけではない双方向性のオンライン授業です
保健体育の授業では、実際にこのようにiPadに映し出されています。かなり画像がクリアです
保健体育の授業では、実際にこのようにiPadに映し出されています。かなり画像がクリアです

 教室を回ってオンライン授業を見学。生物の授業では男性教師が魚の産卵について講義していました。画面の中にプリント的な説明文も表示できます。画面の上には自宅から聞いている生徒さんたちのオンライン映像が並んでいました。これでまじめに聞いているか一目瞭然です。ネット環境があまり良くない生徒さんは顔は出ない設定になっているそうです。

 続いて英語の授業。先生がパワーポイントを駆使し、問題文の空欄に答えが出てくるようなアニメーションの演出をされていてわかりやすいです。編集作業は大変そうですが……。隣の部屋では習熟度が違う英語のクラスをオンラインで行っていました。教室に誰もいなくても、通常の授業と同じテンションでパワフルな発声で講義する先生。その熱意はきっと電波で届いています。別の教室でも英語の授業を行っていて男性教師がコアラの生態について熱い口調で語っていました。社会の授業では、インドとパキスタンとバングラデシュの関係について解説。画面に国旗を映して、生徒さんを当てて「インドの国旗はどちらでしょう」などと問題を出していました。それぞれ先生方は教え方を工夫しています。この授業で、インドの国旗のオレンジはヒンドゥー教、緑色はイスラム教を表すことを知りました。物理の授業では少数精鋭の生徒に向けて、電気の回路について授業。先生がiPadに直接書き込むとすぐ画面に反映されて便利です。保健体育の授業では、ちょうど第二次性徴の体の変化について講義していました。精巣や月経といったワードが聞こえてきます。周りの反応が気になる繊細なテーマなので、部屋でひとりで授業を受けられるのは良いかもしれません。

保健体育の授業のあと、話を聞かせてくださったまじめな生徒さん。早く普通に登校できる日が来ることを祈ります
保健体育の授業のあと、話を聞かせてくださったまじめな生徒さん。早く普通に登校できる日が来ることを祈ります
情報センターでは机の間にビニールシートが張られていて飛沫(ひまつ)防止になっていました。安心して勉強に集中できます
情報センターでは机の間にビニールシートが張られていて飛沫(ひまつ)防止になっていました。安心して勉強に集中できます

 授業を終えた生徒さん2人に少し話を聞かせてもらいました。「私はスマホで見ていますが見づらいと思ったことはありません」「眠くなることもないです」と、オンラインでも問題なく受講できている様子。いっぽう、「家の中だといろんな音が混ざるので教室の方が集中しやすいです」「学校に行った方が友達もいて楽しいです」とのことで、やはり心の中では前のように登校したいという思いがあるようでした。コミュニケーション力や社会性を養うにはやはりリアルな学校生活がベストです。ただこの時期のオンライン授業も、振り返ってみれば貴重な体験となることでしょう。

 一瞬聞いただけで後ろ髪を引かれるほど、どの授業も興味深かったです。外出自粛中、「教育系ユーチューバー」の動画を結構見ていたのですが、上から目線の口調が伝染しただけでした。やはり本物の教職を持った教師はレベルが違うことを再確認しました。学校内だけでなく外部に公開してほしいくらいです。

 授業を受ける生徒さんの様子について先生に話を伺いました。けじめをつけて家でも制服姿で授業を受けている人もいるそうですが、オンラインに慣れてくると、生徒さんもリラックスムードに。画面を非表示にしてどこかに行っちゃう人、お菓子をこそっと食べている人、下半身が部屋着のショートパンツの人、ぬいぐるみを抱いている人、そして唐突にペット紹介が始まることも……。画面にモコモコしたものが見えたと思ったら犬だったり、手の上のハリネズミをずっと()でている人もいたそうです。大人でもストレスや不安が多い日々、そうやってリラックスしてオンライン授業を受けられる生徒さんの姿にポジティブな可能性を感じずにはいられません。ハイブリッド授業で進化した人類が生まれる予感です。

プロフィル
辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
 漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

無断転載・複製を禁じます
1342592 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/07/17 05:21:00 2020/07/17 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200714-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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