Withコロナ時代の2021年中学入試(2)…北一成

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「学校の存在意義」そのものを考えさせたコロナ禍

 コロナ感染対策の緊急事態宣言が5月25日にようやく解除され、6月からは多くの学校で登校が再開されました。春休みも含めて「学校に通えない」期間は3か月に及びましたが、多くの私立中学校・高等学校は、決して「生徒の学びを止める」ことをしませんでした。

 大半の学校がオンラインや郵送、宅配便など、あらゆる可能な手段を使って、教科書や教材、課題を届け、生徒が「学び続けることができる」状態を全力で作りました。なかでも、オンラインを使って生徒とのやり取りを継続、再開し、登校できない環境下でも「学校を再開」していた私立中高が多かったのです。

 首都圏模試センターの編集部が知る限り、首都圏でも最も早い3月2日から、自宅にいる生徒とのオンライン授業をスタートさせた静岡聖光学院(静岡市、男子校)を始め、十数校の私立中高が、3月中からオンラインでの生徒とのやり取りを開始しました。

多くの私立中高ではオンライン授業をスタートさせた(写真はイメージです) 
多くの私立中高ではオンライン授業をスタートさせた(写真はイメージです) 

 多くの私立中高では、教職員が一丸となって準備を進め、休校期間中一斉に、オンライン授業の動画などを制作しました。たとえば、聖学院(東京・北区、男子校)は4月13日、計100本もの授業動画をオンラインで一斉に配信開始し、そのスピード感と授業クオリティーの高さに生徒を感嘆させたというエピソードがマスコミ報道でも伝えられました。生徒1人1台のiPadを導入して6年目を迎えた佼成学園(東京・杉並区、男子校)でも4月13日から一斉にオンライン授業を開始しています。それ以前にも3月31日からオンライン春期講習、4月1日からは部活の生徒同士のオンライン交流などを行っていたといいます。

 4月中旬以降は、多くの私立中高でオンライン授業(動画配信やリモート授業など)を始め、課題の配布・提出、朝のホームルームなどをオンライン上で再開。個別面談や部活動、時間割に沿った学校生活まで再現し、「生徒の学びを止めない」機敏な動きを一斉にスタートさせています。

 それは、メンタルケアも含めた「生徒の健康・安全」、未体験の環境下でのモチベーションの維持のためでもありました。在宅中のわが子への対応を間近で見守っていた保護者からは、「毎朝、オンラインのホームルームで、子供が先生と顔を合わせ、声をかけてもらったり、クラスの友達の顔を見て互いに言葉を交わしたりするだけでも、大きな安心感を得ることができました」といった感想が多く聞かれました。

 世の中は一見平常と変わらないのに「外出を控える」という経験は、やはりそれぞれの家庭に大きなストレスとなったはずです。そうした環境下では、たとえオンライン上でも「学校(先生や友達、クラスや部活動の仲間)とのつながり」を日々感じることができたことは、生徒や保護者にとって大きな励みや心の支え、生活リズムの柱になったに違いありません。その意味で、今回のコロナ禍の中での生活が、「学校の存在意義」そのものを考えさせる機会になったということもできるでしょう。

5月連休明けには90%以上の私立中高がオンライン授業

 首都圏模試センターでは、3月31日に首都圏の約200校を対象に「緊急Webアンケート」を、さらに登校再開後の6月18日には「5月末~6月の登校再開状況についてのアンケート調査」を実施しています。

 続いて6月22日にも「3月~6月のオンライン活用(授業やHRなどの学校活動)についてのアンケート調査」を行い、7月4日現在で94校からの回答を得ました。その結果、4月中旬の時点で、私立中高の約65%が、さらに5月の連休明けの時点では90%以上が、何らかの形でオンラインによる生徒とのやり取りや授業を実施していたことが明らかになりました。

 5月末には公立学校でも一部の自治体で「約80%がオンライン授業を実施」という報道がありましたが、やはり公立学校に比べて私学の対応は柔軟で素早く、保護者と生徒に安心感を与えるものだったと言えます。

 5月末から6月初旬にかけて、ほとんどの私立中高が登校を再開しましたが、まだ6月中旬の時点では、多くが「分散登校」主体のため、登校しない学年やクラスの生徒に対しては「オンライン授業との併用」を続けているのが実情です。なかには生徒と教職員の安全を考慮して「6月いっぱい」、もしくは「1学期間(~7月)」は、これまで通りのオンライン授業を継続すると公表している学校もあります。それもまた「私学ならではの柔軟な独自の対応」と言うことができるでしょう。

 少なくとも、コロナウイルスに有効なワクチンが開発され、人々に行きわたるようになるまでは、「アフターコロナ」と言える社会環境には戻りません。だからこそ、今後まだ続く「withコロナ」の期間は、オンライン活用による授業や学校生活が継続されていくことになるはずです。中学受験生が通う進学塾・学習塾でも、教室でリアルな授業を受ける形と、オンライン授業を受講する形とを、各家庭の希望で選択できるようにして再開したケースは少なくありません。

 中学受験生と保護者の皆さまには、そうした前提も意識して、これから来春2021年入試までの受験勉強と受験準備、学校選びのためのアクションを進めていっていただきたいと思います。

今後はリアルの学校訪問とオンラインの両方で学校選びを

 首都圏模試センターは、5月24日に「自宅受験」のみで、7月5日には「自宅受験」と「塾内受験」の両方で「合判模試」を実施しました。両日ともオンラインでの「おうちde説明会・相談会」というイベントを同時開催し、私立中121校が参加しました。その際、保護者の皆さんには、「学校選び」のためのアクションとして、こうしたオンラインでの説明会や相談会に、積極的に参加することをお勧めしました。

 「東京アラート」も6月12日に解除されたとはいえ、まだコロナが去ったわけではありませんし、7月に入ってからは再び予断を許さない状況となっています。徐々に私立中学校の学校説明会や相談会、見学会も再開されてくる見通しですが、いわゆる「3密」を避けるうえで、何百人から千数百人の保護者が一堂に集まるような人気校の説明会が、例年通りに実施できるとは考えにくい状況です。

 したがって、中学受験生と保護者は、登校再開後の各校に実際足を運んでの説明会、相談会、見学会などへの参加と、オンラインでの「学校を知る」機会を、上手に併用していく必要があると考えるべきでしょう。

 こうした状況が続くことも考えて、首都圏模試センターでは9月以降の模試の際にも、オンラインによる「おうちde説明会・相談会」を継続していく予定です。イベントのメニューも、(1)いつでも見られる「Web動画説明会」と、(2)双方向で質問・相談・体験ができる「ライブ相談会・説明会・体験会」という二つのメニューを用意しています。

 保護者の中には、まだ、Zoomなどのオンラインツールに慣れていない保護者もいるかもしれませんが、先にお伝えした状況により、今後の「学校選び」には必須のものと考え、この機会にツールを活用してみていただくと良いでしょう。また、それが各私立中高で現在も行われている「オンライン授業(学校活動)」の実際を知るうえで、良い経験や視点づくりにつながってくると思います。

 日本の学校教育におけるICT活用は、世界でも遅れていると言われてきましたが、皮肉なことに、今回のコロナ禍がいや応なくそうしたICT活用を全国の学校現場に迫ることになりました。

 確かにオンラインでは、交流する相手や仲間との距離感、熱気を肌感覚で共有することは難しいかもしれません。しかし、そうしたリアルな交流がしにくい状況であっても、オンラインだからこそ可能な、「居場所を超えた」国際的な交流や、全国の中高生間の交流を実現している私立中高もすでに存在します。

 「リアルな交流や体験はしにくい状況であっても、『感動』や『協働』『共感』はオンラインでも実現できる」ということを、私立中高や中高生が証明していることに注目したいと思います。

プロフィル
北 一成( きた・かずなり
 首都圏模試センター教育研究所長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

無断転載禁止
1345911 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/07/20 05:22:00 2020/07/20 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200715-OYT8I50082-T.jpg?type=thumbnail

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