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同志社女子で女子校の空気を満喫…辛酸なめ子<32>

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「京都人」のブランドがあれば、別学、共学は気にしない?

栄光館のホールはクラシカル。こちらの建物は登録有形文化財(建造物)だそうです
栄光館のホールはクラシカル。こちらの建物は登録有形文化財(建造物)だそうです
新島襄先生が鎖国中に乗ってアメリカに渡った船の模型。アメリカでキリスト教の精神に目覚めたそうです
新島襄先生が鎖国中に乗ってアメリカに渡った船の模型。アメリカでキリスト教の精神に目覚めたそうです

 京都御所の真横に建ち並ぶ、煉瓦(れんが)の校舎。前にこの校舎を見かけてから、同志社女子中高に憧れの気持ちを抱いていました。今回、はじめて今出川キャンパス内を見学し、夏休みで部活動中の生徒さんの姿を垣間見ることができました。

 入ってすぐのところにあるのはクラシカルな栄光館。全校生徒が集まれる講堂もあります。壇上の紫色の緞帳(どんちょう)が目を引きますが、同志社のスクールカラーの一つ、ロイヤル・パープルでしょうか。立派なパイプオルガンもあり、名門女子校の品格が漂います。でも広報の吉田先生に伺うと、京都は別学がどんどん減っていって共学化しているとか。女子校にいたっては7校しか現存していないそうでもったいないです。希少な同志社女子がいつまでも存続してくれることを祈ります。もしかしたら、京都の人は私立女子校、男子校といったブランドがなくても、そもそも「京都人」という強いブランド力があるから学校の形態にはこだわらないのかもしれません。

希望館の屋上からのぞむ比叡山。緑が常に視界に入るのは視力にも良さそうです
希望館の屋上からのぞむ比叡山。緑が常に視界に入るのは視力にも良さそうです
かなり広い図書室には9万冊もの蔵書が。この図書室に憧れて受験したという生徒さんも
かなり広い図書室には9万冊もの蔵書が。この図書室に憧れて受験したという生徒さんも

 「同志社女子のメリットは同志社大学や同志社女子大学に進めるということ。それから最高の立地です。創立者の新島襄先生はよくこの土地を見つけてくださいました」

と、吉田さんがおっしゃるとおり、京都御所と山に囲まれた最高のロケーション。希望館という新しい校舎の屋上に上ったら、比叡山や大文字焼きの山に囲まれていてかなり癒やされる眺望でした。東京の学校はだいたいビルしか見えません……。ここからは大文字焼きなど、五山送り火のうち四つの山が見えるとか。五山送り火は厄払いのご利益があるそうで、生徒の厄除(やくよけ)運気アップに寄与していそうです。ただ屋上はトンビやカラスが食べ物を狙って襲撃してくる可能性があるので飲食は禁止だとのこと。でも、屋上以外にも食堂や生徒が座れるフリースペースが各所にあり、吹き抜けもあって明るい光にあふれています。教員室に面したスペースでは自由に自習したり、聞きたいことがあったら窓から先生に質問できるそうです。地下一階の図書室もかなり広くて、ソファまでありました。新しい本コーナーには「徳川家康」「日本のすがた」「読売年鑑」「知ろうAIというプログラム」といったまじめな本が。図書室に続く階段のコーナーには、同志社大学の創立者、新島襄先生が鎖国中にひそかに乗り込んだ船の模型が展示されていました。生徒たちに挑戦する勇気を与えてくれるオブジェです。

「密やで!」、フレンドリーすぎる部員たち

開放感あふれる吹き抜けのスペース。すぐ横には教員室があって質問できます
開放感あふれる吹き抜けのスペース。すぐ横には教員室があって質問できます

 校舎内を歩いていたら、どこからともなくマンドリンやギターの音色が聞こえてきました。先輩が手拍子して、部員が音を合わせて練習し、適度な緊張感が漂っています。デジャヴュを感じたのは、私が中高マンドリンギター部だったからでしょうか……。かつての思い出と比べると、同志社女子のマンドリン倶楽部はかなりレベルが高い気がします。宗竹庵という和室では箏曲部がお琴を練習して(みやび)な雰囲気でした。

 今回、見学させていただいたコミッククラブは、音楽関係の緊張感とは真逆の自然体でリラックスした空気。東京からの見学者も自然に受け入れてくれました。部長の生徒さんに話を聞くと、コミッククラブは年に2回同人誌を出していて、提出さえ守ってくれれば出席は自由とのこと。そのため幽霊部員になる人も多いそうですが、「気が向いたら来てくれたら良いです」と寛大な部長さん。上下関係もそんなに厳しくないというか、タメ口でフレンドリーに会話しているような……。

最初は静かに絵を描いていたコミッククラブの部員さんたち。次第に密な感じに……
最初は静かに絵を描いていたコミッククラブの部員さんたち。次第に密な感じに……

 「うちの部はユルいですが、体育会系と音楽のクラブは先輩後輩の関係が厳しいみたいですよ」と部長さん。次第に部員の皆さんはくっついたりじゃれ合ったり、女子校っぽいスキンシップがうずまいていました。

 「密やで!」と顧問の先生が時々声をかけます。

 「コロナの前からですが、気づいたらひっついてる。すぐベタベタするんです。前は共学で働いていたんですが、共学の女子は全然くっつかなくてギャップに驚きました。膝に3人くらい積み重なってる時もありますよ」

 「この学校は密度が高いですね。抱きつく、膝に乗る、膝に乗せる、おんぶする、手を(つな)ぐ、それから踊る……」

 「椅子を半分わけて座ったり。お尻が痛くなります」と副部長さん。

 見ていると後ろからバックハグしたり、髪を触ったり、追いかけっこしたりと無邪気にスキンシップしています。女子校の生徒にソーシャルディスタンスはムリかもしれません。そして急に握手した2人がいたので何かと思ったら

「解釈が一致したら握手します」とのこと。好きなものが一致した時などに握手するそうです。一時的なスキンシップの波がおさまると、今度は皆まじめに白い紙に向かって絵を描き出したり、バイオリズムが一致しているようです。そんな空間にお邪魔して一体感に浸っていると女子校時代にタイムスリップしそうです。

恋愛事情が絡まない女子だけの環境

 コミッククラブの部長さんに、スクールライフなどもちょっと聞くことができました。

 京都は女子校がどんどん少なくなってしまっていますが、あえて女子校を選んだ理由はというと……

「恋愛事情が絡まない女子だけの環境が良いと思ったんです。小学校の時はカップルがポンポンできてポンポン別れてた。その幼い恋愛の感じが好きじゃなかったんですよね。あ、私は特に彼氏はいなかったです」

 今どきの小学生は早熟です。私の頃は交際なんて聞かなかったです(せいぜい、好きな子のたて笛をなめるプチ変態な人が時々いるくらい)。部長さんは、まじめな志望理由は「図書館がすごい広くて憧れていました」とのこと。

 そして、晴れて入学した同志社女子は平和で居心地が良いそうです。いじめ的なものも「見たことないです」とのこと。

 「嫌いな人とは関わらなければ良いので。ヤバい(やつ)は一定数いるけど関与しないようにしてる」

高2にもなると精神的に大人です。

コミッククラブの理系の部員さんによる、放物線とルートのキャラ。上から「放物線くん」「放物線ちゃん」「ルートちゃん」「ルートくん」だそうです
コミッククラブの理系の部員さんによる、放物線とルートのキャラ。上から「放物線くん」「放物線ちゃん」「ルートちゃん」「ルートくん」だそうです

 でも、この部活の空間では、皆さん仲良くて、人間関係も円満そうです。黒板には、創造力あふれるキャラのイラストが描かれていました。翼の先が指になっている鳥、にんじんと合体した人間、そして放物線やルートにかわいい顔を描いた「放物線ちゃん」「ルートくん」といったキャラまで。自然に囲まれた素晴らしい環境では発想力も豊かになるのでしょう。

 「しょせん放物線やねん!」と突っ込みを入れる女子。ここは関西だと気づかされました。

 次第にカオスになり、「推しに21万使った」「ミス・クレイジーだね」「おまえの趣味指向やばいねん」「心の中で動物を飼ってる」といった会話の断片が聞こえてきます。そのテンポの速さになかなかついていけません。

 「まだ今日はおとなしい方ですよ」と、先生。

 「この部は、良い意味でも悪い意味でも深遠な人が集まっています」という部長さんの言葉に、同志社女子の底知れぬポテンシャルを感じました。

 女子校の生徒たちは、適度なふれあいによって、お互いが敵ではなく味方なのだと体で覚えるのかもしれません。そんな環境で身に付けた、同性への理解力や好意は、社会に出てから大きな武器になることでしょう。

プロフィル
辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
 漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

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1461974 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/09/08 11:09:00 2020/09/08 11:09:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200907-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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