海外進学者増えた開成/最新教育に積極的な聖光学院…広野雅明<20>

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 今回は男子の最難関校から2校ご紹介したいと思います。まずは東京の開成中学校、1982年から連続して東京大学合格者数が1位であることから、「ガリ勉学校」のように思われがちですが、そのような側面は同校の一面に過ぎません。次に、神奈川県内で2013年から首位の聖光学院。もちろん勉学にも熱心ですが、それだけの学校ではありません。

 まずはここ数年の志願状況を見てみましょう。開成、聖光学院とも今年は志願者が増加し、かなり難易度の高い入試となりました。

クリックで拡大
クリックで拡大

 6月のサピックスオープンで開成は減少、聖光学院は第1回は微増、第2回は微減でした。まだ次年度の難易度を予想するのは難しい時期ですが、模試の志願状況を見る限り、開成はやや倍率が下がる可能性があります。

校章は「ペンは剣より強し」開成中学校

 開成中学校の前身は1871年に佐野(かなえ)先生によって創立された「共立(きょうりゅう)学校」です。1878年に初代校長に就任したのが、のちに大蔵大臣や総理大臣を務めた高橋是清です。1895年に校名を開成に改め、1924年に東京・神田淡路町から現在の西日暮里の地に移転し、戦後は新制の開成高等学校・中学校として今日に至ります。戦前から大学予備門や第一高等学校への進学者が多い学校として知られ、戦後も東京大学への進学者の多い学校として全国に名前の知られる名門校です。

 開成の特徴は中学で300人、高校で100人を募集していることです。近年、高校での募集を停止して完全中高一貫校化する学校が多いなか、珍しく高校で比較的大勢の人数を入学させています。中高一貫のメリットよりも難関の高校受験を乗り越えて入学した生徒を高2から中学入学生に合流させることによる刺激を重視しているようです。特に高校1年の実力テストでは高校入学生が人数比以上に頑張り、中学入学生を強く刺激するようです。また高校卒業生も1クラスが50人で8クラス約400人と、他の進学校より一回り多いことも特徴の一つです。この人数は多彩な部活動や各種の学校行事、多様な趣味を持つ仲間を見つけることのバックボーンになりますので、少人数制の学校とはまた違った魅力があります。

 行事の面では、約100年続く筑波大学附属中学校とのボートレースや、中高が縦割りで8色に分かれて肉弾相打つ運動会、生徒が自主的に計画する学年旅行、多くの方が来場する文化祭などが開成の魅力として語られます。これらの行事は大勢の生徒が約1年かけて計画するものも多く、リーダーシップ、フォロワーシップ、組織運営について学びます。積極的な生徒、消極的な生徒、反抗的な生徒などをいかにまとめるか。困難を通して、生徒は成長します。

 今年、開成の進路で注目する点は海外大学に「進学」した生徒が10人になったことです。海外の大学は1人が多数の大学に「合格」することが多いので、「合格」者の数ではなかなか実態が見えないことがあります。ハーバード大学で教鞭(きょうべん)を執った前校長の柳沢幸雄先生の影響もあるかと思いますが、東大一辺倒であった開成に小さな変化があったように思います。新校長の野水勉先生も名古屋大学で留学生交流プログラムの運営や国際交流を担当されていましたので、今後も海外を目指される生徒が増えると思われます。特に海外大学進学には奨学金などの資金の問題があり、入試の形態も日本とは大きく異なりますので、この進学者数の増加に伴うノウハウの蓄積は同校の大きな財産になると思われます。

 開成は上記の学校行事が目立つ反面、授業はなかなか外部に伝わらず、塾・予備校の力で大学に合格しているという方も中にはいますが、時代の変化に伴う改革も実は早い学校です。平成元年(1989年)からの約10年間で、中学校を6クラスから7クラスに増やし、クラス人数を減らす、国語の入試問題を記述主体に変更、算数も試験時間を50分から60分に増加して従来よりも思考力・記述力を重視した出題に変更、入学試験の面接を廃止し、単日入試に移行するなどしています。最近では英語の4技能対応のため、民間検定試験を校内で実施しています。また教師陣も全般的に若返りました。海外留学経験や大学院卒の資格などを持つ実力のある教師がそろい、特に最近は女性教員も増えているようです。

 今年度は新型コロナウイルスにより各学校が大きな影響を受けました。1人1台のタブレットやパソコンなどを頒布(はんぷ)し、従前からICT教育に力を入れていた学校もいくつかありましたが、逆に対面授業を重視し、教師と生徒、生徒同士の刺激こそがお互いを成長させるとの考えでICT教育を軽視していた学校もありました。

 今年は、このような状況下で各学校の教師陣の実力が問われました。前校長の柳沢先生の退任の直前でしたが、「4月上旬から新年度の開成の教育を始める」との言葉でICT(情報通信技術)などが得意な教員でプロジェクトチームを作り、学校や各生徒の家庭の機材、環境で何ができるかを検討しました。その中で決めた内容を各学年や各教科でさらに検討し、4月からリモート授業を始めたようです。全教員が一律に同じスタイルで実施するのではなく、各担当教科の特性や各自の持ち味を生かした「郵送」「課題配信」「オンデマンド」「オンタイム」の各種の授業が展開されたようです。各先生の持ち味を生かした授業と対応の早さに感激した生徒も多かったようです。その反面、各先生が全力で課題を出すので例年以上にハードだったという声も聞きます。このような緊急事態にこそ各学校の実力が問われるように思います。

 開成は現在、新校舎を建設中です。すべての工事が終了するとまさに今の時代、そして今後の時代に対応できる環境が整備されます。その中でも学校行事を例年通り運営できることを優先事項にしていることも学校行事を重視する同校らしい面かと思います。

 開成の入試は算国が85点満点、理社が70点満点と変則的なことも特徴です。比較的理社の配点が高いことと、年によって算国の難易度にかなりの差があることも特徴です。同校はWEBサイトで過去の教科ごとの合格者・受験生全体の平均点を公表していますので、年度ごとにどの教科で差が大きくついたかがよく分かります。入試問題も比較的基礎を重視する年度とかなり思考力を要する問題が多い年度とまちまちです。基礎から応用力・思考力まで幅広く多くの問題を解き、自分の頭で考えられるようになることが大切です。教わることにより基礎を定着させることは無論大事ですが、その基礎を基に自力で適切な問題を解いていくことが重要です。

 最難関の学校の一つでハードルが高く感じるお子さまも多いかと思いますが、理社の配点が高いので、努力の成果が点数に結びつきやすい学校でもあります。どれだけ頭を悩まし、どれだけ考えたか、そして自分の言葉で書くことができたか? そのことが本校受験の合否を分かちます。

カトリック的世界観を重んじるミッションスクール 聖光学院

 2月1日に開成を受験した児童が2日に併願するケースが多いのが聖光学院です。また2日に聖光学院を受験する児童が1日に開成を併願するケースもかなりあります。どちらも男子校で、似ている部分、共通する部分もありますが、対照的な面もあります。私学は一校一校に特長がありますので、あらゆるお子さまに合う学校はほとんどありません。お子さまの性格や将来の進路もよく考えて受験校や進学先を選んでいただきたいと思います。

 聖光学院は1958年に中学校、1961年に高等学校を創立した、私学では比較的新しい学校です。同校のWEBサイトには「カトリック的世界観にのっとり、人類普遍の価値を尊重する人格の形成、あわせて、高尚、かつ、有能なる社会の成員を育成する」と記されています。カトリックのミッションスクールですので、それほど宗教色が濃い学校ではありませんが、キリストの教えを大切にしており、年間行事の中では各種の宗教行事が重視されています。

 また教育方針として5項目が掲げられていますが、その中で「4.聖光学院への入学志願者の実情からみて、在校生は、さらに高度の学問の府に進もうと志している。したがって、本学院は、在校生のすべてに対し、その目的を達成するための積極的な指導を行なう責務があると考える」「5.社会は不断に進化発展するものであるから、聖光学院は、その基本的教育原理を堅持する一方、社会に適応して行くよう努めるものである」。この2項目が今の聖光学院の様子を表しているように思います。

 いわゆる名門校では、よく言えば自主性を貴ぶ、悪く言えばすべて生徒任せで教師はあまり口出しをしないという学校が多くありますが、聖光学院は非常に面倒見のよい家族的な学校です。校長先生を筆頭に各先生方はよく生徒や家庭状況を把握されており、大学受験への支援も昔からしっかりしていました。男子校は一般的に浪人率が高く、年度によっては半数程度の生徒が浪人する学校もありますが、比較的に現役合格が多いのも同校の特徴の一つです。「塾いらず・予備校いらず」の学校という定評が、古くからの同校のイメージです。

 聖光学院では2014年に新校舎が完成し、教育環境が大幅に改善されました。また2018年にはスーパーサイエンスハイスクールに指定され、さらに教育に深みが出ました。最新教育の導入にも積極的で1人1台のパソコンを持たせ、ICT教育も早くから導入しています。また最近では多くの学校で採用されているオンライン英会話も首都圏の私学では最も早い時期に採用し、少人数制の分割授業などの導入もかなり早かったです。校内での「English Camp」「Future Global Leaders Program」、フィリピン・セブ島での語学研修など時代に合わせた行事も目白押しです。

 そのため今回の新型コロナウイルスの影響が最も少ない学校の一つで、生徒は安心して学びを継続的できたようです。ただ、その中でも生徒思いの同校のエピソードは多々あります。課題配信はネット経由でできるので家庭でプリントしていただくことも可能ですが、家庭のプリンターはインクジェットでA4対応が多いので、生徒が書く時になかなか書きづらいのではないかと考え、毎週のように課題を郵送して、より勉強しやすい環境を整えたそうです。

 また「聖光塾」も同校の特色の一つです。同校のWEBサイトに講座の一覧が掲載されています。内容は大学レベルの授業から生徒の興味を引きそうな体験まで幅広く用意されていて、同校の教師のみならず外部の講師も招いて、生徒の知的な好奇心を育てているように思います。名門校では主要教科という言い方はほとんどせず、どの科目も大事にします。特に生徒の将来を考えて芸術教科を重視する学校が多いですが、同校はさらに中2のカリキュラムに「選択芸術講座」を設けています。毎週土曜日に各界の専門家を講師に招き、生徒が自分の興味・関心に基づいて選択した講座で、芸術活動に取り組ませているようです。このような授業は本人の一生の財産になるように思います。

 聖光学院は1月に帰国生入試、2月2日に第1回、2月4日に第2回の入試を実施します。2月の入試では算国が150点、理社が100点の配点です。入試問題はよく練られたオーソドックスな問題から応用力を見る問題まで幅広く出題され、受験生の実力が如実に表れます。1月の帰国生入試は、帰国生対象の入試では最難関の一つでかなりレベルの高い児童が受験します。海外経験豊かな児童、そして、中には英語力が非常に高い児童もおりますので、この入学生が一般入試での入学生に刺激を与えます。

 中高の6年間はお子さまの成長において極めて重要な時期です。学校の授業などを通して、一生付き合える仲間と出会い、お互いに刺激し合いながら成長する時期です。またこの時期に学んだことはその時点では価値が分からずとも将来その子の財産になることもあると思われます。今回の新型コロナウイルス禍でどの学校も大きな影響を受けましたが、いわゆる名門校の教師陣の実力をしばしば感じました。ICT教育が遅れていた学校でも悪条件に負けず、各教科で工夫した新しい授業が生まれ、進んでいた学校ではより生徒が学びやすいさらに進んだ授業が展開されました。情報発信にも学校でかなりの差がありますので、今年度は志望校選択にお悩みのご家庭も多いかと思いますが、お通いの塾の先生などとよくご相談のうえ、個々のお子さまにとって最善の選択をされることを願っております。まだ時間があります。お子様は火が付けば一気に伸びます。最後まで頑張る受験生の皆さまを応援させて頂きます。

プロフィル
広野 雅明( ひろの・まさあき
 サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。

無断転載・複製を禁じます
1480812 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/09/17 05:21:00 2020/09/17 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200911-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
500円400円
参考画像
ランチでご来店のお客様にジェラートをサービス
参考画像
アクティビティご利用でソフトドリンク1本サービス

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ