関西私学で本格化する「探究的な学び」…森永直樹<7>

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 今、教育の現場では「探究的な学び」が注目されています。なぜかというと、2022年度から新しく導入される高等学校学習指導要領の中で、「探究」という名が付く科目が一気に新設され、最低2単位は誰もが履修することになる「総合的な学習」が新たに「総合的な探究」と名前を変え、より力を入れていくことになるからです。

 そもそも「探究」とは何なのでしょうか。文部科学省の定義では、「問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動のこと」となっています。つまり、問題解決型の学習ということです。これまでの一般的な科目が、ともすると知識・技能を習得させることを中心にした授業になっていたのに対し、自ら課題を発見し、その課題を解決するためのプロセスを体験しながらスキルを習得していくというような実社会に通用するような資質・能力を育てるのが「探究」だということです。

 関西の私学でも多くの学校が「探究的な学び」に力を入れています。それはグローバル化し、AI化していく社会の中で、我々に求められる資質・能力は、主体的に問題発見・解決し、協働しながら新しいものを創造していく力であり、それを育てるのが「探究的な学び」だと考えているからです。ここでは関西の私学の取り組みを紹介します。

10年前から続く帝塚山学院の「創究講座」

 近年の中学入試において、「女子校で最も多い志願者数」で注目されているのが帝塚山学院(大阪市住吉区)です。中学入試では「関学コース」と「ヴェルジェコース」の2コースからの募集となっています。大学付属校人気もあって「関学コース」は以前からも注目されていましたが、国立大学医学部や早慶(推薦入試)などへの合格実績の躍進に加え、芸術分野でも宝塚音楽学校に2人合格するなど、「ヴェルジェコース」の個性を伸ばす教育が高く評価されています。

 帝塚山学院の教育の柱となっているのが、6年にわたる本格的探究学習です。「新たな時代を創り、社会に必要とされる女性として、つよく生き抜く力を養う」をスローガンにしたオリジナルの講座で、10年前から開講されています。どこよりも早く「探究的な学び」を重視し、取り組み続けてきたことが、ここでの成果につながっています。

 中学3年間で学ぶ「創究基礎」では、「見つける力」「調べる力」「まとめる力」「発表する力」の養成を目指し、14のスキルを身に付けます。中1では、「声を出す」「聞く力をつける」など、中2では、「私の新聞」の作成、「プレゼンをする」など、中3では、簡単な「ディベート」までと、段階的に新しいスタイルの学習で成果が上げられるように工夫されています。

 高校から始まる本格的な「創究講座」では、「経済・経営・商学」「医歯薬・看護・医療系」「教育学・心理学・保育系」などの九つの学問体系に分かれており、大学や企業から講師を招いて、生徒たち自身が学年ごとに興味のある分野を選択して学びを深めています。「医歯薬・看護・医療系」を選択した生徒は自分の興味のある「再生医療の可能性」について、「経済・経営・商学」を選択した生徒は自らの親戚が経営する「旅館の再生方法」というように、全員が自ら選択したテーマについて、自ら調べ、議論し、最終的には「卒業レポート」としてまとめたものを発表して卒業していきます。

 中学で身に付けたスキルを生かし、高校で自身が興味を持った分野で学びを深める6年間の取り組みは、大学の学部選択やその先にもつながっていて、キャリア教育の一端も担っています。

 さらに注目されているのが、昨年完成した図書館一体型のラーニングコモンズです。

 「探究的な学び」の充実をはかるための施設で「AQRiO(アクリオ)」と呼ばれています。具体的には、Research Field(調査・分析の場)、Active Learning Studio(対話・探究の場)、Creative Square(発表・表現の場)、Global Lounge(英語実践の場)と四つのエリアで生徒の学びを刺激しています。創造的な空間でさらに生徒が意欲的に取り組むことで、探究的な学びの質がさらに向上していくでしょう。

 探究的な学びを通じて、「社会が複雑化、多様化していく中で、自分軸をしっかり持って、自分の意見を堂々と主張しながら、一方で寛容な心をもって、しなやかに生きていくことのできる女性に育てていきたい」と瀧山校長。

 進化し続ける帝塚山学院への期待は膨らむばかりです。

「探究」を名称に入れた新コース制やプログラム

 帝塚山学院だけでなく、学校独自の講座(プログラム)で「探究的な学び」に取り組む学校は増えています。オリジナルなだけにこだわりがあって、内容も充実してきています。

 雲雀丘学園(兵庫県宝塚市・共学校)は従来の教育の特徴を「探究」を中心に集約し、「Hibari探究プロジェクト」として学校教育の柱としています。中学入試では複数あったコースも一本化され「一貫探究コース」という名称となり、中3・高1時に「探究的な学び」のウェートが置かれています。

 淳心学院(兵庫県姫路市・男子校)も2018年から「探究的な学び」に力を入れ、中3~高1で週2時間の「探究」の授業を組み込んでいます。そこでは独自のプログラム「アカデミック探究」で、各分野の研究者の講演を聴き、関心のあるテーマについて仮説を立案し、討論、検証を経て、論文を作成しています。

常翔学園では米ニューヨーク・マンハッタンでフィールドワークを行っている(写真はイメージです)
常翔学園では米ニューヨーク・マンハッタンでフィールドワークを行っている(写真はイメージです)

 常翔学園(大阪市旭区・共学校)の取り組みも魅力的です。学園内大学(大阪工大、摂南大、広島国際大)との連携や、サイエンスプログラム、普段の生活から課題を見つけ、研究する「課題発見解決プロジェクト」など、自ら考え、仲間と連携して研究し、アウトプットするプログラムが用意されています。さらに独自の「グローバルチャレンジプログラム in NY」ではニューヨークのマンハッタンでフィールドワークを行い、グローバルな視点を培っています。

 また、学校のコース名称に「探究」を入れる学校が増えています。2021年入試から、滝川第二(神戸市・共学校)が「プログレッシブ数理探究コース」、神戸山手女子(神戸市)が「未来探究コース」という新コースを設けます。これから「探究的な学び」に重点が置かれるということでしょう。

 各校がどのように「探究」に取り組んでいるのかという見方をしてみると、これまで発見できなかった学校の魅力に出会えるかもしれません。またその時には、「生徒が主体的に取り組んでいるか」という点と、「大学の学部選択など進路決定につながっているか」という点に注目されることをおすすめします。

プロフィル
森永 直樹( もりなが・なおき
 株式会社日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを歴任。現在は教室と広報セクションを統括しながら、学校・教育情報を発信している。私学教育の魅力を伝える講演など中学受験イベントに多数出演。

無断転載・複製を禁じます
1523509 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/10/06 05:02:00 2020/10/07 11:06:57 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201005-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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