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「視聴話写」バランスのいい訓練で国語力は伸びる…水島醉 <9>

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国語力高い子は「目→口」ルートの処理能力が高い

 私が30年にわたって子供たちをずっと観察し、国語力について調べてきたところによりますと、国語のみならずどの科目も均等に学力の高い子供は、例外なく「ルートA:耳(音声)→口(音声)」、「ルートB:耳(音声)→手(文字)」、「ルートC:目(文字)→口(音声)」、「ルートD:目(文字)→手(文字)」の四つの部位・ルートの処理能力がいずれも高いことが分かりました。

 その中でも特に国語力の高い子供に特徴的なのは、「ルートC」、つまり目で文字を読んで理解して、それを口で説明できるという力が秀でているという点です。

 また、よく人の話を聞いていない子供がいます。「さっき言ったでしょ?」「そんなの聞いてない!」。親子の間でもこういうやりとりが毎日のように繰り返されている子供です。こういう子供は授業に出席はしていても、内容は良く聞けていない、また丁寧に説明しても良く理解できていないという傾向があります。こういう子供は、耳から聞いたコトバを脳で「意味化」することが不得意で、「ルートA:耳→口」「ルートB:耳→手」のいずれか(あるいは両方)が鍛えられていないのです。言葉を理解するには、入ってきた記号の情報を、脳で「意味化」するという作業が必ず必要です。

 「耳からのルート」が弱い子供は、学力全般に弱い傾向があります。授業であれ人の説明であれ、それをしっかり意味化し理解することができないからです。「耳からのルート」は鍛えられているが、「目からのルート」が弱い子供は、国語力が低い傾向にあります。

国語力の高くない子は「長文切抜問題」では伸びない

 従来の国語の授業では、「ルートA・B・C・D」を厳密に区別して、適切な指導をすることはありません。「音読」をさせたり、「読書」を勧めたり、「作文」をさせたり。指導者の経験則でこれは有効だと思われることをしているのが現状です。それは「経験」ですから、例えば小学校のベテランの国語の先生でしたら、子供子供に合わせた有効な指導を「経験」でなさってくださるでしょう。

 しかし進学塾では、「音読」などとんでもない、「読書」などもってのほかです。進学塾の授業では「長文切抜問題」をひたすら解かせ、自宅でも「長文切抜問題」をひたすら解かせる。くわえて言葉や漢字の暗記ですか? 場合によっては作文もさせますか? それが多くの進学塾の国語指導です。

 「長文切抜問題」は、そのレベルの文章がスラスラ読めて理解できる子供には、それなりに有効な部分があります(私も条件付きで「長文切抜問題」をさせることはあります)。ですから進学塾で「長文切抜問題」をひたすら解いて、それで得点(偏差値)の上がっている子供もいないことはないのですが、それはもともと潜在的に国語力の高かった子供、読書力の身に付いていた子供です。本質的な国語力は高いのだけれど高得点を取る技術を持っていなかった、というタイプの子供に限って「長文切抜問題」でその技術を得て国語の点数が上がった、ということにすぎません。

 ですから国語力のあまり高くない子供が進学塾の「長文切抜問題」授業で国語が伸びるということは、原理的にあり得ないのです。進学塾で「算数は伸びたが、国語は伸びなかった」という子供が非常に多いのは、その証拠の一つです。また「国語力を上げるのは難しい」と一般に言われているのも、それが理由です。

国語で一番大切なのは「自分で読み、自分で考える」こと

 少々余談になりますが、良い国語の指導、悪い国語の指導の見分け方をお伝えしておきましょう。

 国語の良い基礎力指導は、「ルートA・B・C・D」を均等に鍛える指導です。4ルートを意識はしていなくても、国語が本質的に分かっていらっしゃるベテランの先生なら、これらを全て鍛える指導をなさいます。一般に、公立小中学校の授業ではこれらを比較的まんべんなく教える指導要領になっています。

 そして文章の内容を読み取る学習については、生徒に考えを述べさせ、出たさまざまな意見を認め、それらを精査する授業が良い授業です。極論ですが、私は国語の解答に不正解はないと思っています。生徒が真剣に考えて出した考えや意見は、全て尊重する必要があると考えているからです。国語で一番大切なのは「自分で読み、自分で考える」ことですから、出された個人の考えの、どこが良い点なのかを見つけそれを伸ばしてやることが、国語の指導で最も重要なことなのです。

 悪い国語の指導は、何度もお話ししています通り「長文切抜問題」をさせるのみの指導です。これは国語力を上げないだけでなく、むしろ下げる可能性が高いのです。問題文を読まずに解き始める子供や「これの答えはどのあたりに書いてあるの?」と聞く子供、「5字で……」という設問にひたすら5字の言葉を文中から探している子供などは、この「長文切抜問題」で国語力が下がった可能性の高い子供です。

 また、自分が教えた通りの答えを書かないと正解にしない、というタイプの先生の授業も、良くないでしょう。中学上級から高校の真面目な先生に多いタイプなのですが、テストでは、自分が授業で説明し、板書した通りの解答を書かない限り正解にしないのです。こういう授業では、内容の理解ではなく、きちんと「暗記」さえすれば高得点が取れますから、授業中、生徒は「考える」ことよりも「先生の言葉を一字一句聞き逃さない・書き落とさない」ことに集中するようになります。そしてそういう生徒がその先生の作成したテストでは高得点を取ることになります。これは国語力でもなんでもありません。

 閑話休題。スポーツなら「持久力の訓練」「瞬発力の訓練」「××の技術の練習」「○○の技術の練習」など、それぞれ要素別また個人の苦手なところを鍛えるのは当たり前のことでしょう。勉強も同じ、要素別に鍛える必要があります。国語ならまずは四つの「ルートA・B・C・D」をそれぞれ鍛える必要があります。

 「ルートA:耳→口」は聞いた内容をそのまま口で繰り返す復唱です。これを「聴話」と言います。「ルートB:耳→手」は聞いた内容を文字に書く(「聴写」)、「ルートC:目→口」は文字(文章)を声に出して読む音読(「視話」)、そして「ルートD:目→手」は読んだ内容を書き写す(「視写」)。

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 特に「ルートD:目→手」は、目から入った文字記号をいったん音声化し、そしてそれを文字にしますから、四つのルートの中で最も複雑な経路をたどり国語の基礎訓練としては非常に効果の高いものです。(右図参照)

 これらの4ルートの訓練を、私は「視聴話写」の訓練と呼び、これを国語指導に積極的に取り入れ、たいへん良い結果を得ています。

プロフィル
水島 醉( みずしま・よう
 1990年から「エム・アクセス」講師。「問題を解かせる→解説」という授業は国語力の向上につながらないと考え、「読書・思考・記述」を中心とした国語指導を展開している。「読む・聞く⇔書く・話す」の4ルートを鍛えることによって国語の地力を向上させる「視聴話写」という教材を開発。子供の心の成長と学力との関係を重視し、「マインドフルネス学習法」を提唱、授業に応用している。著書に「国語力のある子どもに育てる3つのルールと3つの方法」(ディスカヴァー携書)、「進学塾不要論」(同)など。

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1652078 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/12/04 16:00:00 2020/12/04 16:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201113-OYT8I50059-T.jpg?type=thumbnail

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