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「考える喜び」を知ることで算数が大好きになる…粟根秀史<6>

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「処理能力」と「思考力」の両方を向上させることが大切

 算数の入試問題を解くのに必要な力は、大まかに分けて、計算問題やパターン問題を正確に速く解くことのできる「処理能力」と、問題文の条件を整理して試行錯誤をしながら解決していくことのできる「思考力」の二つとされています。

 大手塾の保護者会などでは「計算力やパターン問題の解法知識という基礎学力がない状態では、思考力や応用力を高めることはできません。まずは、とにかく基礎学力を付けるために反復練習をしてください」とアドバイスされます。そして、その到達度を測るシステムの一つとして「復習テスト」があります。ただ、ほとんどの大手塾において、この「復習テスト」は大量の問題を短時間で解くように設定されているため、ミスを連発してしまう生徒が少なくありません。子供たちをミスしやすい状況に追い込んでいるにもかかわらず、周りの大人たちはそれを責めるのです。

 その揚げ句、多くの子供たちが塾の先生や保護者から「応用問題を解くレベルに達していない。基本問題を完璧に解けるようにしよう」と指示され、ひたすら「点取り競争」のための反復練習を行うことを強いられています。何も反復練習が悪いと言っているわけではありません。ただ、算数の学習がそれのみに終始しては苦行のようになってしまいます。これでは算数そのものを嫌いになってしまうかもしれません。

 「処理能力が充分に身に付いてから、思考力を高めるための対策を取る」という計画では、いつまでたっても算数の本当の楽しさを知ることはできないでしょう。

 処理能力と思考力はいわば車の両輪。どちらが欠けてもバランスの良い学力とは言えず、並行して向上させてこそ、算数の面白さを味わうことができ、相乗した学習効果を得ることができるのです。

「考え抜く経験」それ自体に価値がある

 初見の思考問題に弱い子の多くは「どうせ解けないだろう」と考える前から腰が引けています。その問題のゴテゴテとした見かけに威圧されてしまっているようです。一方でゴテゴテした問題を面白がる子もいます。こういう問題こそ考えがいがあるとばかりに目を輝かせて解いています。この差は、持って生まれた資質の差ではなく、経験量の差です。

 思考力を付けるには、自主的に「考える時間」を作る必要があります。ただし、難しそうな問題に対して尻込みしてしまうお子さんの場合、「正解」=「成功」、「不正解」=「失敗」と捉え、失敗した時は叱られるのではないか、それならば最初からやらない方がよいと思っている節があります。まずは、考えてみるだけでよいということをしっかりと伝えてあげてください。そして、考えようとする姿勢そのものを評価してあげることでお子さんの意識を変えていく必要があります。1週間に1題でもかまいません。授業中に扱わなかった応用問題、テキストに載っている思考系の問題……などからお子さんがこれなら解いてみたいと言う1題を選ぶとよいでしょう。

自分のペースで楽しく考えられる環境を

塾の教材の応用問題は考える意味のある良問がそろっている(写真はイメージです)
塾の教材の応用問題は考える意味のある良問がそろっている(写真はイメージです)

 塾の教材にある応用問題や思考問題は実際の入試問題の中から選ばれており、考えてみるだけで十分に意味のある良問がそろっています。正解できなかったからと言って絶対に責めないでください。重要なのは考え抜く経験をすることであって、正解したかどうかではありません。例えば、お子さんが20分考えて正解しなかったとしても、「こんな難しい問題を20分も考え続けることができるなんてすごいね!」と褒めてあげてください。また、なかなか解けないからといって、子供をせかしたり時間制限を設けたりすることも禁物です。

 逆に塾の宿題である「日々の計算練習やパターンの反復練習」などの処理能力のトレーニングでは、少し厳しめの時間制限を設けて行うのが有効です。決してだらだらとやる癖を付けさせてはいけません。タイムプレッシャーをかけた上で、どれだけ量をこなせるか、ミスを減らせるかを意識することで集中力を鍛えることにもなります。

 しかし、思考力は「じっくりと考える」時間の積み重ねによって養われる力であり、そのためには、「制限時間内に解かなければならない」「正解しなければならない」といったプレッシャーから解放された環境に置いてあげることが大前提です。

「思考力」は他人から授かるものではなく、自得するもの

 概して、保護者の方は、お子さんに多くの量をこなして、どんどん先に進むことを望みます。たった1題の問題に時間がかかり、なかなか解けない状態を見ると、「先生に質問してきたら?」「解説を読んで理解した方が早いよ」などと口を出したくなるかもしれません。しかし、「とことん考え抜く」ことこそが、この取り組みの目的であり、解けるようになったかどうかは重要ではないのです。

 解き方の手順を教え込まれていない問題にチャレンジしようとする姿勢、それ自体を褒めてあげてください。自力で粘り強く考えることこそが自分の思考力を高める最高の勉強法なんだと、子供が自覚することが大切です。自力で解こうとする経験を積んでいけば、目には見えなくとも考える力は必ず向上していきます。そして、それまでの期間に個人差はあるものの、誰もがいつか必ず難問を解くことができるようになるのです。この解けた瞬間の感動はゲームなどの比ではありません。充足感、達成感の質やレベルが全然違うのです。

ゆったりとやることが深い理解につながる

 このような取り組みを続けていくと、パターン問題に対しても理解の深度が全然違ってくるようになります。ただ手順を暗記するのではなく、納得感というものを重要視するようになります。学習全般において、子供自らがより深い理解、より広がりのある理解を求めるようになるのです。

 独自の教育論・人生論を展開して多くの人々の心をつかんだ数学者、森毅は、エッセーの中で数学の問題との関わり方について次のように語っています。

 「このごろは、テストでおどされることが多いので、わかること、解けることを急ぐ傾向にある。たしかに、テストなどでは、時間がかぎられているので、急ぐのも多少は仕方がない。しかしながら、時間を制限されたときに急いでできるためには、時間の制限されていないときに、時間を気にしないでやっておいたほうがよい。テストで急ぐためには、テスト以外では急がない方がよいのである。

 どんなやり方でも、わかって、問題が解けるようになる、という結果は同じかもしれない。しかし、ゆったりやると、そのわかり方にコクが出てくるというものだ。そして、その結果に達するまでの道筋を楽しむことで、力がつく」(ちくま文庫「まちがったっていいじゃないか」から)

 中学入試の思考問題は、各中学校の力量豊かな先生方が、受験生に算数の面白さや奥深さを感じてもらうための創意工夫に基づいて作成された傑作ぞろいです。一部の難関校受験者だけでなく、できるだけ多くの子供たちに、ゆったりと傑作を味わい、その「コク」を感じとる経験をしてほしいものです。その経験が頭の「キレ」を磨くことにつながるのです。

プロフィル
粟根 秀史( あわね・ひでし
 教育研究グループ「エデュケーションフロンティア」代表。森上教育研究所客員研究員。大学在学中から塾講師を始め、35年以上にわたり中学受験の算数を指導。首都圏の大手進学塾教室長、私立小学校教頭を経て、現在は算数教育の研究に専念する傍ら、教材開発やセミナー、講演を行っている。また、独自の指導法によって数多くの「算数大好き少年・少女」を育て、「算数オリンピック」金メダリストや灘中、開成中、桜蔭中の合格者などを輩出している。「中学入試 最高水準問題集 算数」「速ワザ算数シリーズ」(いずれも文英堂)など著作多数。

無断転載・複製を禁じます
1721692 0 マナビレンジャー 合格への道 2020/12/24 08:00:00 2020/12/24 08:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201222-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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