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「能動的に」「まっさらな気持ちで」読むことが秘訣…粟根秀史<8>

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「数学的な読解力」は大学入試にも通底する

 東京大学のホームページで、「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」が、教科別に記載されています。この中の数学の内容に、次のような部分があります。

 「『数学的に問題を捉える能力』は、単に定理・公式について多くの知識を持っていることや、それを用いて問題を解く技法に習熟していることとは違います。そこで求められている力は、目の前の問題から見かけ上の枝葉を取り払って数理としての本質を抽出する力、すなわち数学的な読解力です」

最近の算数入試では典型問題が少なくなっている(写真はイメージです)
最近の算数入試では典型問題が少なくなっている(写真はイメージです)

 最近の算数入試では、塾のテキストなどで見慣れた典型問題が減少し、その代わりに典型問題を題材とし、それらを「複雑な文章で」「ひねりの利いた形で」「別の分野の問題のようにカムフラージュした形で」の出題が増加しています。

 その理由の一つは、解法パターンを身に付けているかどうかを測る入試問題だけでは得点の差が付かないということにあります。しかしそれよりも、上記の「数学的な読解力」につながるポテンシャルを測りたいという中学校側の強い意図と見る方が、理由として自然ではないでしょうか。

 このような力は、構造が分かっている問題を反復練習するという受動的な取り組みでは決して身に付けることはできません。

 一読しただけでは分からない難解な問題を、「能動的に読み解く」という経験を積む必要があります。「能動的に読み解く」とは、前回お話しした「条件を整理する技術」と「出題者の意図を読む意識」の両方を持って、問題に取り組むことに他ならないのです。

雑に読む癖が付いてしまうと

 塾で出された宿題、塾で行われる復習テストにおいて、どれだけ多くの生徒たちが問題文を雑に読んでいることか……。それはもちろん、雑に読んだとしても正解できるからです。特に数値換えの問題文はその都度、丁寧に読む必要はありませんし、類題であったとしても「今週はこれとこれを習ったから、どうせ、これかこれを使うんでしょ」という意識で解いた方が早く終わらせることができます。

 しかしこれでは、その問題に限っての解法パターンは身に付いても、根本的な学力である「問題文を正確に読んで、その意味を理解する力」の向上は期待できません。

 自分が今までに学習した問題のうち、どのパターンに当てはまるのか、類似問題を検索しながら読み進めていく、そして、最後まで読んでいないのに「この問題はあのときやった問題と同じだろう」と早合点する……。

 このような読み方では、文章の細部を見落としてしまうことが多く、パターン問題中心の復習テストでは高得点がとれても、条件が複雑になったり、表現にひねりが加えられたりした入試問題には全く対応できなくなるのは明らかです。

問題文は「最後まで」「細部まで」読むこと

 大筋では、同じ問題に見えても、細部が少し違っただけで、やるべきことが全く変わってしまうという問題はいくらでもあります。

<例題1>
 ある機械に数字を入れると、1は5に、2は4に、3は1に、4は2に、5は3に変換します。はじめに5桁の整数12345を入れ、出てきた結果をまたこの機械に入れる操作を繰り返すと次のようになります。

 12345→54123→32541→……

 この操作を何回繰り返したら、もとの12345に初めて戻りますか。

 ルールに従って正確な手作業ができるかどうかを見る基本問題、かつ数学の「置換」という高度な考え方へと発展していく重要問題です。

<例題2>
 8桁の整数12345678に下のような操作を100回続けて行ってできる整数は「   」です。

 (操作)左から1、2、3、4、5、6、7、8番目の数字をそれぞれ左から2、4、6、8、1、3、5、7番目に移す。

 つまり、ABCDEFGHをEAFBGCHDにする。

(灘中学校入試問題)

 例題2を例題1と比べてみて下さい。例題1と例題2は、どちらも変換の操作を扱った問題ですが、表現の違いに気付いていただけたでしょうか。

 例題1は「数字そのもの」を置き換える作業を求めているのに対し、例題2は、「数字の場所」を置き換える作業を求めています。ですから、例題2の求めている作業は、先頭の1を2に置き換えることではなく、1を2番目の場所に移動させることなので、例題1とは全く異なる問題です。それにもかかわらず、例題1のような基本問題の数値替えを反復練習してきた子供ほど、数字そのものを置き換えるものだと早合点してしまうのです。例題2の問題文の最後に「つまり、ABCDEFGHをEAFBGCHDにする」と変換の規則の具体例が明記されているにもかかわらず……。

 似たような問題を解いた経験を生かすことは、とても大事です。ただし、それには「問題文を正しく解釈する」ということが必要不可欠です。そして、正しく解釈するには、丁寧に最後まで読まなければなりません。しかし、復習テストで高得点をとることに重きを置く塾の学習では、丁寧に問題文を最後まで読むという当たり前のことを、時間がかかる面倒なこととして雑に扱う習慣が付いてしまうのです。

読解の精度を高めるには、まっさらになること

 思い込みによる自分勝手な解釈をしないためには、どの問題に対しても「初めて見る問題」として取り組むことが肝要です。

 そして、「読み取る時」と「解釈する時」はきっちりと分けなければいけません。読み取る時は、読み取ることに専念して最後まで読み切る。条件を正確にメモにまとめる。その後で、初めて問題の構造について考えるようにします。

 先入観によって「元の情報をゆがめてしまう」のを防ぐためには、「まっさらな気持ち」で問題文を読むしかないのです。

プロフィル
粟根 秀史( あわね・ひでし
 教育研究グループ「エデュケーションフロンティア」代表。森上教育研究所客員研究員。大学在学中から塾講師を始め、35年以上にわたり中学受験の算数を指導。首都圏の大手進学塾教室長、私立小学校教頭を経て、現在は算数教育の研究に専念する傍ら、教材開発やセミナー、講演を行っている。また、独自の指導法によって数多くの「算数大好き少年・少女」を育て、「算数オリンピック」金メダリストや灘中、開成中、桜蔭中の合格者などを輩出している。「中学入試 最高水準問題集 算数」「速ワザ算数シリーズ」(いずれも文英堂)など著作多数。

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1946328 0 マナビレンジャー 合格への道 2021/03/30 05:01:00 2021/03/30 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210329-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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