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戦前は海軍へ、戦後は難関大へ…広野雅明<22>

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 昨年度はコロナ禍で学校見学もなかなかできませんでしたが、今年度は感染リスクを最小にした上で、学校を見学する機会も徐々に増えるかと思います。ただ、人数制限をする学校も多いため、例年より定員は少なめになります。気になる学校はこまめにWEBサイトをチェックし、早めに予約をするようにしてください。

「新しい人間力」「新しい学力」を目指す海城

 さて今回は、都内の男子校2校を紹介したいと思います。まずは海城中学校です。最寄り駅のJR山手線「新大久保駅」から徒歩5分ほどの位置にあります。周囲には早稲田大学や学習院女子大学のキャンパスもあり、比較的緑の多いエリアです。山手線内の学校としては比較的大きめの人工芝グラウンドもあり、環境は恵まれています。東京メトロ副都心線の開業後は同線「西早稲田駅」から通学する生徒もおり、埼玉県や神奈川県からもアクセスがよくなりました。

 同校は1891年、海軍少佐だった古賀喜三郎が私財を投じて創立した海軍予備校を源流とします。発足当初は海軍兵学校を志す生徒のための学校でしたが、徐々に高等学校を目指す普通の中学校に変化したようです。第2次世界大戦後は新制海城中高となり、現在に至ります。2011年に高校募集を停止し、完全中高一貫校となりました。

 開校以来、「国家・社会に有為な人材の育成」を建学の精神としています。グローバル化が進展する世界、多様な価値観を持つ日本の現代社会で必要とされる人材を現在も育成しています。そのためコミュニケーション能力とコラボレーション能力を兼ね備えた「新しい人間力」と、課題設定・解決能力からなる「新しい学力」をバランスよく兼ね備えた人材の育成を目指しています。

「プロジェクトアドベンチャー」に参加する海城の生徒たち
「プロジェクトアドベンチャー」に参加する海城の生徒たち

 「新しい人間力」の目指す共生、協働力を育むために、中1、中2では、未知の世界に挑戦する体験学習プログラム「プロジェクトアドベンチャー」を実施しています。中学校の各授業では、演劇の手法を用いて体験的に行われる教育プログラム「ドラマエデュケーション」も取り入れています。また、「新しい学力」を示す課題設定・解決能力の育成では、1992年から、中学校の社会科で探究型総合学習を導入しています。生徒たちは中3での社会科卒論発表会に向け、各自で課題を設定し、取材・調査を行い、論文を執筆しています。

 グローバル教育の面では、1学年30人の帰国生を受け入れています。多様な生活体験や学習体験を持つ生徒を各クラスに均等に割り振ることで共生教育が深まるだけでなく、英語力の高い帰国生の存在は一般生にとってかなりの刺激になるそうです。平常時は中3での米国研修、高校での英国研修、そしてカナダでの語学研修もあります。海外大学進学を目指す生徒には、個別カウンセリングやエッセー・ライティングなどの支援も実施しており、全日本高校模擬国連大会へ出場し、入賞する生徒も育っています。

 また、同校はICT教育でも最も進んだ学校の一つです。2015年から、普通教室にも電子黒板機能付きのプロジェクターとWi-Fiルーターを設置しています。高校生は全員がiPadを持って授業に活用しており、中学生にもMacBook Airが配布されています。そのため休校によって家庭学習を余儀なくされることになっても、対応できる準備は整っています。

 今夏には新しく理科館も完成予定で、物理・化学・生物・地学それぞれに専用実験室が設置されます。理科教育もますます盛んになると思われます。

 進学実績の良さも同校の魅力です。今春も東京大47人、京都大15人、早稲田大150人、慶応大112人など難関大学合格者を多数輩出しています。さらに東京大理科3類に3人合格など国公立大学の医学部へ48人、医学部医学科の合格者の総数は141人と医学部に進学する生徒が毎年多いのも特徴です。生徒一人一人の努力に加え、医学部受験生向けの特別講座を用意するなど、生徒の進路を学校全体で応援することも大きな成果の要因です。

 同校の先生は、海城の生徒について「人なつっこく穏やかで、のびのびとした個性豊かな人物が多い」と評します。「本校は、男子特有の良い意味でのオタク気質を存分に伸ばせる環境で、誰一人として埋没することなく、活躍できる居場所があり、6年間一緒に無我夢中になれる仲間ができる学校です」

 恵まれた学習環境で、熱意ある先生と生徒に囲まれ、先進的な教育を行っている海城は思春期の男子を心身ともに成長させる学校の一つだと思います。

国際学級や1科入試の早期導入で先進性を見せる攻玉社

攻玉社では勉強だけではなく人間性を育むことも重視する
攻玉社では勉強だけではなく人間性を育むことも重視する

 攻玉社中学校は東急目黒線「不動前駅」から徒歩数分に立地します。目黒線が都営三田線、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道と直通していますので、東京北部や埼玉県からのアクセスも良好です。海城中学校に比べると校地はやや小さめですが、敷地をうまく利用し、生徒たちに必要な施設は十分に備えています。

 同校は1863年に蘭学者の近藤真琴によって開かれた蘭学塾を淵源とします。1869年に築地の海軍操練所内に移転し、「攻玉塾」と名乗りました。1872年の学制発布で私塾から学校となり、1889年に海軍を志す生徒のための海軍予備科を設置しました。戦後は新制の攻玉社中高となり、現在に至ります。

 特徴的なのは1990年に国際学級を開設し、いち早く帰国生の受け入れを始めたことです。この国際学級は中学の3年間は独立したクラスで、高1から一般学級の生徒と一緒になります。国際学級は、非英語圏向けの算・国での受験か、英語が得意な児童向けの英語での受験が可能で、毎年多くの帰国生が入学します。国際学級では英語・数学・国語で分割授業が実施され、帰国生のフォローも非常に手厚いです。

 同校は入学試験で1科入試をいち早く取り入れました。まず算数1科目入試を導入し、その後、国語の1科目入試も導入しましたが、現在は国語は廃止されています。多様性を重視する同校では、何かとがった才能を持つ児童の入学を期待しています。今では多くの学校で実施されている1科入試ですが、同校の先進性を示す一つの証左かと思います。

 さて、校名は、中国の古典「詩経」の一節「他山の石以って玉を(みが)くべし」に由来します。他者から刺激を受けて、自分の長所を伸ばし、多感な中高6年間で自分の潜在能力をいかに開花させるか、ということです。学校は、入学時より学力を向上させ、自己実現を図れるよう生徒を指導することを心がけているそうです。

 校訓は、「誠意・礼譲・質実剛健」、そして海軍の標語である「スマートで、目先が利いて、几帳面(きちょうめん)、負けじ魂、これぞ船乗り」。やや古めかしく感じますが、まずは人間として何が大事なのか、そして、これからの社会を担う一人としてどのような人間を育てたいかが伝わってきます。同校ではそのため道徳教育も重視し、勉強だけではなく人間性を育むことも大切にしています。また、耐久歩行大会、中1の林間学校、中2の水辺の学校、秋の体育大会、スキー学校など体育系の行事も盛んで体力面で大きく成長させることも大事にしています。

 同校では中高一貫の6年間を2年ごとの三つのステージに分けています。中1・中2ではまずは生活習慣や基礎学力を身に付けさせることを重視していますが、数学や理科では先取り授業が実施されています。中3・高1では中だるみを防ぐために選抜学級を設け、ハイレベルな特別講習なども実施。大学進学を見据えたキャリアガイダンスの講演会なども行われます。例年は8月に2週間、ホームステイをかねて海外語学研修を行っており、希望者を募ってオーストラリアへ研修に向かっているそうです。高2からは30人8学級にクラスを細分化し、よりきめ細やかな指導を展開します。2010年から実施したこの制度で、東大など難関大学への合格者が非常に増加したようです。

 同校は今後、育てたい力として、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、質問力の3点を挙げています。なかでもプレゼンテーション能力の育成は、英語暗唱大会や自由研究発表会など、人前で発表する機会を増やして力を入れているようです。また、先行き不透明な時代の中で、想定外の問題が起きた際の対応能力や問題の本質を見抜く力が大切だと考え、それに合わせた指導も行っています。

 同校はクラブ活動も非常に盛んです。サッカー部やバドミントン部、テニス部はそれぞれ総勢100人を超える部員が在籍し、文化部ではガンダム研究部やレゴ部といった、同校ならではの部も存在しています。高校野球部には専用グラウンドがありますが、校地が手狭なため、サッカー部は朝練は校庭で行い、放課後は多摩川、天王洲などのグラウンドを借りて練習しているそうです。

 さて、お子様の進路選択にあたり、別学がいいか共学がいいか、進学校か大学付属校か、また、面倒見のいい学校か自由放任の学校がいいか、非常に悩ましいと思います。特に私学は一校一校に個性がありますので、男子校でも各校でかなり雰囲気が違います。もちろん学校選びに偏差値や家庭からの距離も重要な要素ではありますが、やはりお子様に合う・合わないはもっと重要なことです。志望校選びにはなるべく学校の素の姿を見る機会を増やし、難しい場合でも学校の近くで生徒の様子を見ることが非常に大切です。悩んだ時はぜひお通いの塾の先生にご相談ください。来春以後の受験で皆様が成功することを祈念しております。

プロフィル
広野 雅明( ひろの・まさあき
 サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。

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1994917 0 マナビレンジャー 合格への道 2021/04/20 05:02:00 2021/04/20 05:02:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210415-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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