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知識は「体系化」されてこそ真価を発揮する…粟根秀史<9>

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できるけど分かっていない?

 算数は考える科目であるとは言っても、パズルではありませんから、知識がなければ解き進めることはできません。知識として覚えておくべき公式や解法パターンというものがあります。

 進学塾では、この解法知識を習得するための反復練習の大切さについて、次のようにアドバイスされることがあります。

 「『分かる』ことと『できる』ことは違います。分かっただけではダメなんです。『できる』ようにならなければ……」

 熱心な保護者の方は、我が子を「できる」ようにするために大量の問題演習をさせます。そして、塾の復習テストの結果を確認して「できる」ようになったと安心するのです。ところが、子供の立場でみると「できる」ことだけにこだわり過ぎるあまり、「分かる」ことをおろそかにしているのです。つまり、問題を解くことは「できる」けど、問題の本質は「分かっていない」場合があるということです。

 「できる」ことと「分かる」ことの違いを、次の問題を例に考えてみます。

(問題)
 長さ140mで秒速30mの電車Aが、長さ100mで秒速14mの電車Bに追いついてから追いこすまでに何秒かかりますか。

(解答)
 140+100=240(m)、30-14=16(m/秒)
 240÷16=15(秒)          答え:15秒

 中学受験に向けて勉強している6年生のお子さんで、正しい学習姿勢が身に付いているなら、なぜこのような式で求められるのか説明できるはずです。もしも、お子さんの説明が、「電車の長さの和を電車の速さの差で割れば求まるから」という公式を言葉にしたような説明であれば、それは先ほどの「できるけど、分かっていない」ケースにあてはまるかも知れません。

 上の問題では、Aの先頭がBの最後尾に追いついたときの状況図を描くことで本質を説明することができます。

 「Aの最後尾とBの先頭は140+100=240(m)はなれており、このあと、Aの最後尾がBの先頭に追いついたとき、電車Aは電車Bを追いこしたことになるから」
 このような説明ができて、はじめて本質を理解していることが分かります。

肝要なのは自らが納得すること

 塾の授業で、その公式の成り立ちや解法のポイントを教えてもらったとしても、家庭学習で単に数字をあてはめて解くだけに終わっていては、本質を理解することはできません。

 教えてもらったことを、もう一度自分で考え直してみて、「納得する」ことが大切です。「納得する」ためには、「問題場面をイメージする→問題の構造を理解する→何が重要なポイントなのかを確認する」という過程が必要です。

 ところが、この過程を省略してしまっている子供は少なくありません。「宿題を早く終わらせたい」「復習テストで点数を取りたい」という理由から、分かることよりもできることに気が向くのです。「納得する」どころか、「なぜそうなるのか」という問題意識すら芽生えぬまま、ひたすら正解するためだけの訓練を続けます。

 算数の学習に対し、「解き方を覚えて数字をあてはめるもの」という考えが染みついてしまった生徒は、目先の復習テストで良い点が取れたとしても、後々大きく伸び悩むことになります。

 真の理解を必要としたり、応用力を試されたりする問題に直面したとき、全く歯が立たなくなってしまうのです。

知識同士のつながりを見ることで理解が深まる

 自ら納得する経験を積むことによって、理解力そのものが高まり、知識同士のつながりが見えるようになります。

 例えば、前出の問題のテーマである「二つの列車の追い越し(又は擦れ違い)」を中心として、その周辺テーマを関連付けて体系化すると、次のようになります。

 「図形の平行移動」の要点は、「幅のあるものの移動はどこか1点に着目して、点の移動として捉える」ということです。通過算の基本も同じ構造です(矢印A)。

 「1点に着目する」というコアの部分を浮き彫りにしておけば(矢印B)、「二つの列車の追い越し(又は擦れ違い)」の問題も結局は「直線上の2点の移動」の問題に言い換えることができるわけです(矢印C)。掘り下げてみると、「旅人算」の考え方が土台となっていることが分かります(矢印D)。

 この「旅人算」に角速度の考え方を組み合わせたテーマが「円周上の2点の移動」「時計算」の系列になります。(矢印E、F)

 矢印Gはどれも「発展させる」、点線Hはどれも「共通性がある」を意味しています。「二つの列車の追い越し(又は擦れ違い)」と「時計算」はどちらも「旅人算」の応用であり、また、差集め算、仕事算、ニュートン算は、問題文の見かけ上では旅人算とは全く異なるテーマですが、「全体量や全体量の差に対して、1単位ずつ埋めていくと何単位分になるか」という構造において共通していると言えるでしょう。

算数の解法知識は「量」より「質」が大事

 上の例のように「知識の体系化」とは、学んだ個々の内容を「点」としてとりあえず理解したものが、後になってつながりを持ち、「点」から「線」へ、「線」から「面」へと変化していくことです。

 分散的な「点」としての知識は忘れやすく、新しい知識を増やすにも暗記に頼ることになります。応用問題を解く時に、何百個もある「点」の中から、最も適したものを選択し、組み合わせて活用することは困難です。

 インプット時、アウトプット時のどちらにおいても非常に効率が悪く、学ぶことが苦痛になってしまうかもしれません。

 既知のものとのつながりを考えながら学ぶことで、新しい知識が速やかに吸収され、「線」を作ります。そして、既知のものがさらに深く理解できるようになります。このようにして覚えた知識はなかなか忘れることがなく、知識が増えるごとに構造化されていき、やがて「面」(体系的知識)を作ります。応用問題に対しても「面」で包み込むようなアプローチならば、解きほぐすための糸口を見つけやすく、さらには問題構成の核心部分を把握しやすくなります。

 インプット時、アウトプット時のどちらにおいても、「つながる面白さ」を感じられる、主体的で楽しい学習となることでしょう。

 算数の解法知識は、「何をどれだけ知っているか」ではなく「どのように知っているか、どのように活用できるか」が重要なのです。

プロフィル
粟根 秀史( あわね・ひでし
 教育研究グループ「エデュケーションフロンティア」代表。森上教育研究所客員研究員。大学在学中から塾講師を始め、35年以上にわたり中学受験の算数を指導。首都圏の大手進学塾教室長、私立小学校教頭を経て、現在は算数教育の研究に専念する傍ら、教材開発やセミナー、講演を行っている。また、独自の指導法によって数多くの「算数大好き少年・少女」を育て、「算数オリンピック」金メダリストや灘中、開成中、桜蔭中の合格者などを輩出している。「中学入試 最高水準問題集 算数」「速ワザ算数シリーズ」(いずれも文英堂)など著作多数。

無断転載・複製を禁じます
2059750 0 マナビレンジャー 合格への道 2021/05/19 05:01:00 2021/05/21 09:47:13 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210517-OYT8I50038-T.jpg?type=thumbnail

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