学校選びの新たな視点、放課後の学習支援体制…森永直樹<12>

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関西の進学校に多い放課後の特別指導

 進学校を選ぶ際に、大学合格実績とともに、そのための学力を付けていくプロセスが重視されています。特に関西ではどの程度のダブルスクール(塾や予備校の併用)が必要なのかを気にされるケースが多く、学校だけで完結できる体制を望む傾向が強くなっています。

 関西の進学校の多くは、何らかの形で放課後の特別指導を実施しています。そのほとんどは、小テストや確認テストの結果の悪かった生徒へのフォローや、高2・高3になってからの受験対策特別授業、英検対策などですが、近年は外部機関から講師を招いた講座(学内予備校)を実施しているケースも増えてきています。

 放課後指導の中身が進学先を決める大きな要因となることはありませんが、その学校の魅力にプラス効果をもたらすことはあると思います。

 「主体的に学ぶ」ことに主眼が置かれたり、AI教材が誕生したりと、放課後の学習支援にも変化が見られるようになりました。そこで今回は、私学の放課後学習支援の新しい二つのタイプに注目し、特徴ある学校を紹介します。

「学び選択型」の報徳学園と滝川

 放課後学習支援の新しいタイプの一つ目は「学び選択型」です。クラブ活動との兼ね合いを考えて、特別講座の受講と自学自習(個別対応あり)を生徒自身が選択できるのが特徴です。クラブ活動が盛んな進学校で今後増えてくると予想されます。有償にはなりますがダブルスクールより安価であることや、時間が有効に使える点が人気です。ここでは兵庫県の男子校の事例を2校紹介します。

 1校目は、兵庫県西宮市の報徳学園中学校・高等学校です。全国大会に出場するクラブが多く、文武両道で知られる男子進学校です。二宮尊徳の報徳思想を教育の柱としています。

 報徳学園では、授業・家庭学習・受験対策を学校内で完結することを狙いとした、放課後の学習支援システムが導入されています。クラブ活動の前後に組み込むことができるため、何らかの形で利用している生徒が多いようです。

 中学からスタートする自習教室「金次郎STUDEO」には、無償コースと有償コースがあります。有償コースにはチューターが付き、個別面談のうえ学習計画にアドバイスしてくれるなど、細かな対応がとられています。高校になると受験対策特別講座の「金次郎SEMINAR」が新たに加わります。基礎固めから応用までレベル別に、1教科あたり年間25回開講され、生徒は参加したい講座を選択できます。

 放課後を含めた学校での時間に集中することで、クラブ活動と両立させながら将来の大学受験にも備えることができるこのシステムは、学校の魅力の一つとなっています。

 2校目は、神戸市須磨区の滝川中学校・高等学校です。先に紹介した報徳学園と同様にクラブ活動が盛んな進学校で、2022年入試から新コース制(医進選抜コース・Science Global一貫コース・ミライ探究一貫コース)での募集を行うことが話題となっています。

 滝川の放課後指導のメインは、校内塾「滝川セルフィー」です。チューターのサポートを備えた自習教室で、家庭学習の内容を放課後に学内で完結することを目的としています。学習環境や学習習慣の問題などをクリアし、日々の学習を確実に積み上げていけるシステムとして、成果が期待されます。高校になると、教員による大学受験対策の特別講座なども実施されます。

 22年に「医進選抜コース」が誕生するのに合わせて、放課後指導にも新たなラインアップが加わります。それが、外部の医系予備校と協力した「滝川メディカルゼミ」で、医進選抜コース入学者は中学1年生から全員参加となります。このゼミの内容は医学部受験に特化したもので、英語・数学・理科の医学部進学対策授業と小論文・面接対策講座が予定されています。医学部合格という高い目標に向けて、正規の授業以外に必要な内容を学校で学べることは大きなメリットとなるでしょう。

「AI教材活用型」の常翔学園と金蘭千里

カリキュラム沿った個別指導でテスト対策を行っている学校もある(写真はイメージです)
カリキュラム沿った個別指導でテスト対策を行っている学校もある(写真はイメージです)

 新しいタイプの二つ目は、「AI教材活用型」です。AI教材を活用して、放課後の時間に「自学自習の習慣付け」と「学びの個別最適化」を図ります。放課後の学習支援は、今後はこのタイプが主流になるでしょう。導入の目的は同じでも、学校の教育方針に応じて活用方法が異なる事例を2校紹介します。

 1校目は、近年着実に大学合格実績を伸ばしている大阪市旭区の常翔学園中学校・高等学校です。22年度から新コース「スーパーJ」が設置され、さらに進学体制が強化されます。

 常翔学園の放課後の学習支援「JOSHO+(プラス)」では、学校のカリキュラムに沿った個別指導で、弱点克服や定期テスト対策が行われています。定期面談での学習コーチングや 進捗(しんちょく) 管理によって自学自習の習慣を確立し、成績向上を目指します。

 この個別指導にAI教材が導入されているのが新しい点で、「質問型個別指導コース」と呼ぶ個別最適学習が進められます。全員参加のプログラムに加えて、自分で必要な内容を追加できるようになっているのが特徴です。生徒の「主体的な学び」を全力で学校がサポートするところに常翔学園らしさを感じます。

 2校目は、大阪府吹田市の金蘭千里中学校・高等学校です。同校には定期テストがなく、毎日の小テストで授業の理解度を細かく確認します。日々の学習を重視するシステムで「伸ばす」学校として支持される進学校です。

 これまでは、放課後の学習支援に決まった形はなく、職員室内に「質問スペース」を設けて、毎日たくさん出入りする生徒たちの質問に応えていました。学校としても、生徒が自力で考えている瞬間に立ち会い、つまずきを見定め、1対1で助言を与える重要な機会と捉えています。

 一方で「学び方を学ぶ」ことも重視しており、個別最適学習を推し進める中で、新たにスタートしたのが、AI教材も使用できるオンライン自習システム「金蘭千里勉強部」(希望者対象)です。これにより、帰宅後に自習する際も、オンラインで指導や学習スケジュール管理が受けられるようになり、学校が目指す「自学自習力」向上につながることが期待されています。

 放課後の学習支援の形にも、その学校らしさが表れています。放課後は、クラブ活動や校外での習い事などに充てる時間でもありますが、学校で学習指導が実施されることによって、クラブ活動との両立や、学習の習慣化をしやすいメリットがあります。学校選択に迷った場合は、こんなところにも注目してみてはいかがでしょうか。

プロフィル
森永 直樹( もりなが・なおき
 株式会社日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを歴任。現在は教室と広報セクションを統括しながら、学校・教育情報を発信している。私学教育の魅力を伝える講演など中学受験イベントに多数出演。

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2334137 0 マナビレンジャー 合格への道 2021/09/07 06:00:00 2021/09/07 06:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210901-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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