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    産業革命遺産VR活用、23日から内容刷新当時の風景再現…三重津海軍所跡

    • 三重津海軍所跡に立ち、ゴーグルをのぞいてVRを体験する人たち=貞末ヒトミ撮影
      三重津海軍所跡に立ち、ゴーグルをのぞいてVRを体験する人たち=貞末ヒトミ撮影
    • 三重津海軍所跡で見られるVR画像(佐賀県提供)
      三重津海軍所跡で見られるVR画像(佐賀県提供)

     世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産で、仮想現実(VR)の活用が進んでいる。実際に見られなくなったり、入場制限されたりした場所でも、ゴーグルを着ければ臨場感が味わえる。関係者は「遺産の価値に再び注目が集まるきっかけにしたい」と期待している。

     佐賀藩は幕末期、ここに洋式船を修理するドライドック(乾船渠せんきょ)を造った。西洋で一般的な石やレンガではなく、木や土を使う日本の伝統的建築技術を用いたのが特徴だ。現存する日本最古のドライドックは現在、風化防止を理由に埋め戻されている。

     藩がオランダから購入した軍艦「電流丸」のドック入り、藩が建造した日本初の実用蒸気船「凌風丸りょうふうまる」……。ゴーグルをのぞくと、再現CG画像が目の前に広がった。

     佐賀県は世界遺産登録2か月前の2015年5月、事業費6000万円でVR機器を導入した。何もない河川敷を訪れた人たちに、当時の雰囲気を少しでも感じてもらう狙いだった。

     17年度までに約10万人が体験し、アンケートでは「満足度が高い」との回答が約8割に達した。

     今月23日からは、新たに判明したことなどを反映させて内容を刷新。電流丸の甲板やドックの内側、大砲6門を使った砲術訓練の動画などを追加する。

     県の担当者は「VRには、復元が難しい史跡の歴史的価値を、当時の時代背景とともにわかりやすく伝えられる強みがある。楽しんでもらえるはず」と自信をのぞかせる。

     世界遺産登録から3年が過ぎ、佐賀のようにVRを導入する自治体が出てきた。

     北九州市の「官営八幡製鉄所」の旧本事務所や修繕工場は、新日鉄住金八幡製鉄所構内にあり、機密保持などを理由に内部は原則非公開となっている。このため、市は3月、当時の建物の中にいるような体験などができるVRサービスを見学者用の眺望スペースで始めた。

     鹿児島県も3月から、「旧集成館」など三つの資産でスマートフォンのアプリで反射炉などを見られるサービスを展開している。

     観光と映像技術に詳しい尾久土おきゅうど正己・和歌山大教授(観光情報学)は「コストが安く、手軽に作れるVRは集客を増やしたい自治体にとって画期的な技術と言える。一方で、物珍しさだけでは飽きが来るのは時間の問題。内容を充実させ、定期的に更新することが求められる」と指摘している。

    ◆9資産でVRやAR導入

     明治日本の産業革命遺産の事務局を務める鹿児島県によると、九州・山口を中心とする8県11市の23構成資産のうち、約4割にあたる9資産で、VRや拡張現実(AR)が導入されている。

     一方、来訪者総数は、世界文化遺産登録初年度の2015年度に503万人だったが、16年度は約3割減の363万人、17年度は353万人と減少傾向にある。18年度は4~6月で、100万人と前年度より4万人多い。

     鹿児島県世界文化遺産課の内山功一課長は「登録直後に比べると、注目度は下がっている。VRを使って資産の価値をわかりやすく伝え、認知度を高めたい」と話している。

    ◆仮想現実(VR)

     Virtual Reality(バーチャル・リアリティー)の訳。コンピューターで作り出した空間が、あたかも目の前にあるように感じられる技術で、主にゴーグル型の機器を頭部に装着して体験する。機器に映し出された画像は、頭部の動きに反応して動く。一方、拡張現実(AR=Augmented Reality)は、現実の風景が映し出された画面に、架空の生き物などの画像を重ね合わせて表示する技術をいう。

    2018年11月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    よみうりSPACEラボ