文字サイズ

    トレンド

    屋久島ウミガメピンチ、台風で卵1万5000個流出…保護団体は年内解散・卵の移し替え賛否

     北半球有数のウミガメの産卵地として知られる鹿児島県・屋久島で、7月上旬の台風接近に伴って大量の卵が海に流れ出す被害があった。これまでは地元の保護団体が自然の砂浜の安全な場所に移し替えていたが、年内で解散するため今季は行っていない。本格的な台風シーズンを控え、関係者は危機感を募らせている。

     30年以上にわたって、島でウミガメの生態調査を続けてきたNPO法人「屋久島うみがめ館」の代表、大牟田一美かずよしさん(68)によると、台風7号が接近した7月2~3日、島北部の永田浜(約10ヘクタール)の一部が波で浸食され、4分の1に当たる約130の産卵巣から計約1万5000個が海に流出したと推定されるという。地表に露出するなどして残った約400個は、同館の職員らが、一個一個手で拾って安全な場所に移した。直近の台風12号による被害は今のところ、わずかとみられる。

     ウミガメの産卵期は毎年5~9月で、大牟田さんたちは深夜や早朝に、上陸数や孵化ふかした卵の数などを記録し、台風が近付くと、波で浸食されそうな場所から、掘り返して安全な場所へ卵を移してきた。しかし、自身の健康問題や慢性的な職員不足を理由に、大牟田さんは年内での法人解散を決断。今季は活動を縮小し、卵の移し替えもしていない。

     今後、県や地元自治体などで作る永田浜ウミガメ保全協議会が保護活動を担うことが期待されている。ただ、今季は移し替えをしない方針だ。事務局を務める環境省屋久島自然保護官事務所の大嶋達也自然保護官は、同館の長年の保護活動を評価したうえで、「人間が『かわいそうだ』と言って卵を移すことが、自然にとって良いことなのか、1年間経過を見たい」と話す。卵の流出数や、浜の浸食具合といったデータを蓄積し、地元自治体や専門家などと協議したうえで方針を決めるという。

     これに対し、大牟田さんは「ウミガメの生息環境を壊してきたのは人間。助けられるものは助けるべきだ。台風の通り道次第で卵が全滅しかねない」と危惧している。宮城県石巻市の会社員で、同館理事の上田博文さん(53)も「台風は年々大型化している。卵の移し替えは必要だ」と強調する。

     他の産卵地でも、民間団体などが卵の移し替えをしている。宮崎県で活動するNPO法人「宮崎野生動物研究会」(宮崎市)は「自然のままが原則だが、開発で浜辺が狭くなった場所もあり、台風の接近時には安全な所へ卵を移している」という。

     ウミガメ調査団体のネットワーク組織・NPO法人「日本ウミガメ協議会」(大阪府枚方市)の松沢慶将よしまさ会長(49)によると、近年、柵で囲うなどした孵化場に卵を移し替える地域があり、疑問の声も出ているという。周囲の温度で性別が決まる卵の特性への影響や、孵化率の低下などが懸念されている。

     屋久島の現状について、松沢会長は「うみがめ館の活動を後世に引き継ぐためにも、環境省や地元自治体は、既存の研究成果や専門家を交えた議論を踏まえて、保護のあり方を整理すべきだ」と話している。

    2018年08月10日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    よみうりSPACEラボ