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    登り窯2年ぶり復活、元会社員が引き継ぐ…防府市文化財

    • タコつぼの仕上がり具合について話す久野さん(左)と田中さん
      タコつぼの仕上がり具合について話す久野さん(左)と田中さん

     山口県防府市末田地区に唯一残り、2年前に閉じられた市指定有形民俗文化財の登り窯が、新たに「多幸たこう窯」の名称となって復活した。先月、地域住民ら約80人が出席して「火入れ式」があった。窯を継ぐことになったのは、同市新田の元会社員久野公寛ともひろさん(35)。「焼き物づくりを通じ、地域住民が集える場所にしたい」と意気込む。

     同地区は明治時代、排水用の「末田土管」の製作が盛んで、登り窯の煙突から煙が立ち上る風景は地区の象徴だった。しかし戦後になると衰退し、窯元も減少。最後に残った田中窯業の前代表、田中孝志さん(73)は全国で唯一、登り窯でタコつぼを生産していたが、「年齢には勝てない」と2016年に廃業した。

     その後は、地元の保存会が「焼き物の里」として、地区の窯業の歴史を紹介する資料展示を開催するなどしていた。そして昨年4月、田中さんが開いたタコつぼ作りの体験会に参加したのが久野さんだった。「田中さんの人柄や地域の人たちの温かさに触れ、やってみたいと思った」。勤めていた会社を辞め、田中さんに弟子入り。土作り、成形などの技術を懸命に学んだ。

     田中さんは、久野さんを「職人としてはまだまだ」と手厳しいが、「知人や友人も多く、人柄がいい。きっと、いい職人として地区を盛り上げてくれるようになる」と期待を込める。

     今年は約1万個のタコつぼを生産する。本来のタコつぼ漁用ではなく、タコの魚礁用として県内向けに出荷する予定だ。また、インテリア用の商品化も目指し、来年1月に東京で開かれる展示会に出品する。

     久野さんは「窯をフル稼働させて年間2万5000個が目標。作品の幅も広げていきたい」と語る。

    2018年09月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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