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    空き家バンク復興の力、移住者の受け皿に…南阿蘇

    • 「雄大な景色を気に入っている」と話す小川さん(南阿蘇村で)
      「雄大な景色を気に入っている」と話す小川さん(南阿蘇村で)

     2016年4月の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県南阿蘇村で、空き家バンクの活用が復興の一助になりつつある。被災者向けに民間物件を借り上げる「みなし仮設住宅」の情報収集目的で導入したが、村外の入居希望者が相次ぎ、利用登録は延べ250世帯に上り、140世帯以上が物件情報を待っている。村は専門部署を設け、空き家の掘り起こしを進めている。

     「景色が雄大で、人が温かい。住めば都です」。川崎市から夫婦で5月に村へ移住してきた小川泰伸さん(50)は、山肌のススキが秋風に揺れる日を待ちこがれている。

     小川さんは大分市、妻は福岡市出身。九州で第二の人生を送ろうと、昨秋から情報収集を始め、今年2月、南阿蘇村の空き家バンクで希望の物件に巡り合えた。3月に訪れた際、豊かな水源などに魅せられ、住みたいと感じ、決断した。

     一帯では、今も被災道路の復旧が続くなど地震の爪痕が残っている。しかし、「日本にいれば、どこでも地震に遭遇する可能性はある。熊本地震が、この環境を諦める理由にはならなかった」と語る。

     現在は村の地域おこし協力隊員として、かつてバイク店を営んでいた経験を生かし、一部区間の不通が続く南阿蘇鉄道の復旧支援に携わっている。

     村内は、熊本地震で約1600棟が全半壊し、地震から2年半近くを経過しても1100人以上が仮設住宅などに身を寄せる。16年3月末に約1万1600人だった人口も、今年9月末現在で約1万700人と1割弱減った。

     空き家バンクは16年6月、子どもが小さかったり、ペットがいたりして、仮設住宅への入居をためらう世帯にみなし仮設を勧めるために導入した。

     村によると、同年夏以降、延べ250世帯の登録があり、被災12世帯を含む50世帯112人が入居した。内訳は村内26世帯58人、村外24世帯54人だった。新たな物件を待つ154世帯の半数以上が村外だという。

     そこで、村は今春、次世代定住課(5人)を新設した。「大々的にPRしているわけではないが、表に出にくかった物件が、潜在的な移住希望者の受け皿になっているのではないか」と同課の佐藤桂輔係長(42)はみる。

     多い日は相談窓口に10件ほどの問い合わせや来訪があるが、課題も出てきた。入居可能な物件情報は現在13件。このため、独自に空き家の改修費用補助制度を設けるなどして、掘り起こしを急いでいる。6月には空き地の紹介も始めた。

     佐藤係長は「村に興味を持って村外から来た人は、地域の行事にも積極的だ。こうした人たちの力も生かし、村の復興につなげたい」としている。

    2018年10月07日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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