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    災害地図住民主体で、避難経路を自ら記入…土砂被害の中津市

    • 地図を囲んで避難経路などを書き込む住民ら
      地図を囲んで避難経路などを書き込む住民ら

     今年4月に大規模な山崩れが発生し、住民6人が犠牲になった大分県中津市で、住民参加型の土砂災害ハザードマップ作りが進んでいる。地元に精通した住民の意見をマップに反映させることで危険箇所などを明確化するとともに、防災意識の向上につなげる狙いもある。国土交通省は「図案作りの段階から住民が主体的に参加する手法は珍しい」と注目している。

    ◆共助の精神も芽生える

     「大雨の時に裏山から大量の水が噴き出た」「避難するならここしかない」。11月20日、中津市耶馬渓やばけい町・大野地区の公民館。住民15人が地図を囲み、災害時の危険箇所や避難経路などを書き込んでいった。赤松良広さん(70)は「災害時にどう行動するべきかを考えるきっかけになった」と語った。

     4月に起きた山崩れでは、住宅3棟が土砂に埋まり、男女6人が死亡した。現場は土砂災害警戒区域や特別警戒区域に指定されていたが、土砂災害ハザードマップは完成しておらず、危険性の周知不足が指摘された。

     市によると、3月末時点で、市内の土砂災害警戒・特別警戒区域計1012か所のうち、マップが完成していたのは107か所しかなかった。市は山崩れを受け、今年度中のマップ完成を目指して各地で説明会を開催。住民の意見を図案に反映させている。

     市の担当者は「避難時の声かけや、避難所にたどり着けない人を近隣宅で受け入れる手順も話し合っていて、共助の精神も芽生えている」と語る。

     国交省は2005年に示した土砂災害ハザードマップに関する指針で、住民の意見をマップに反映するように努めることを自治体に求めている。国交省によると、実際には、業者の作った図案を住民に提示して意見や了承を求めるケースが主流だという。国交省砂防計画課の担当者は「中津市の取り組みは、住民だからこそ知り得る地域の特性がしっかりマップに盛り込まれる」と評価する。

     7月の西日本豪雨での対応を検証する国の検討委員会は、住民が危険性を認識できずに避難が遅れたことを問題視した。災害時の住民心理や避難行動に詳しい宮崎大の村上啓介教授(防災工学)は「住民がマップ作りに深く関わることで、身の回りの危険を理解する。『自分は大丈夫』と思い込んで避難が遅れる事態を回避できる」と効果に期待している。

    ◆土砂災害ハザードマップ

     土石流や地滑りといった土砂災害の危険性がある箇所や避難場所などを示した地図。土砂災害防止法は、特別区を含む市町村が土砂災害警戒・特別警戒区域で作り、住民に周知することを義務づけている。警戒区域は災害発生の恐れがある危険箇所を、都道府県が測量調査などを経て指定。危険度がより高い地域は特別警戒区域に指定される。

    2018年12月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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