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    人間国宝中島宏さん愛した「古武雄」、生前収集の175点展示…有田で企画展

    • 「鉄絵緑彩松樹文大皿」に見入る鈴田館長
      「鉄絵緑彩松樹文大皿」に見入る鈴田館長
    • 中島宏さん
      中島宏さん
    • 象嵌鶴文大瓶(1630~1650年代)
      象嵌鶴文大瓶(1630~1650年代)
    • 打刷毛目花文大皿(1690~1740年代)
      打刷毛目花文大皿(1690~1740年代)

     3月に76歳で亡くなった重要無形文化財保持者(人間国宝)の陶芸家、中島宏さん(佐賀県武雄市)が生前収集していた陶器「古武雄こだけお」の特別企画展が6日、有田町の県立九州陶磁文化館で始まった。亡くなる2か月余り前に同館へ寄贈された約600点から厳選した175点を展示。自由な作風で力強さを持つ作品群は、中島さんの創作意欲の源になっていた。

     「自分の分身のように古武雄を大切にしていました」。中島さんと長年親交のあった同館館長、鈴田由紀夫さん(66)は、17世紀前半に作られた「鉄絵緑彩松樹文大皿てつえりょくさいしょうじゅもんおおざら」を見つめ、振り返った。

     鈴田さんによると、中島さんは創作に行き詰まったとき、300年以上前の名もなき陶工らの大作を見て刺激を受けていた。「『そんな小さなことで、何をくよくよしているんだ』と語りかけてくるようで、励みになっていた」と話していたという。

     中島さんは「中島ブルー」と呼ばれる独特の青磁で知られた。一方、作陶のモチーフとして陶片を集めたことをきっかけに、江戸時代に佐賀藩武雄領で作られた焼き物を約50年にわたって収集し、「古武雄」として世に知らしめることに心血を注いだ。

     昨年12月下旬、寄贈された作品の受領書を鈴田さんが手渡した際、中島さんは「これで古武雄をきちんと後世に残せる」と、そっと手を合わせ、安心したような表情を見せたという。

     鈴田さんは「江戸時代の陶工たちの思いを伝える古武雄から刺激を受けた中島さんの思いも含め、陶芸家たちの情熱を感じてほしい」と話している。

     企画展は11月25日まで、午前9時~午後5時。大人600円、大学生300円、高校生以下無料。問い合わせは九州陶磁文化館(0955・43・3681)へ。

    ◆「力強く、繊細」多様な技術

     6日の一般公開を前に5日に開かれた開会式で、県陶芸協会会長の十四代今泉今右衛門さん(55)は古武雄の特徴について「力強く、繊細。中島先生の人柄をそのまま表す言葉でもある」と評した。

     白い化粧土の素地に褐色の鉄絵の具で線描きし、緑釉りょくゆうで色付けする「鉄絵緑彩」の技法で松の木を描いた作品は古武雄の代表的な存在。スピード感のある装飾が躍動感を生み出している。

     一方、素地に細かい彫り文を施し、くぼみに白土を埋め込む「象嵌ぞうがん」の技法が用いられた作品も数多い。文様には菊の花や鶴などが描かれている。

     白土の泥を刷毛はけに含ませ、連続して素地に打ちつけて文様を出す「打ち刷毛目」といった表現もあり、多様な技術が美しさを引き出している。

    2018年10月07日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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