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    行楽・観光

    阿蘇山岳信仰ツアー、火口見学頼らぬ観光模索…爆発的噴火2年

    • 5月に行われた試験ツアーで参加者に説明する住職(右)
      5月に行われた試験ツアーで参加者に説明する住職(右)
    • かつて一大霊場としてにぎわった古坊中(8日、阿蘇山で)
      かつて一大霊場としてにぎわった古坊中(8日、阿蘇山で)

     熊本県の阿蘇山の爆発的噴火から8日で2年を迎えた。火口付近の立ち入り規制は2月末に解除されたが、観光客数は噴火前の水準にはほど遠い。地元観光業者らは火山活動に左右されにくい観光を模索。この秋、新たなツアーを始める。山岳信仰などを切り口に、阿蘇のひと味違う魅力を発信する。

     阿蘇山上・草千里にある阿蘇火山博物館で先月27日、観光を考えるシンポジウムが開かれた。「熊本地震と爆発的噴火は、火口見学に依存しすぎていた従来の観光を見直すきっかけになった」。主催者で、草千里の土産物店などでつくる「阿蘇山上・草千里観光推進復興グループ」の菊池秀一委員長(48)は力を込め、新たに始めるツアーを紹介した。

     注目したのは、古くから山岳信仰の対象とされてきた点。400年以上前は、火口から約1・5キロの「古坊中ふるぼうちゅう」一帯は一大霊場として多くの宿坊などが並び、常時400人ほどの山伏らが修行などで訪れたという。

     江戸時代にも、阿蘇山詣でが流行。「写経ヶ橋」と呼ばれる溶岩が細く隆起した場所は、男女が結婚前に渡ることが成婚の条件とされたとも伝えられる。

     新ツアーでは、かつての修験道の拠点を集約した阿蘇山麓の西巌殿寺さいがんでんじ(阿蘇市黒川)で、住職に山岳信仰の歴史などを聞いた後、古坊中を散策。新たに作ったVR(仮想現実)映像で修行や参詣でにぎわう様子が体験できる。山上の同寺奥之院では写経体験も行う。火山博物館で火山の成り立ちを学ぶほか、地元食材を生かした昼食を味わう。

     火口見学をメインとした観光に最も影響を与えているのは火山ガスで、現在も火口付近は見学可能な時間帯の3割強がガスのため立ち入れない。訪れる場所は、立ち入り規制される半径1キロ以内にはないため、影響を受けにくい。5、6月に観光関係者ら向けに試験ツアーを実施したところ、「切り口が面白い」「信仰に関心が高い外国人が喜びそう」と好評だった。現在、ガイドを育成中で、11月から始めたい考えだ。

     シンポジウムに参加した教育旅行コンサルタントの伊原和彦さん(51)は「阿蘇ならではの歴史や文化を学べる内容であれば、より満足度の高い観光につながると思う」と期待する。

    ◆観光客いまだ戻らず

     2016年4月の熊本地震で、阿蘇山は山頂に通じる三つの登山道が崩れるなどして通行止めになり、土産物店なども軒並み被害を受けた。その後の爆発的噴火で、草千里を含む火口から半径3キロが約2か月半立ち入り禁止となった。

     現在でも、草千里の土産物店3店のうち、全面再開したのは1店にとどまる。駅舎が噴石などで損壊した阿蘇山ロープウェーの運休は続き、火口までは代替バスを運行している。

     阿蘇地域の観光客は15年の約1590万人から、16年には約990万人に減少。県の動向調査では、17年は県全体の宿泊客が熊本地震前の8~9割程度に戻ったのに対し、阿蘇地域は交通の寸断が続き、「回復しきれていない」とされる。

     今年2月末には、約3年半ぶりに火口付近の立ち入り規制が解除された。現在の噴火警戒レベルは最も低い「1」だが、阿蘇市によると、この半年間の火口見学客は通常の6割程度にとどまっているという。

    ◆阿蘇山の爆発的噴火

     2016年10月8日午前1時46分、中岳(1506メートル)の第1火口で発生し、噴煙は約1万1000メートルまで上昇した。爆発的噴火は1980年以来。人的被害はなかったが、阿蘇市では観光や農業などの被害が約1億8400万円に上った。

    2018年10月10日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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