[和を食す]漬物<上>時代に合わせ低塩化…アイスなど甘味とコラボも

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 連載「和を食す」の第7部は、和食の名脇役、漬物の今を探る。食の洋風化や減塩志向など逆風の中、地道に進化を続けてきた。

「きゅうりのキューちゃん」の調味液を調合する荒谷さん(愛知県豊橋市の漬物機能研究所で)
「きゅうりのキューちゃん」の調味液を調合する荒谷さん(愛知県豊橋市の漬物機能研究所で)

 愛知県豊橋市郊外にある漬物機能研究所。「きゅうりのキューちゃん」を製造する東海漬物の研究開発拠点だ。1962年発売の看板商品の味付けは、代々1人の責任者が担っている。2月下旬、研究所では、荒谷佳佑さん(28)が新たな調味液を試作していた。

 定番の味は時代の変化とともに改良が加えられてきた。2代前の責任者、岩田峰司さん(61)は「漬物は塩分が高いという負のイメージが強い。おいしさを維持しながら低塩化を図るのが、キューちゃんのレシピ開発の歴史そのもの」と話す。

 蔵元と共同で低塩しょうゆを開発。ただ、味がぼけてしまっては、従来のファンが離れてしまう。魚介エキスなどを加え、しょうゆのうま味に膨らみを持たせた。工場の殺菌技術も向上させた。100グラム当たりの食塩相当量は当初11・9グラムだったが、現在4・3グラム。荒谷さんは「伝統を守りながら時代に合わせた味をさらに追求したい」と話す。

 塩分の取りすぎが生活習慣病につながるとの認識から、70年頃に食事の減塩志向が始まった。漬物もそのひとつ。

 全日本漬物協同組合連合会(全漬連)専務理事の藤川研四郎さんは「保存食である漬物の塩分はかつては多かった。しかし包装や低温流通などの努力で、低塩化が実現された」と解説する。

 日本食品標準成分表によると、たくあん漬け100グラム当たりの食塩相当量は、1982年の7・1グラムから、2015年には2・5~4・3グラムに。福神漬も7・6グラムから5・1グラム、ナスのしば漬けも7・4グラムから4・1グラムに。

      ◇

 ただ、米離れなどにより漬物の生産量は減少傾向にある。全国の生産量は1991年にピークの120万トンだったが、2018年は71万トンと低迷している。

クリームあんみつに添えられたミョウガのピクルス(左)とダイコンのしょうゆ漬け(東京都の「銀座やまう」で)=米田育広撮影
クリームあんみつに添えられたミョウガのピクルス(左)とダイコンのしょうゆ漬け(東京都の「銀座やまう」で)=米田育広撮影

 そんな状況に手をこまねいているわけではない。魅力を若い世代に伝える取り組みも始まっている。1946年に創業し、漬物の製造販売を手がける「やまう」(東京)は、2017年1月、東京・銀座に直営店をオープン。山形の温海あつみカブの漬物など各地の漬物約50種類を並べる。

 併設するカフェでは、甘味にその日お薦めの漬物を添えて提供する。濃厚なアイスクリームには、さっぱりとしたモモやミョウガのピクルス。「意外な組み合わせをきっかけに、漬物のおいしさに気づいてくれれば」と店長の石島毅さん。

 全漬連も16年から漬物グランプリを毎年開催する。昨年4月の大会では、秋本食品(神奈川県綾瀬市)の「ぶっかけオクラ」が大賞に輝いた。オクラやダイコンなどをさっぱりと漬けた。藤川さんは「従来にない食材を使うなど、漬物の可能性を各社が追求している」と話す。

 

古くから食事を豊かに

 漬物は古代から日本人の食事を豊かにしてきた。漬物の歴史研究で博士号を取得した料理研究家の小川聖子さんは、「冷蔵の設備がない時代に食料の長期保存を可能にするとともに、和食の中心であるご飯をおいしく食べるために欠かせない存在だった」と話す。

 古代から野菜などを塩漬けで保存していたと考えられるが、史料で確認できるのは奈良時代初期から。左大臣、長屋王の邸宅跡から出土した木簡に、かす漬け、ひしお漬けを意味する記述があり、塩、粕、穀物を発酵させた醤などで漬けていたとみられる。

 室町時代になると、後に漬物全体を表す「香の物」という言葉が登場。本膳料理の発展と共に広まった。

 明治時代以降、軍隊や工場など集団で食事を提供するように。たくさんのご飯を漬物で食べるような献立が中心だった。戦後は、おかずや主食の多様化が進み伝統的な漬物が減少。一方、日韓共催のサッカーW杯などで韓国文化が注目されたことも背景に、キムチの人気が上昇した。

 国民健康・栄養調査(2017年)によると、1日当たりの食塩摂取量の平均値は男性10・8グラム、女性9・1グラム。国が目標に掲げる男性8グラム未満、女性7グラム未満を上回っている。

 「献立全体のバランスや塩分量をよく考え、漬物を食卓に載せる頻度や量を判断しましょう」と小川さんは指摘。「漬物には発酵のうま味もあり、刻んでチャーハンに加えるような活用法も考えられます」と話す。

466054 1 ライフ 2019/02/28 05:00:00 2019/02/28 05:00:00 2019/02/28 05:00:00 「きゅうりのキューちゃん」の調味液を調合する荒谷さん(愛知県豊橋市の漬物機能研究所で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190227-OYT8I50088-T.jpg?type=thumbnail

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