[安心の設計]混合介護…保険外サービス 生活豊かに

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利用者の話し相手になる女性ヘルパー(東京都豊島区で)
利用者の話し相手になる女性ヘルパー(東京都豊島区で)
見守りサービスで使う機器。スマホで利用者の居室の室温や湿度などが確認できる(東京都豊島区で)
見守りサービスで使う機器。スマホで利用者の居室の室温や湿度などが確認できる(東京都豊島区で)

話し相手やペットの世話

 介護保険の対象となるサービスと、ペットの世話など対象外のサービスを組み合わせて利用できる「混合介護」。東京都豊島区では2018年8月から、訪問介護で保険外のサービスを選べるモデル事業(選択的介護)を実施しているが、対応できる事業者の不足など課題も多い。(阿部明霞)

 「隅田川の花火大会とか、食事とか、もっと外に出て楽しみたいね」。外出時の同行など、モデル事業のサービスを利用している一人暮らしの女性(87)は、笑顔を見せた。

 足が不自由で、要介護度は3。自宅にこもりきりになっていたが、この2年ほどの間に面倒を見てくれていた夫と妹を相次いで亡くした。自宅の掃除などは行き届かなくなった。

 訪問介護サービスでは、介護保険内で行えるのは利用者の食事の準備や調理、洗濯、入浴や排せつの介助などに限られている。一方、ペットの世話や庭の掃除などは、全額利用者負担の「保険外サービス」となっている。

 豊島区のモデル事業では、利用者の生活実態などを把握しているケアマネジャーが、保険外サービスもケアプランに組み込み、内容や料金などの確認も行う。

 女性はモデル事業のサービスから、主に書類の整理を利用しているが、外出の支援や自宅の大掃除なども必要に応じて依頼する。夫や妹が担っていた部分を肩代わりしてもらっている。

 NPO法人「やすらぎ」から派遣された女性ヘルパー(58)は、「保険内のサービスは時間に追われて作業をしていたが、選択的介護ではゆっくり話す時間もとれる」と、利用者の生活が良くなったことを実感しているという。

 ■端末設置で見守り

 モデル事業のサービスには、利用者と離れて暮らす家族などからの要望が多い「見守りサービス」もある。

 介護事業者「まんぞく介護」は、人感センサーなどを備えた端末を設置するだけで、生活状況を確認できる「みまもりナビ」(月額4980円、初期費用は別)を提供する。

 温度と湿度から熱中症のリスクやインフルエンザ危険度を算出。異常を検知すると、関係者のスマートフォンに通知する。利用者が緊急ボタンを押した場合も通知する。

 高齢者は夏場に暖房など、エアコンの誤設定をすることが珍しくない。利用者の部屋の温度が、上がり過ぎる異常を検知したケースもあった。

 モデル事業で質の高いサービスをアピールすることによって、「保険内のサービスの依頼増や、(職員の)採用活動につながれば」(西谷剛社長)との思いもある。

 ■対象を明確に

 介護保険では、保険内でできることと、できないことについて、利用者への周知が徹底されていない状況がある。ある事業者は「ヘルパーと利用者は人間関係ができてしまうから、保険外のことを頼まれても断りにくい」と打ち明ける。

 混合介護には、こういった「グレーゾーン」をなくし、保険の対象内と、対象外のサービスを明確に切り分けて提供する側面もあるが、一部には、「これまではタダでやってくれていたのに」という困惑も見られるという。

 

事業者の人手不足など課題

 課題も見えてきた。利用者保護のため、モデル事業のサービスを受ける場合、複数の書類への記名や押印などが必要だが、利用者と事業者の双方の負担となっている。

 こうした手間を嫌い、モデル事業の利用を見送った人もいる。事業者側も利用者が理解できるまで、電話などで複数回、説明を繰り返すこともある。

 低所得者や生活保護受給者などは、必要であっても、全額利用者負担の保険外サービスを利用しにくい面もある。

 人手不足で保険外のサービスを提供する余裕がない事業者も多い。モデル事業に参加しているのは区内の75の訪問介護事業者のうち9事業者にとどまり、19年1月末時点の実績は16件に限られる。

 ただ、区内の高齢者人口に占める一人暮らしの高齢者の割合は33・8%と全国平均(17・7%)のほぼ倍だ。区では、介護が必要になっても独居を望む高齢者は多く、潜在的な保険外サービスのニーズは多いとみている。

 通所介護にもモデル事業の導入を検討しており、「サービスの裾野を広げていくためには、参加する事業者数を増やすことが課題だ。利用者、事業者双方の負担を減らすために、柔軟性を持ってやりたい」(豊島区保健福祉部)としている。

          ◇

 モデル事業に関する区の有識者会議で委員を務める上智大の栃本一三郎教授

 現状の介護は、家族の存在抜きに考えられない。利用者が自分らしい生活を送れるようになるのを目指すなら、保険内と保険外とを区別する構造で考えるのではなく、介護保険制度は家族を含めた様々な保険外サービスがあって成り立つというくらいの意識改革が必要だ。

472654 1 ライフ 2019/03/05 05:00:00 2019/03/05 05:00:00 2019/03/05 05:00:00 利用者の話相手になるヘルパーの施さん(25日午後6時27分、東京都豊島区で)=阿部明霞撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190304-OYT1I50037-T.jpg?type=thumbnail

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