犬猫生後56日規制 歩み寄り…動物愛護法改正案の舞台裏

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動物愛護法改正案を公表する尾辻会長(中央)ら超党派議連のメンバー(5月22日、国会内で)=萩本朋子撮影
動物愛護法改正案を公表する尾辻会長(中央)ら超党派議連のメンバー(5月22日、国会内で)=萩本朋子撮影

 議員立法による動物愛護法改正案が、全会一致で衆議院に委員長提案されたことで、今国会で成立する見込みだ。動物虐待罪の厳罰化や、犬猫へのマイクロチップ装着の義務化などが盛り込まれた。生後56日以下の犬猫の販売禁止(56日規制)が争点となり、舞台裏ではぎりぎりの調整が続いた。(宮沢輝夫)

 虐待罪の厳罰化盛り込む

 厳罰化は、インターネットで犬猫やハムスターなどの虐待動画の投稿が相次いでいることが背景にある。殺傷の場合は、現行の2年以下の懲役(または200万円以下の罰金)を、5年以下の懲役(または500万円以下の罰金)に引き上げる。マイクロチップ装着の義務化は、飼い主を明示することで犬猫の遺棄や虐待の防止につなげる。

 ■科学的根拠

 56日規制は欧州の一部などで実施されている。犬猫を親から早く引き離し、販売するとかみ癖などの問題行動を誘発し、飼い主からの虐待などにつながるとして、愛護団体が導入を主張。2012年の前回改正時に盛り込まれた。

 だが、少しでも幼い犬猫を飼いたがる消費者への販売に影響が出るとして、ペット業界の反対が根強く、経過措置として生後49日超が設定された。56日超にした場合と、現行の49日超の場合を比較し、将来、問題行動を起こす頻度に差が出るかを調べる研究の必要性もうたわれた。

 環境省は13年度から5年の歳月と約1億1000万円をかけ、動物行動学の専門家らに研究・分析を委託。結果は「差が出るという仮説は証明されなかった」だった。

 愛護団体は恣意しい的な解釈があったとして納得せず、今国会中、超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」(会長・尾辻秀久参院議員)に、経過措置の解除を強く求めた。一方、ペット業界の支持を受けた議員は、56日規制に反対の姿勢を固持。議連の役員は「愛護団体の思いはよくわかる。だが、研究で否定的な結果が出た以上、56日規制に科学的根拠はないと反論されると厳しい」と話した。

 改正の先行きには不透明感が漂った。

 ■助け舟

 ただ、ペット業界も一枚岩ではなかった。「自民党どうぶつ愛護議員連盟」(会長・鴨下一郎衆院議員)が4月25日に行った関係団体からの意見聴取で、大手ペットチェーンの一部が56日規制を容認すると発言。ある関係者は「愛護団体からの批判が強く、容認に転じたようだ」と話した。

 流れを56日規制の導入へと大きく変えたのは、自民党に近い日本獣医師会が賛成に回ったことだ。同会は、マイクロチップの装着を推進している。改正そのものが頓挫すれば、獣医師界の業務拡大にもつながる装着義務化が実現しない。それまで56日規制への賛否を明らかにしていなかったが、対応を変えた。

 犬は、母犬の初乳に由来する抗体が生後7週(49日)頃からなくなり始める。そのため、ワクチンを打ち、販売するまでには一定期間が必要になる。同会の政治団体、日本獣医師連盟の北村直人委員長は「最近の獣医療の観点から、一般的には56日規制の方が妥当と言える」と話した。

 ■日本犬に配慮

 だが、改正実現にはハードルが一つ残っていた。

 「国の天然記念物の日本犬は飼養方法が異なる。格別の配慮をお願いしたい」。超党派と自民の両議連に、公益社団法人日本犬保存会(会長・岸信夫衆院議員)と、同秋田犬保存会(会長・遠藤敬衆院議員)が、水面下で働きかけを強めていた。

 参院選を控え、与野党の議員が団結して行動できる時間にも限りがあった。5月21日、両議連は、衝動買いにつながる店頭販売ではなく、一般の飼い主がブリーダーから直接買う日本犬に限って、56日規制から除外することで、折り合った。

 改正案は翌22日、国会内で開かれた超党派議連総会で了承された。日本犬の特例について一部から異議は出たが、尾辻会長は、「改正案はガラス細工のようなもの。法改正し、動物愛護を前に進めるためには妥協も必要だ」と強調した。

 ◆日本犬=秋田犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬、北海道犬、しば犬。1920年代に発足した日本犬保存会と秋田犬保存会が中心に保護し、30年代に相次いで国の天然記念物に指定された。性質が野性的で、人間に慣らすために早い時期に親元から離すなどの飼養方法が取られてきた。遺伝子がオオカミに近く、習性も洋犬と異なる。

 改正案のポイント

▽犬猫へのマイクロチップ装着の義務化

▽生後56日を経過しない犬猫の販売禁止

▽動物虐待罪の厳罰化

殺傷は現行の2年以下の懲役(または200万円以下の罰金)を、5年以下の懲役(または500万円以下の罰金)へ

[Q]マイクロチップ義務化とは?…遺棄防止へ飼い主情報登録

マイクロチップが装着された位置に読み取り機をかざすと15桁の数字が表示される。数字に基づいて登録情報を照会する(埼玉県内で)
マイクロチップが装着された位置に読み取り機をかざすと15桁の数字が表示される。数字に基づいて登録情報を照会する(埼玉県内で)

 法改正で、犬猫を飼う場合に最も影響が出そうなのはマイクロチップ装着の義務化だ。

 Q マイクロチップとは。

 A 長さ10ミリ、直径2ミリ前後の円筒形の電子器具。15桁の番号が記録され、注射器に似た器具で犬猫の首の後ろの皮下に埋め込む。専用機器で番号を読み取ることで、飼い主の連絡先などの登録情報が分かる。

 Q なぜ装着するのか。

 A 飼い主の責任を明確にすることで、遺棄などを防止する。大地震など自然災害で犬猫が迷子になった場合にも役立つ。欧米では定着している。

 Q 飼い主にはすべて義務化されるのか。

 A 対象は繁殖業者など。犬猫を購入した人は、飼い主情報の変更の届け出が義務付けられる。すでに飼っていたり、保護された犬猫を譲り受けたりした場合は努力義務に。施行は公布から3年以内。

 Q 装着する際に痛みはあるのか。

 A ワクチン注射と同じ程度の痛みとされている。

 Q 装着するのは誰か。

 A 装着できるのは獣医師のみ。ただ、動物看護師を国家資格化する議論があり、将来的には動物看護師が条件付きで装着できるようになる可能性がある。

 Q 飼い主情報などの登録業務はどこが行うのか。

 A すでに登録業務を行っている日本獣医師会が中心になる見込み。

 Q 装着費用は。

 A 獣医師によって異なり、現状は3000~1万円ほど。登録の際に別途1000円かかる。

無断転載禁止
618164 0 ライフ 2019/06/04 05:00:00 2019/06/06 12:18:27 2019/06/06 12:18:27 発言する「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」の尾辻秀久会長(中央)(22日午後、衆院第1議員会館で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190603-OYT1I50058-T.jpg?type=thumbnail

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