[防災ニッポン]大雨「勧告」待たず「予防的避難」を
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九州などに大きな被害をもたらしている豪雨では、未明に大雨特別警報が出されるなど、避難の難しさが浮き彫りになっている。専門家は、浸水被害などが予想される地域では、避難勧告などを待たず、早めに自主的な避難をする重要性を指摘する。
日中のうちに 車か徒歩か判断
「ハザードマップの浸水想定区域や土砂災害警戒区域などに住んでいる人は、『予防的避難』を心がけてほしい」。静岡大防災総合センター特任教授(防災学)の岩田孝仁さんは呼びかける。
予防的避難とは、過去に例を見ないような豪雨が予想される段階で、避難勧告などを待たず、明るいうちに逃げることだという。今回のように夜から未明にかけて大雨が降る中、避難するのは、視界が悪く危険だ。「徒労に終わったとしても、日中、早めに安全な場所に避難することを常識としていく必要がある」と岩田さん。
避難所が開設されていない場合は、浸水被害の恐れがない知人や親戚宅に避難してもいい。多くの人が詰めかける避難所に行かないことで、新型コロナウイルスの感染防止にもなる。
「大したことない」正常性バイアスに注意
ただ、いざとなると、避難を妨げる心理が働きやすい。「正常性バイアス」と呼ばれる作用で、大雨や暴風で警報や避難勧告が出ても、「大したことはないだろう」「自分は大丈夫」と事態を過小に評価してしまう心の癖だ。早めの避難を自身で判断するとなると、なおさら、「そこまでしなくても」という心理が働きやすくなりそうだ。
兵庫県立大教授(防災心理学)の木村
早めの避難の判断をするには、大雨予想などの情報が不可欠だ。防災アドバイザーの岡本裕紀子さんは、「インターネットなどで常に最新の災害情報をチェックすることが大切」と指摘する。気象庁がホームページで最大15時間先の降水量分布を公開しているほか、スマートフォンの防災アプリなども参考になる。
徒歩での避難、長靴よりひも靴を
実際の避難では、車と徒歩のどちらが安全か、慎重に判断したい。避難中や移動中に、車が水没したり川に流されたりして死亡する例もある。
徒歩で避難する際、やむを得ず冠水した道路を進まなければならない場合も。長靴ではなく、脱げにくいひも靴を履き、両手が使えるようレインコートを着る。側溝や蓋の外れたマンホールを確認するために、つえやスキーのストックなどを持つ。岡本さんは「冠水した道路を長く歩くのは困難。避難所にこだわらずに、自宅近くに高い場所があれば、そちらに避難することも考えて」と話す。
避難所では新型コロナの感染の恐れがあるが、豪雨による危険が予想される場合は、避難を優先させることが大事だ。その際の対策として、東京大客員教授(防災行動学)の松尾一郎さんら有識者による「新型コロナウイルスと災害避難を考える会」は、マスクやアルコール消毒液、せっけん、使い捨てビニール手袋や体温計などを持参することを勧めている。