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[安心の設計 支え合い あしたへ]第4部 ワタシとシゴト<下>フリーランス もしもの備え 

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 フリーランスとして働いている人は、会社員の副業も含め約462万人。「雇われる働き方」以外の選択肢が広がってきた。ただ、仕事ができなくなった時のセーフティーネットが手薄といった課題もある。安心して働き続けるためには、どんな支えが必要なのだろうか。

手薄な公的保障

「雇用保険入れたら」 年金や健保も格差

喫茶店でパソコンを開き、仕事をする新美さん。働き方は合っているが、「働けなくなったらすぐに収入が減ってしまうことが不安」という(4月1日、千葉県内で)
喫茶店でパソコンを開き、仕事をする新美さん。働き方は合っているが、「働けなくなったらすぐに収入が減ってしまうことが不安」という(4月1日、千葉県内で)

 雇われない働き方を始めて4年目のフリーライター新美友那ともなさん(33)は2018年2月、病気やケガで働けなくなった場合にお金を受け取れる「所得補償プラン」に入った。

 一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」(東京)が有料会員向けに提供している団体割引のある保険だ。新美さんは、月1800円程度の掛け金で、月10万円を受け取ることができる長期のプランを選択している。

 企業のホームページ用のコラム執筆や、別のライターの記事の校正作業で生計を立てている新美さんの仕事場は、千葉県内の自宅や近所のカフェ。発注者とのやりとりは主にメールだ。「どのような仕事を引き受けるかや、作業時間を自由に決められるスタイルに満足している」という。

 ただ、もし、自分が体調を崩して働けなくなってしまったら、と時々考える。依頼された仕事に穴を開けてしまうことになるし、生活のための収入も途絶える。そんなリスクを意識している。

 雇われていないフリーランスに、雇用保険はない。仕事がなくなっても、失業給付を受け取りながら態勢を立て直すことができない。同協会が昨年12月~今年1月に行った調査で、「自己負担で雇用保険に加入できるなら加入したい」と約7割が回答した。

 「雇用されていてもいなくても、病気やケガ、老後の生活のリスクはあるのに、違いすぎない?」。新美さんは社会保障の“格差”に疑問も感じているという。

 例えば年金。会社員や公務員は「2階建て」の厚生年金に加入できて保険料も労使折半なのに対し、フリーランスは「1階建て」の国民年金のみで、保険料も自己負担だ。健康保険でも、会社員なら病気になった時にもらえる傷病手当金が、国民健康保険に加入するフリーランスだと基本的にはもらえない。

 新美さんは、両方の世界を知っている。大学卒業後、「いつか温かい家庭を築きたい」と、生活と仕事を両立しやすそうな公務員になった。しかし、市役所で配属された部署の残業は月100時間以上。土日も仕事で友達と遊びに行けなかったが、1か月休みなしで出勤している先輩を前に何も言えなかった。

 5年で退職した。フリーになって、実は手取り収入が増えた。だが、厚生年金や雇用保険の保険料が天引きされていない裏返しでもある。

雇用者中心の制度では…

 同協会代表理事の平田麻莉さん(38)は「育児や介護、病気などの事情で会社員として働き続けることが難しくなり、多様な働き方を求める人も増えている。雇用されている人を支えることが中心の今の社会保障制度は実情に合わなくなっている」と指摘する。

緩くつながる動き

共同受注、情報交換 スキル向上、育成も

オンラインでミーティングする「TETAU」のメンバー。フリーランスこそ、つながりが大切だという
オンラインでミーティングする「TETAU」のメンバー。フリーランスこそ、つながりが大切だという

 フリーランス同士がつながることで、助け合ったり、スキルを高め合ったりする動きも広がり始めた。

 和歌山県田辺市などで活動する「TETAU(てたう)」は、フリーランスのウェブデザイナーやライター、カメラマンら、いずれもリモートワークで働く11人を中心とした緩やかなチームだ。

 チーム名は、方言で「手伝う」の意味。個人では対応できない大きな案件を受注したり、得意なことで助け合ったりする目的で2016年夏に結成。地域情報を伝えるホームページの運営や、地元企業へのテレワーク導入支援など、地域の課題解決に向けた様々な事業を展開している。

 理事の森脇ろくさん(38)は、自身も子育てをきっかけにフリーランスとして働くようになった。「1人で様々な業務をこなすフリーランスは、働き過ぎたり、成長の機会をなかなか得られなかったりと共通の悩みがある。助け合い、高め合うことで、それぞれの可能性を広げたい」と話す。

 地域の人材を発掘し、育てる取り組みも始めている。会員になれば、ウェブ記事やプログラムの書き方、フリーランスとして働くために必要な知識を学べる講座に誰でも参加できる。スキルアップに応じ、段階的に仕事の担い手として参加していく仕組みだ。

 同県の山間部で暮らす信貴しぎゆかりさん(48)は4年ほど前、TETAUの講座をきっかけに、ホームページのデザインやプログラムの書き方を学び始めた。

 出産を機に自宅で働きたいと思い、独学で知識を身につけ、仕事をしてきた。「この仕組みで同じ働き方の仲間と情報交換できるようになり、学びの機会が増えた。オンラインですぐに相談でき、助け合えるので働きやすい」と笑顔で話す。

 ◎この連載は、板垣茂良、村上藍、粂文野が担当しました。

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2029997 1 ライフ 2021/05/05 05:00:00 2021/05/05 05:00:00 2021/05/05 05:00:00 喫茶店でノートパソコンを開き、仕事をするフリーライターの新美さん。「自分が働けなくなったら代わりがいないので、病気になった時などへの備えが充実するとありがたい」(千葉県内で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210504-OYT8I50025-T.jpg?type=thumbnail

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