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「推し活」の熱狂が日本を変える?…人はなぜ「沼に落ちる」のか

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「水溜りボンド」のグッズを手に、ファン仲間と記念撮影に納まる牧さん(前列中央)(2019年7月撮影、牧さん提供)
「水溜りボンド」のグッズを手に、ファン仲間と記念撮影に納まる牧さん(前列中央)(2019年7月撮影、牧さん提供)

 アイドルや声優・俳優などを熱狂的に応援する「()し活」が熱い。応援の対象は、力士からユーチューバー、ゆるキャラなどにも及び、関連商品も続々発売されるなど、盛り上がりをみせる。なぜ縁もゆかりもない人やモノを応援するのだろうか。

力士「沼」に落ちた幸せ、ハンドクリームも鬢付け油の香り

 「推し活」では応援対象を「推し」と呼び、深くハマることを「沼に落ちる」という。

 山上愛美さん(31)は、木瀬部屋の幕内力士、英乃海関が「推し」だ。「四つ相撲のセンスが抜群。おいしい飲食店の話などファンに気さくに話しかける優しさも魅力です」。英乃海関お薦めの焼き肉店と聞けば実際に行ってみる。本場所中は十両以上の取組をすべて録画するほどの相撲ファンで、「春場所は攻めの相撲がさえて顔つきも凜々(りり)しくなって……」。力士がつける鬢付(びんづ)け油と同じ香りのハンドクリームを愛用して気分を高めている。

 推し活はどれほど広がっているのか。ソフトウェア開発会社「ジャストシステム」(東京)が昨年行った調査で、「推し活をしている」と答えたのは10代で37・7%、20代で26・3%を占めた。

「オタク」脱し、気軽でポジティブなイメージに

 「推し」という言葉が注目され始めたのは約10年前のこと。「人類にとって『推し』とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた」の著者の横川良明さんは「推したいメンバー『推しメン』の略語。AKB48の飛躍で2010年頃から知られるようになった」と話す。

それまでのアイドルや漫画好きの人は「オタク」と呼ばれ、どこか暗いイメージだったが、「価値観の多様化でポジティブなイメージになった」と横川さん。情報化の進展で好みの人やモノを見つけやすくなり、対象もスターからユーチューバー、ゲームやアニメのキャラクターなどに広がった。

 「推し」といったカジュアルな言葉に促され、気軽に応援できる雰囲気に。ハマった後もSNSなどを通じて推しと交流しやすくなり、「沼」から抜け出せない人も増えたという。ここ数年で急速に盛り上がり、「アイドルを応援する女子高生を描いた『推し、()ゆ』が今年芥川賞を受賞したことは推し活が社会的に認知された象徴」と横川さんは語る。

「推し」でキャラ付け、トレンド入り狙う

 推し活アナリストで電通(東京)の猿渡輝也さんは「結婚などが幸せとは限らない。幸せは人それぞれで、推し活に生きる意味を見いだす人が増えている」と力説する。個性が重んじられる中、好きな人やモノのアピールはキャラ付け、自己表現になるという。

 最近の推し活の特徴は、従来のファンよりも積極的に推しを広報し、有名にしようとすることにある。グッズを大量に買い、SNSで推しの関連用語をトレンド入りさせ、推しへのメッセージを新聞広告に出すこともある。猿渡さんは「推しが注目されることで自分たちも世間から承認された気になるのでは」とみる。

「推し香水」を注文、メンバーカラーでコーディネート

 応援したいという熱い気持ちが、消費を後押ししている。注目を集めているのが、ゲームやアニメのキャラクターなど推しのイメージを表現し、オーダーメイドで作る「推し香水」だ。

 オリジナルの香りを販売する「ダンス」(神戸市)では、注文時の質問に対する回答を基に、その人のイメージに合った香りをブレンドする。4、5年前から「17歳で和装を好む」「腰まである銀髪」など変わった注文が増えたという。人気のアニメやゲームの登場人物をイメージした注文で、今では注文の8割は「推し香水」だ。

同店で推し香水を作ったアニメ好きの女性(30)は「推しがプリントされた服に香水をつけると、よりテンションが上がります」とうれしそうに話す。

 若者市場調査機関「シブヤ109ラボ」が行った、15~24歳の女性230人を対象にした調査(2019年)によると、推し活に使う年間費用は「15万円以上」と答えた人が最も多かった。

盛り上がる「応援消費」、サンリオや出版社も

うちわ用ケース、写真ホルダー、ペンライト用リボンなどがあるサンリオの「エンジョイアイドルシリーズ」
うちわ用ケース、写真ホルダー、ペンライト用リボンなどがあるサンリオの「エンジョイアイドルシリーズ」

 サンリオ(東京)は、推し活をサポートするグッズ「エンジョイアイドルシリーズ」を2019年5月から販売している。ライブグッズの定番うちわ用のケース、推しの写真を入れて持ち歩けるホルダーといった商品にハローキティなどのサンリオのキャラクターが入っている。累計出荷数は220万個、売り上げは16億円を超えるほどの人気という。

 出版不況の中、発行部数を伸ばしているのが男性アイドル雑誌だ。

 日本雑誌協会によると、集英社の「Myojo」は、20年1~3月の1号あたりの平均印刷部数は22万6667部だったが、同年10~12月は36万3333部に増加した。ライブやイベントの中止が相次ぎ、家で楽しめる推し活が広がったと考えられる。

コロナ禍収束したら「推し」消費が爆発?

 シブヤ109ラボ所長の長田麻衣さんは「応援消費」と表現。「特にZ世代(1990年代後半以降に生まれた若者)はAKB48の活躍で幼少期からアイドルが身近。東日本大震災を経て寄付やクラウドファンディングが当たり前になり、誰かを応援することへの出費に違和感がない」と話す。グループ活動をしているメンバー各自に割り当てられた色「メンバーカラー」で服や小物を選んで購入したり、特注のケーキを頼んで推しの誕生日会を開いたり、「楽しみ方は無限大」という。

 コロナ禍では、いつか推しに会える日のためにと「推し貯金」に励む人もいる。コロナが収束してイベントなどが再開されるようになれば、推しに会えなかった飢餓感を満たすために、応援消費が爆発的に増える可能性もある。

推し活で転職、「徳を積む」ことで前向きに

 推し活で人生が変わった人も多いようだ。

 「推しのユーチューブを見続けるうちに『動画編集がやりたい』と思って専門学校に通い、広告の撮影などを行う会社に転職できました」。2人組のユーチューバー「水溜りボンド」推しの牧美幸さん(24)は推し活で人生が変わった。友人も増えたといい、「周囲から『行動力がある』と言われるが、推しのおかげ」と声を弾ませる。

 推し活をする人の行動のベースに「徳を積む」という考えがある。「コンサートでいい席が当たるように」「推しにふさわしい人間になりたい」といった願いのため、日々善行を積むことを指す。

 牧さんは水溜りボンドが2019年の台風15号直後に千葉県でイベントを行った際、5万円程度寄付した。「今後、イベントのチケットが当選するなどいいことがあるかなと思って」。水溜りボンドの一人が同県出身だったことも、“社会貢献”を後押しした。

 全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラーの浮世満理子(うきよまりこ)さんは、推し活のメリットをこう説明する。「仕事に精を出したり、身だしなみを整えたり、推しは外面や内面を磨くきっかけになる。推し活には人生100年時代を楽しく生きるヒントがあるかもしれない」(読売新聞生活部・山村翠)

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2072019 0 ライフ 2021/05/23 08:41:00 2021/05/23 11:49:57 2021/05/23 11:49:57 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210520-OYT1I50083-T.jpg?type=thumbnail

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