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医療的ケア児の親 支援広がる

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 日常的にたんの吸引などが必要な医療的ケア児(医ケア児)の保護者向けに、働く場や居場所づくりなどの支援が進みつつある。医ケア児は推計で約2万人で、その保護者は世話にかかりきりで孤立することも多い。支援には社会とのつながりが欠かせない。(矢子奈穂)

仕事紹介、居場所づくり

 茨城県古河市にある、医ケア児や重度の障害児とその家族のための施設「Burano(ブラーノ)」。2018年4月、一般社団法人「ブラーノ」が日本財団の助成を受けて開設した。1階では看護師や保育士らに子どもを預けて有料の福祉サービスを受けられ、2階には保護者が働ける部屋がある。

 保護者が仕事を求める場合、ブラーノが紹介する。ブラーノと保護者が業務委託契約を結び、企業が外注したデータ入力などの仕事を保護者に依頼する仕組みだ。新型コロナウイルスの影響で、保護者が集まって働くのは休止中だが、現在、東京や茨城の母親11人が登録し、自宅で働く。

 同市の船橋 淳固じゅんこ さん(43)は利用者で、事務スタッフでもある。長女(10)の出産後、美容師の仕事をやめた。長女は酸欠状態で生まれ、栄養を直接胃に送る「胃ろう」の手術をした。特別支援学校の小学5年生で訪問教育を受ける。

 船橋さんは「産後から子どもの世話に追われる毎日。社会から切り離されたと感じた」と振り返る。知人の紹介で開設当初からブラーノを利用し、医ケア児を持つ保護者や保育士らと子育ての悩みなどを語り合っている。「心の支えですね」とほほ笑む。

 医ケア児の多くは自宅で生活し、たんの吸引などのケアは主に保護者が行う。保護者は子どもの世話で自分の時間を持てず、子どもの預け先が見つからずに離職してしまうなどの課題を抱える。

 同法人理事の秋山政明さんは「医ケア児の親が、健常児の親と同様、子どもを安心して預けて働ける社会にしたい」と語る。同法人は来年、栃木県小山市にも同様の施設を作る予定だ。

自治体でも

 自治体も動き始めている。東京都品川区は今年度、医ケア児の親子向けの居場所「インクルーシブひろばベル」を開設した。車いすで出入りでき、寝転べるマットやおもちゃ、光や音で心身をリラックスできる空間もある。看護師や保育士らが常駐し、相談もできる。運営は障害児を支援するNPO法人「フローレンス」に委託している。

 同区障害者福祉課長の松山香里さんは「相談の場や、医ケア児を持つ家庭同士での交流を求める声は多い」と話す。SNSによる仲間作りも始める予定だ。

 東京都世田谷区は4月、ふるさと納税などの寄付金を基に「医療的ケア児の笑顔を支える基金」を創設。医ケア児のきょうだいを支える取り組みや、災害時の支援体制強化に充てるという。8月には、医ケア児の家族の相談に応じる支援センターを開設する。

 医ケア児への支援を強化した「医療的ケア児支援法」が9月、施行される。国や自治体は、医ケア児や家族への適切な支援の責務がある。

 当事者らの団体「ウイングス医療的ケア児などのがんばる子どもと家族を支える会」の本郷朋博代表は「当事者が具体的な要望を行政などに伝えるのも大切。安心して子育てできるよう、支援の様々なアイデアが必要だ」と話す。

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