[幸せをつくる。 つんく♂さんの幸福論]声失い気付く…自分の気持ち次第

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 長引くコロナ禍で、ライフスタイルを見つめ直した人も多いのでは。連載「幸せをつくる。」では、幸福な暮らしのあり方を考察する。プロローグの今回は、ハワイに住む音楽プロデューサーのつんく♂さん(53)にオンラインで聞いた。喉頭がんで声帯を失ったつんく♂さんは、食道を震わせて声を出す食道発声で、自分らしく幸せに生きるヒントを話してくれた。

「宝物は、子どもの絵とか手紙とか。自分の声が残っているものも大切にしています」と話すつんく♂さん(提供写真)
「宝物は、子どもの絵とか手紙とか。自分の声が残っているものも大切にしています」と話すつんく♂さん(提供写真)

 コロナ下の暮らしでは、気軽に仲間と会ったり家族旅行に行ったりすることもしにくい。制約の多い生活ですが、不幸になったかと言えば、そうでもない。

 私は妻と3人の子どもと一緒にハワイで暮らしています。家族と「お正月はコロナで日本に帰れないねぇ」と残念がった夜でも、もう10歳にもなる次女が、ディズニーのキャラクターのぬいぐるみを抱えて眠っている姿を見たら、それだけで何とも言えない幸せを感じました。

 幸せには主に2種類あると考えています。一つは、自発的なものです。例えば、ラーメンをすすった瞬間に「あ~おいしい」と湧きたつ幸福感。もう一つは、自分の気持ちを切り替えることで得られるものです。例えば、現状を「つまらない」と考えるか、平凡な現状を「今こそ幸せだ」と考えるか、の違いです。

 8年前、喉頭がんが見つかり、「声帯を全摘出しなければならない」と医師に告げられました。「うそやろ?」。ショックでした。もう歌うことができない。しかし、医療技術のおかげで、命は失わずにすみました。愛する家族がそばにいます。今は感謝しかないですね。食道を使った発声法を学び少しずつ会話もできるようになりました。

「当たり前」取り戻す

 以前のようにしゃべりたいけれども、しゃべれない。不自由ですが、ふびんでも、不幸でもありません。幸せって誰かから与えられるものじゃない。自分の気持ち次第だと思うんです。

 病気をする前、特に独身時代は、食事と睡眠以外はほとんど楽器とパソコンの前にいました。充実していましたが、人間らしさを失っていたように思います。

 今は子どもと過ごす時間が増えましたし、妻と一緒にたわいもない会話をしながらスーパーで買い物をするのも楽しい。忘れていた「当たり前な感覚」を今、取り戻しているように思います。子どもから学ぶことはとても多く、家族との日常生活の中から生まれた曲もあります。

「好き」書き出して

 幸せを見つけることは、難しくありません。自分の「好き」を知ることです。

 釣りに興じる。韓流ドラマを「もう1本!」と見る。子どもと公園に行く――。何でもいいし、いくつあってもいい。何も特別なことではなく、自分の「好き」を書き出してみてください。小さなことでいいんです。その「好き」を体感した瞬間が、「幸せ」なんだと思います。

 「自分の好きなことが分からない」という人もいるかもしれません。もしかしたら、自分の気持ちに蓋をしているのかも? 他人と比べたり、恥ずかしがったりせずに、ぜひ素直に自分と向き合ってみてください。

 そして、「なぜ、その時間が好きなのか」を考えて、「言語化」してみてほしい。声を失って、SNSやメールなどで気持ちや考えを伝えることが増える中で、言葉の重みに改めて気が付きました。自分で考え、言葉を選び、短く伝える作業を続けていると、無駄なことも大切なことも見えてきます。

 私にとって好きなことは、やっぱり音楽です。ただ純粋に、これからも曲を作りたいと思っています。同じアジアである韓国の男性グループ「BTS」が、世界的に人気になっているのを見ると、「すごい!」って感動もするし、「悔しい!」とも感じます。日本から国際的なエンターテインメントを発信したい。まだまだ夢を追いかけていたいですね。(聞き手 矢子奈穂)

若者にエール送り続ける

近畿大の入学式で、スクリーンを使って新入生に祝辞を贈った(2018年4月、尾賀聡撮影)
近畿大の入学式で、スクリーンを使って新入生に祝辞を贈った(2018年4月、尾賀聡撮影)

 つんく♂さんは、未来を担う若者にエールを送り続けている。

 母校である近畿大の入学式ではプロデュースを担当するほか、新入生に祝辞を贈ってきた。これまでに、「幸せかどうかなんて、自分で決めるんだよ」「唯一無二人生」など、心に響く言葉を届けた。

 また、インターネットの投稿サイト「note」やテレビ番組などでは、「僕は凡人」と言い切り、駆け出し時代のことなどを伝えている。例えば、ヒット曲を目指してたくさんの曲を作ったとし、出世作「シングルベッド」の歌詞は、50ものパターンを書いたという。「音楽が好きだから続けられた」「好きを極めれば天職につながる」などと発信している。

          ◇

 1968年生まれ。大阪府出身。92年にロックバンド「シャ乱Q」のボーカルとしてメジャーデビュー。「ズルい女」などがミリオンセラーに。アイドルグループ「モーニング娘。」などのプロデューサーとしても活躍し、数多くのヒット曲を生み出す。

 2006年に結婚し、08年に双子の長男長女、11年に次女が誕生した。14年、喉頭がんのため声帯を全摘出した。25年の大阪・関西万博では、大阪府と大阪市が出展を目指すパビリオンのスーパーバイザーを務める。著書に「だから、生きる。」(新潮社)など。

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 連載「幸せをつくる。」へのご意見、ご感想をお寄せください。連絡先を明記のうえ、〒100・8055読売新聞東京本社生活部「幸せをつくる。」係へ。ファクス(03・3217・9919)、電子メール(kurashi@yomiuri.com)でも受け付けます。

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