憧れの「リトル東京」、展開図から作る都市模型

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 「いいことを教わったぞ」。算数の授業で展開図を習った時、小学4年生だった江坂 孝将(たかゆき) さんは小躍りしたくなった。「これでビルを作れるじゃないか」。あれから約20年。新宿駅や東京駅周辺の都市模型を紙で作り、ツイッターで人々を楽しませている「トシ」さんとは、31歳の会社員になった江坂さんだ。(紙WAZA編集長 木田滋夫)

巨大コラージュ、よく見ればチラシ…切り取りアート 79歳の創作

胸高鳴る大都会…「この街を作りたい」

都市模型制作者「トシ」さんこと、江坂孝将さんが作った、新宿駅東側から見た高層ビル群。建物の屋上には実物同様、様々な看板が掲げられている。(名古屋市緑区で)=稲垣政則撮影
都市模型制作者「トシ」さんこと、江坂孝将さんが作った、新宿駅東側から見た高層ビル群。建物の屋上には実物同様、様々な看板が掲げられている。(名古屋市緑区で)=稲垣政則撮影

 高校まで過ごした大分県日田市は、山に囲まれた町だ。家族で遠出すると、高速道路の先に見えてくる都会のビル群に胸が高鳴った。「ビルの輪郭が描く情景が好きで、都会に憧れていました。家では、もっぱら自分で好きな町を作るゲームで遊んでいました」

 小学5年生の夏休み。工作の宿題で、初めて本格的な都市模型を作った。パソコンで描いたビルの展開図を印刷し、切り貼りして土台に並べたものだ。今も大切に残してある。

 思春期になると、都会への憧れを形にすることはなくなったが、中部地方の自動車関連業界に就職後、交際相手のいる東京を訪ねたときのこと。大小のビルが織りなす大都会の情景に圧倒され、あの気持ちが湧いてきた。「この街を作ってみたい」

4年がかり、1000棟以上を組み立てる

 再現するのは新宿と決めた。「NHKニュースの時間に映る新宿のビル群は長年の憧れだったから」だ。

のりしろ部分に接着剤を塗り、貼り合わせていく。すべて手作業だ。
のりしろ部分に接着剤を塗り、貼り合わせていく。すべて手作業だ。
東京五輪のマークまで再現されている東京都庁
東京五輪のマークまで再現されている東京都庁

 展開図を応用したのは小学生時代と同じだが、仕事で使い慣れたビジネス用ソフトを駆使した。まず、インターネットの3次元地図「グーグルアース」や、建設会社のホームページでビルの寸法を調べ、表計算ソフトで2200分の1に換算。この数値をもとに、発表用資料作成ソフトで展開図を描き、紙に印刷したものを切り貼りして組み立てていく。

 再現する建物は1000棟以上。1棟ずつ採寸しては展開図を描く作業は「飽きとの闘い」で、何度も投げ出したくなる衝動に駆られた。ビルは箱形とは限らず、複雑な形の都庁は何度も展開図を描き直し、37個のパーツの集合体とした。2階建ての建物は模型では高さ3ミリほどしかなく、組み立てるのも一苦労だ。60センチ四方の樹脂ボードに1.3キロ四方の新宿が完成したのは2019年。作り始めてから4年がたっていた。

「私の家がある」…高い再現性に反響、それを励みに

都市型模型を製作するトシさん
都市型模型を製作するトシさん

 続いて手がけた大型作品は「2030年の丸の内」。建設予定の高層ビルは完成予想図から展開図を描き、実物より早く「 竣工(しゅんこう) 」させた。こちらの制作には2年を要した。

 制作中の楽しみは、作り手ならではの発見があることだ。同じ高層ビルでも、廊下の両側に客室が並ぶホテルはオフィスビルより厚みが薄いこと、1970年代に開発が進んだ新宿はコンクリート壁が目立つ「白っぽい街」だが、近年に再開発された丸の内はガラスで全体を覆ったビルが多い「青っぽい街」ということ……。「街を見比べると違いが見える。次は大阪や名古屋を作って東京と並べてみたい」

 作品を発表するツイッターには、「私の家があった」「コンピューターグラフィックスみたい」など、驚きの声が寄せられる。都市模型制作者「トシ」が誕生するきっかけになった交際相手は妻となり、今や誰より完成を心待ちにする存在だ。「作品を楽しんでくれる人がいることが何よりも励み。何があっても、『僕には都市模型がある』という自信につながっているんです」

スライドショーを大きな画面で見るには、 こちらから

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