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急な猛暑の到来のため、熱中症で救急搬送される人が増えている。とくに、高齢者や小さい子どもは注意が必要だ。熱中症を引き起こす脱水症状の一歩手前である「かくれ脱水」にいち早く気付き、適切に対処したい。(及川昭夫、福島憲佑)
慣れる前に猛暑
「今年は異例です」。医療関係者でつくる「教えて!『かくれ脱水』委員会」委員長で、兵庫医科大特別
服部さんによると、6月にもかかわらず記録的な暑さが訪れたため、体が暑さに慣れる「暑熱順化」が進んでいない人も多い。また、熱中症は脱水状態が進んで起きるが、症状が進行するまで脱水に気付かないこともあるという。
こまめに水分を
特に高齢者は、若い人に比べて体の水分量が少なく、喉の渇きも自覚しにくい。規則正しい食事を心がけ、1時間ごとにコップ1杯の水分補給など、喉が渇いていなくても、こまめに水分を取るようにする。トイレに行く回数を減らしたい人もいるが、脱水症を防ぐことが最優先だ。
高齢者は屋内でも熱中症にかかりやすい。袖や襟が広く、風通しのいい服を着る。加齢のために暑さに対する感覚が鈍くなる人もいる。必ず温度計を見て、室温を調整するといい。
早朝の軽い運動などで筋力を少しでも維持するとともに、汗をかく機能を取り戻すことが大切だ。「コロナ禍で自粛生活が続いていた人は特に心がけて」と服部さん。
大人が見守る
済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜さんによると、小さい子どもも脱水症を起こしやすい。新陳代謝が活発で水分を消費しやすい上、体温の調節機能が十分に発達していないからだ。
「喉が渇いた」などと言えない乳幼児や、遊びに夢中になって水分補給を忘れている児童に対しては、ふらつきやだるさが見られないかなど周囲の大人が注意して見守ることが必要だ。
もし脱水が疑われる場合はどうしたらいいのか。谷口さんは、薬局などで販売されている経口補水液で早めに水分を補給することをすすめる。補水液には塩分と糖分が含まれていて、水分の吸収が速い。谷口さんは「時間がたつと重症化する。気になる症状があるときは早めに医療機関に相談してほしい」とする。
エアコンを使う
気象予報士の蓬●大介さんによると、暑さはしばらく続きそうだ。「6月は異例の猛暑だった。7、8月も平年並みか高めで、9月も残暑が厳しいとみられる」と話す。(●は「くさかんむり」に「来」)
参考にしたいのが、環境省と気象庁がホームページなどで公表している熱中症警戒アラートだ。暑さ指数が33以上と予測される日に発表される。指数が28以上で「厳重警戒」、31以上になると「危険」とされる。蓬●さんは「節電を心配してエアコンを使わない人もいるが、無理をせず適切に使ってほしい」と話す。
対策グッズ 早くも好調

コロナ禍以降、初めて外出自粛要請がない夏を迎える街では、様々な熱中症対策グッズが売れている。
大手雑貨店「渋谷ロフト」(東京)では、専門コーナーなどに約350種類のグッズが陳列されている。今年は冷蔵庫や水で冷やして首に巻き付けるネックリングや、首にかけて首元に風を吹きかけるハンズフリーファン、水でしめらせて気化熱で頭を冷やす特殊素材を用いた帽子などが世代を問わず人気だ。今年はすでに6月中に欠品となる商品も出ているという。
約550種類そろえたという日傘も人気で、断熱材を使用することで体感温度を下げる新製品も登場するなど進化している。
◆熱中症予防のポイント
・エアコンの設定温度を柔軟に調整し、扇風機も活用する
・喉が渇いていなくてもこまめに水分補給する
・汗をかいた時は塩分の補給も
・屋外ではマスクをはずす
・外出時には日傘や帽子を着用し、少しでも体調が悪くなったら涼しい場所へ移動する
・熱中症警戒アラートが発表されている時は外出をなるべく控える
◎環境省や厚生労働省の資料などを基に作成
◆「かくれ脱水」が
疑われる主な症状
【高齢者】
皮膚がかさつくようになった
口の中がねばつき、つばをゴクンとのみ込めない
便秘になった
手の甲をつまみ上げて離した後、3秒以上跡が残る
靴下のゴムの跡が脱いだ後に10分以上も残る
【子ども】
泣いているが涙の量が少ない
熱があるのに汗をかかない
皮膚に弾力性がない
◎「教えて!『かくれ脱水』委員会」への取材を基に作成