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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    今のアメ車は燃費も良く、上質なつくり GM XT5クロスオーバー(Vol.531)

    • 試乗したのは、XT5の上級車種である「プラチナム」グレード。郊外の細い道も楽に運転することができた
      試乗したのは、XT5の上級車種である「プラチナム」グレード。郊外の細い道も楽に運転することができた

     米国のゼネラル・モーターズ(GM)の高級車種であるキャデラックから、新しいSUV(スポーツ用多目的車)が発売された。「XT5 クロスオーバー」は、SRXの後継車種にあたる。最新のキャデラックに共通するデザインの顔つきで、他メーカーと異なる存在感を持ちながら、その姿は威圧するような大きさではなく、日常生活にも使えるクルマだ。

     運転して気付かされるのは、全長約4.8メートル、車幅が約1.9メートル、全高が1.7メートルあるクルマであるにもかかわらず、軽快に走る身軽さだった。ハンドルを切っても、すっと切れ味がいい。かといって敏感ではないので、安心して操作できる。その理由は、前型のSRXに比べ、車体が90キロも軽く仕上げられているからだろう。それでいて、上質さは損なわれてはいない。

    • 長距離運転でも疲れなかった運転席
      長距離運転でも疲れなかった運転席
    • 荷室は、荷物を積み込みやすい整理された空間で、容量もたっぷりある
      荷室は、荷物を積み込みやすい整理された空間で、容量もたっぷりある

    • 静かで滑らかな加速をもたらすV型6気筒エンジンには8速オートマチックトランスミッションが組み合わされる
      静かで滑らかな加速をもたらすV型6気筒エンジンには8速オートマチックトランスミッションが組み合わされる

     エンジンは、排気量3600ccのV型6気筒で、最高出力は314馬力ある。車両重量が1990キロのXT5には、十分な性能と言える。実際、試乗をしていて加速に不満を覚えることはなかった。また、試しにアクセル全開で加速をさせてみたが、かつてのV型8気筒という大排気量エンジンを搭載していたころのアメリカ車のような、猛然たる加速はないものの、滑らかに素早く速度にのせていくところに洗練さがある。この滑らかな加速には、8速オートマチックトランスミッションによる多段変速も()きているだろう。

     アメリカ車は、燃費がよくないと長年いわれ続けてきたが、このV型6気筒エンジンには、走行状況に応じて6気筒と4気筒を切り替える気筒休止の機構が採用されている。一定速度で走行しているときには、この気筒休止が働いていたはずだが、切り替わりにはまったく気付かなかった。もちろん、停車すればアイドリングストップ機構が働く。

     燃費の改善には、モード切り替えの機能も効果をあげているはずだ。始動したときに標準仕様となるツーリングモードは二輪駆動で、走行中のエネルギーの無駄を減らすことができる。走行感覚もより軽やかだ。四輪駆動を選べば、いっそう安定感のある走りになる。四つのタイヤがしっかり接地し、そして駆動力を最適に調和させながら走っている様子が伝わってくる。さらに、スポーツモードを選ぶとハンドルの手ごたえがやや重くなり、乗り心地も少し硬くなってくる。それでも、快適さを損なわないところに、高級車銘柄であるキャデラックらしさが表れているのではないか。

    • 色合いがよく、見た目にも優しく美しい内装。最新の情報端末を利用できる機能性も備える
      色合いがよく、見た目にも優しく美しい内装。最新の情報端末を利用できる機能性も備える

     室内は、一目見ただけで優雅さに心をときめかされる。試乗した「プラチナム」という車種の淡い茶系の色合いがよく、ダッシュボードの周りのデザインもやわらかい。室内にいることを、快く感じさせる内装になっている。

     座席の座り心地もよい。ことに、後席の快適性は印象深かった。座席と床との差が十分に確保されているため、(もも)が座席できちんと支えられ、体を保持しやすく仕上げられている。後席背もたれを傾けられることが快適性につながると考えられがちだが、走行中は前後左右に体が振られやすくなるので、比較的背を立てて座れると、体に余計な緊張をさせず、楽に長時間を移動することが可能になる。よく作り込まれた後席だ。

    • 試乗で印象深かったのが、正しい姿勢で座ることのできる後席の座り心地だった
      試乗で印象深かったのが、正しい姿勢で座ることのできる後席の座り心地だった
    • 天井いっぱいに広がるガラスサンルーフが開放感をもたらす。もちろん、全面をサンシェードで覆うことができる
      天井いっぱいに広がるガラスサンルーフが開放感をもたらす。もちろん、全面をサンシェードで覆うことができる

    • カーナビゲーション画面には、後退時に後方の映像や、真上からクルマを見下ろす画像が映し出され、車庫入れなどに便利
      カーナビゲーション画面には、後退時に後方の映像や、真上からクルマを見下ろす画像が映し出され、車庫入れなどに便利

     カーナビゲーションについては、「アップルカープレイ」や「アンドロイドオート」に対応しており、これを活用して地図画面を利用する方式となっている。今回は、アップルカープレイを利用したが、まったく不自由なく目的地に到着することができた。ただし、アップルの音声入力機能を使った設定は、今回はうまく機能させられなかった。とはいえ、情報端末の使い方が時代に適応した内容になっていることを実感することができた。

     今回の試乗で改めて実感するのは、もはやかつてアメ車と国内で揶揄(やゆ)された、燃費が悪く、ハンドルが落ち着かないようなあいまいな走行感覚ではないということだ。かといって、ドイツ車のようにごつい感触でもない。アメリカも日本も、交通の速度域はほぼ同じである。似た交通環境で最適な走行性能と快適さを両立させているのが今のGMであり、アメリカの高級車の象徴であるキャデラックも、肩肘を張らず日々快適に使える上質なクルマという(うれ)しさを持つに至っている。

     先入観なしに、一度XT5のハンドルを握ってみることを勧める。

    2017年11月21日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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