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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    女性にやさしいクルマ…課題も残る  ダイハツ「トコット」(Vol. 551)

    • 親しみやすく、また視界の確保など実用性でも効果的な外観デザイン
      親しみやすく、また視界の確保など実用性でも効果的な外観デザイン

     ダイハツの「ミラ トコット」は、主に若い女性へ向けた新登場の軽自動車である。社内の女性開発者チームが中心となって、女性の感性に合い、運転に不慣れな人にも使いやすい、理想的な軽自動車を目指したという。

     外観を見ると、レトロな四角いデザインながら、角の部分が丸みを帯び、やさしい印象だ。窓も大きいため運転席からの見晴らしがよいだけでなく、車両感覚もつかみやすい。車体の色も、パステル調のやさしい色を含む8色を基本に、バンパーと屋根に別の色を使うツートンも選べる。窓ガラスはUV(紫外線)カットで、日焼けを抑えてくれる。

     内装も、親しみやすい仕立てだ。室内デザインは簡素で、スイッチなどの操作もしやすく、メーター類も見やすい。座席は明るい色でありながら、汚れにも配慮している。座面と背もたれは、色を微妙に変えたツートンになっている。

    • 前席は十分な寸法があり、形状もよく、男性でも腰を落ち着かせて座れる
      前席は十分な寸法があり、形状もよく、男性でも腰を落ち着かせて座れる
    • 後席はクッションが硬く、座面の奥行きがやや足りないため座りにくい
      後席はクッションが硬く、座面の奥行きがやや足りないため座りにくい

     クルマに乗り込んで好ましく思えたのは、たっぷりとした寸法で、形状的にも体を上手に支えてくれ、座り心地もよい運転席だ。身長167センチの筆者もゆったりと座ることができた。一方、後部座席は、クッションが硬く、また座面も奥行きが不足気味で体をうまく支えられない。前席のつくりと比べると、だいぶ差がある印象だ。

    • ドアは、90度近くまで大きく開く
      ドアは、90度近くまで大きく開く
    • 後席の背もたれは分割式ではないが、前方へ倒せば荷物の積載量を増やすことができる
      後席の背もたれは分割式ではないが、前方へ倒せば荷物の積載量を増やすことができる

     走り出すと、ハンドル操作がずいぶん軽い。日常的な運転で、路地を曲がったり、駐車場に止めたりする際にハンドルをたくさん回す場合でも、女性が操作しやすい軽さにしたとのことだ。操作時に、タイヤが路面と接している感覚もよく伝わってくる。

    • 簡素なデザインで、わかりやすく、操作しやすい運転席。前方の視界もよい
      簡素なデザインで、わかりやすく、操作しやすい運転席。前方の視界もよい

     フロントウィンドーの傾斜角度が立ちぎみになった分、前方の見晴らしがよく、混雑した市街地を走るうえで死角が少なく安心できるだろう。ただし、ルームミラーの取り付け位置がやや低く、間近の信号機や道路案内標識などを確認しにくいときがある。

     運転経験の少ない女性でも安心して利用できるクルマを目指した成果は、年配にも使いやすい万人向けの作りになっていると感じた。

     しかしながら、走行性能の面では早急に改良をして欲しい点もあった。

     まず、走行安定性がよくない。一般公道を制限速度で走っている場合でさえ、真っすぐ走るときもカーブを曲がるときも、ハンドル操作に神経を集中し、進路を修正しなければならなかった。かつて軽自動車の高速道路における制限速度は時速80キロであったが、現在は登録車と同じ時速100キロで走行できるようになっている。この欠点は、高速道路ではより鮮明になる。トコットが、たとえ市街地での日常的な利用を中心に開発されたのだとしても、走行全般における安定性は、安全や安心なクルマの絶対条件になる。

    • 純正のカーナビゲーションは別売り。注文装備しないと、後退時のカメラ映像は利用できない
      純正のカーナビゲーションは別売り。注文装備しないと、後退時のカメラ映像は利用できない

     走行安定性に欠けるのは、前輪サスペンションのスタビライザーと呼ばれる安定性を保つ部品が省かれており、その影響が大きいのではないかと推測している。

     もう一点は、走行中の騒音が大きいことだ。騒音の程度は、防音材などの使用が制約される軽商用車に近いのではないかと思われるほどうるさく、市街地から高速道路まで、騒音に全身を包まれる。これでは、トコットで外出するたびに苛々(いらいら)させられてしまうのではないか。

     毎日のように使われることの多い軽自動車であればこそ、走りの確かさと快適性は十分配慮されるべきだ。女性のみならず人にやさしいクルマづくりの志は素晴らしいが、クルマが安全に走るという基本を後回しにされては困る。

    2018年09月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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