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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    PHVを超えたクルマ ホンダ「クラリティ PHEV」(Vol.556)

    • モーター走行を存分に楽しめるプラグインハイブリッド車だ。操縦安定性にも優れる
      モーター走行を存分に楽しめるプラグインハイブリッド車だ。操縦安定性にも優れる

     ホンダの乗用車「クラリティ」には、燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の3種類があり、日本ではFCVとPHVが販売されている。この連載の496回で、FCVに試乗した様子を伝えたが、今回の「クラリティPHEV」は、前回よりも大変印象の良い仕上がりだった。

     このクルマがPHVではなく、あえて「PHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)」と名乗るのは、よりEVらしさを強調したクルマであるからだろう。実際、モーターのみによるEV走行は、JC08、WLTCどちらのモード測定値でも100キロを超えている。トヨタ自動車の「プリウスPHV」の68.2キロを大きく上回る。また、時速160キロまでモーターのみで走行できる能力を持つので、比較のためHV(ハイリッド車)モードに切り替えた一部区間を除き、モーター走行に終始する状況だった。

    • デジタル速度計の青の表示範囲でアクセルを調整すると、モーター走行を持続できる
      デジタル速度計の青の表示範囲でアクセルを調整すると、モーター走行を持続できる
    • シフトスイッチの先に、走行モードの切り替えスイッチがある。HVボタンを長押しすると、チャージモードとなりリチウムイオンバッテリーに充電できる
      シフトスイッチの先に、走行モードの切り替えスイッチがある。HVボタンを長押しすると、チャージモードとなりリチウムイオンバッテリーに充電できる

    • 4ドアセダンとして十分な容量と思える荷室
      4ドアセダンとして十分な容量と思える荷室

     モーターによる発進・加速は力強く、極めて滑らかで、非常に快適だ。EVが、単に環境性能を満たすだけでなく、優れた走行性能や卓越した快適性を持つことを、「クラリティPHEV」の走りから感じとることができる。

     EVが静粛性に優れることは周知の事実だが、このクルマは、さらにモーター走行時の静粛性を高めるため、フロントウィンドーとサイドウィンドーに遮音機能付きガラスを採用している。それにより、高速道路へ入ってもタイヤ騒音や風切り音がかなり抑えられ、快適な移動を続けることができる。一方、後席に座ると荷室側から騒音が客室へ入ってきて、前席と後席との快適性の差に驚かされた。

    • エンジンルーム内は、エンジンと制御ユニットでぎっしり詰まっている。その下に駆動モーターがある
      エンジンルーム内は、エンジンと制御ユニットでぎっしり詰まっている。その下に駆動モーターがある

     HVモードに切り替えても、エンジンが始動する様子はよほど気を付けていないとわからない。そしてエンジンが掛かっていてもモーター走行だけではないかと思うほど静かさが保たれる。これも、遮音機能付きガラスの効果なのだろう。もちろん、強くアクセルペダルを踏み込めばエンジン回転数が高くなり、エンジン音が耳に届く。だが、通常走行であれば、モーター走行なみの快適性が続くことになる。

     そこまでモーター走行にこだわったPHVなので、モーター走行をより上手に使うための工夫が、メーター表示とペダルに設けられている。

     メーター表示では、モーター走行域が青色で示され、青色区間を維持するようにアクセル操作をすれば、エンジンを起動しないで走ることができるのだ。アクセルペダルは、踏み込みが2段階になっていて、EV走行からHV走行にする時は、1段、深く踏み込む必要がある。急加速する場合でも、この2段階設定により、もう1段階ペダルを踏み込まなければ、モーター走行の範囲内で収まるようになっている。

    • 床が低く、姿勢よく座れる後席の座り心地は良い。ただ、前席に比べて走行中の騒音が気になる
      床が低く、姿勢よく座れる後席の座り心地は良い。ただ、前席に比べて走行中の騒音が気になる

     一方、高速道路を走行する場合には、エンジンだけで走ることもできる。ほぼ一定の速度で走る高速道路では、エンジンを使ってもそれほど燃費が悪化しないからだ。ガソリンエンジンは、排気量が1500ccだが、高速走行するには十分な馬力を備えている。

     後席は3人掛けとなり、プリウスPHVの2人掛けに比べ、実用性は高い。そのうえ、モーター走行時に使うリチウムイオンバッテリーが、前席と後席の下に配置されていて、後席の足元には余裕があり、座り心地は快適だ。残念なのは、先にも書いた騒音が後席は大きいことだ。

     荷室は、クラリティのFCVに比べ、水素タンクなどがないため広くて実用的だ。

    • 室内のつくりは、先に発売されたFCVと同じだ
      室内のつくりは、先に発売されたFCVと同じだ
    • 運転席は十分な空間が確保され、座席の中央に適度に張りがある革を使い、快適な座り心地
      運転席は十分な空間が確保され、座席の中央に適度に張りがある革を使い、快適な座り心地

     結論からして、クラリティ3車種のうち、このPHEVがもっとも使い勝手のいいクルマとなっている。年間販売計画1000台という数字になっているのは、控えめな数字に映る。

    2018年11月20日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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