使い勝手の良い機能が充実、ただし課題も ダイハツ「タント」(Vol.575)

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新型タントは、DNGAを採用した第1弾のクルマで、こちらは自然吸気エンジンを搭載したXグレード
新型タントは、DNGAを採用した第1弾のクルマで、こちらは自然吸気エンジンを搭載したXグレード

 軽自動車で根強い人気を誇るのが、全高1.7メートルを超えるスーパーハイトワゴンと呼ばれる車種だ。これを最初に打ち出したダイハツ工業の「タント」が、フルモデルチェンジをした。

 タントは、子育て家族を応援することを基本発想に開発され、人気を得た。4代目となる新型は、家族の枠を超え、若い世代や高齢者といった幅広い層をターゲットにして開発がなされた。その結果、運転者だけでなく、同乗する高齢者らも乗降しやすい装備の開発や、福祉車両の充実などにつながった。

 今回試乗したのは、自然吸気エンジンのXグレードと、ターボエンジンのカスタムRSである。装備により、標準車とカスタムという二つのタイプに分かれ、さらに自然吸気エンジンとターボエンジンが各グレードで設定されている。加えて、前輪駆動(FF)、四輪駆動(4WD)も選べるが、今回試乗したのはどちらもFF車だった。


カスタムは、標準車のタントとは別の顔つきを持つ
カスタムは、標準車のタントとは別の顔つきを持つ

 自然吸気エンジンは燃焼効率が改良され、これに新しくギア駆動を追加したCVT(無段変速機)と組み合わさって発進に力強さが加わり、ターボエンジンでなくてももたつくことがなくなった。市街地走行を想定した時速40キロまでは素早く加速していく。その勢いのよさに驚いた。一方、一度速度が落ちてから再び加速する際には、エンジン回転数が高まってもなかなか思い通りの速度に到達してくれず、苛立(いらだ)ちを感じる場面もあった。

 ライバルのスズキでは、自然吸気エンジンにモーター機能付き発電機を加えることで再加速を補っている。スズキ以外の各社も、軽自動車で廉価な価格帯となる自然吸気エンジンへの電動化の導入を検討してほしいと思う。

フロントガラスが大きく前方の見通しは良い。その代わり、ルームミラーで後方確認するときには大きく見上げなければならない
フロントガラスが大きく前方の見通しは良い。その代わり、ルームミラーで後方確認するときには大きく見上げなければならない

 一方、ターボエンジン車は、ターボチャージャーによる過給が比較的低い回転数でも行われるので、アクセルペダルをひと踏みすれば思い通りの速度に達する。それなのに、燃費は自然吸気エンジンと1リットルあたり1.2キロ(WLTCモード)しか違わないので、ターボエンジン車の方が魅力的といえる。価格差も、標準車とは10万円弱だ。

 車高が高いスーパーハイトワゴンで気になるのは、カーブなどで車体がふらつきやすいことだ。新型ではDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれる新しい開発手法により、操縦安定性を高める改良がされた。やや突っ張ったような乗り心地にはなるが、街角を曲がったり、左右へカーブを切り返したりしたときにも、車体のふらつきが抑えられていた。カーブを曲がるときにふらつきやすいホンダ「N‐BOX」とは雲泥の差だった。

後ろの座席は、左右別々に、これだけ大きく前後移動をさせることができる。前寄りにしても、ちゃんと座ることが可能
後ろの座席は、左右別々に、これだけ大きく前後移動をさせることができる。前寄りにしても、ちゃんと座ることが可能
後席の背もたれは、分割して前方へ倒すことができ、荷室の広さを調整できる
後席の背もたれは、分割して前方へ倒すことができ、荷室の広さを調整できる

前後席のドアを同時に開けると、間に支柱がないダイハツ独自の「ミラクルオープンドア」
前後席のドアを同時に開けると、間に支柱がないダイハツ独自の「ミラクルオープンドア」

 タントは、2代目から助手席側のドアと、その後ろのスライドドアを同時に開けると、間に支柱のない開口部が広がるミラクルオープンドアという構造になっている。これはまだ他社では採用されていない。この構造を最大限に生かすため、新型では、運転席を後席近くまで大幅に下げることができるようにした。これによって、助手席を前方に動かせば、室内中央部分に移動空間ができ、車内で運転席から後席へ移動し、後席にいる子供と一緒に歩道側へ乗り降りられるようになった。

新型タントの特徴の一つ――運転席を後席近くまで下げ、助手席を前方に移動すれば 運転席から後席を通り歩道側に降りることができる
新型タントの特徴の一つ――運転席を後席近くまで下げ、助手席を前方に移動すれば 運転席から後席を通り歩道側に降りることができる

 ほかに、高齢者の乗り降りを手助けする機能として、ミラクルオープンドアの開閉に応じて、同ドア下にステップ部分が出るなど、格納される装備を追加注文できるようになっている。

 最後に、ぜひ改良してほしい箇所がある。正しい運転姿勢の確保に不可欠なハンドルのテレスコピック(前後調節)機構がいまだ採用されていないことだ。各種の安全運転支援機能がついていながら、テレスコピックがないのは理解できない。ホンダ「N‐WGN」は採用しており、軽自動車でも採用可能なはずだ。安心・安全の面における優先順位の再確認をしてほしいと切に思う。

プロフィル
御堀 直嗣( みほり・なおつぐ
 1955年、東京都生まれ。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。乗馬などを楽しむアクティブ派でもある。

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750160 0 インプレッション 2019/08/20 05:20:00 2019/09/11 15:33:47 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190816-OYT8I50027-T.jpg?type=thumbnail

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