文字サイズ
    古今の作家を巡って専門家と読者からの感想、意見を紹介します。

    どっち派? 野球とサッカー

     スポーツは時代を映す鏡です。梶原一騎原作『巨人の星』に、「努力すれば報われる高度成長期の日本を見た」=横浜市の木村賢治さん(50)=という声をはじめ、今回はサッカーと野球にまつわる“自分史”をつづった投書が多く寄せられました。

    野球…緊迫の舞台裏描く名作

    • 1979年の日本シリーズ第7戦。9回2死2、3塁、広島の投手・江夏が近鉄の打者を三振に仕留めた瞬間(大阪球場)
      1979年の日本シリーズ第7戦。9回2死2、3塁、広島の投手・江夏が近鉄の打者を三振に仕留めた瞬間(大阪球場)

     静岡市の竹内久美子さん(57)のお薦めは、赤坂英一著『2番打者論』。「2番の役割はバントという固定観念をひっくり返してくれるエピソードが満載です」

     野球ノンフィクションの名作といえば、山際淳司著『江夏の21球』(角川新書)。岐阜県八百津町の細江隆一さん(50)は、「私もテレビで見ていたはずですが、この本で初めて緊迫した舞台裏を知りました」。山口県周南市の奥村省司さん(58)も、「控え投手を用意させた広島・古葉監督と江夏の心のざわめき。息詰まる人間ドラマです」。

     野球を一層面白くする1冊として、二宮清純著『最強のプロ野球論』(講談社現代新書)を挙げた兵庫県猪名川町の西条武俊さん(73)は、「打者や投手のフォームが詳しく分析されていて感心します」。

     国民的野球マンガといえば、46年に及ぶ連載が終わった水島新司作『ドカベン』(秋田書店)。千葉県松戸市の藤村龍哉さん(60)は、「天才だが控えめなヒーロー山田太郎と、彼を取り巻く多彩なライバルに夢中になりました」。

     同じく『野球狂のうた』を推す神奈川県横須賀市の佐藤良美さん(65)は、「弱小チームの奮闘に感激し、私たち高校の将棋部OB会は、作中人物をまねた草野球チームを作りました」。同封の写真には、ユニホーム姿のナインが勢ぞろい。すごい!

     マンガでは、あだち充作『タッチ』も人気でした。神戸市の清水克美さん(51)は、「双子の野球少年と幼なじみの少女のやりとりがうらやましかった」と振り返ります。

     最後に異色のノンフィクション、関川夏央著『海峡を越えたホームラン』を薦めるのは、静岡県磐田市の宮崎健一さん(68)。「日韓両国で活躍したプロ選手たちの活躍と、その裏にあった苦闘を伝え、優れた比較文化論になっています」

    野球

     19世紀前半に米国で生まれ、1876年にメジャーリーグ(現在のナショナルリーグ)が発足した。70年代初めに日本に伝えられ、90年代後半から「ベースボール」に代わって「野球」(野原で行う球技の意)という和名が普及した。捕手だった俳人の正岡子規は一時期、幼名の「升」(のぼる)をもじって「野球」(のぼーる)という雅号を用いていた。

    サッカー…勝負の世界“心”が必要

    • W杯ロシア大会の日本対セネガル戦。後半に本田圭佑が同点ゴールを決めた瞬間(6月24日=現地時間、ロシア・エカテリンブルク)
      W杯ロシア大会の日本対セネガル戦。後半に本田圭佑が同点ゴールを決めた瞬間(6月24日=現地時間、ロシア・エカテリンブルク)

     まずはやっぱり来ました!高橋陽一作『キャプテン翼』(集英社)。和歌山市の田中克則さん(39)は、「これがあれば世界のサッカーファンとの会話で困ることはありません」と断言します。東京都昭島市の高橋聖子さん(39)も、「サッカーマンガといえばこれ」と確信をもって書きます。

     一方、サッカーの奥の深さをじっくりひもとく本を2冊推薦してきたのは、水戸市の長谷川庸煕つねひろさん(60)。細川周平著『サッカー狂い』は、音楽学者による異色のサッカー論。「1974年のW杯でオランダが採用した<トータルフットボール>戦術を記号論的に解釈するなど、その斬新さには大いに共感します」。もう1冊は、中村敏雄著『オフサイドはなぜ反則か』(平凡社ライブラリー)。「オフサイドのルールは、ゲームを早く終わらせないためで、祭りのイベントとして始まったサッカーの起源を示しています。スポーツルール学を提唱する著者の力作です」

     最新のトレンドを紹介する本も寄せられました。山口市の武波里紗さん(39)は、テレビ東京FOOT×BRAINプロジェクト編『フット×ブレインの思考法 日本のサッカーが世界一になるための26の提言』(文芸春秋)を推します。「スタジアムができ、街が生まれる。そんなサッカーの未来を教えてくれます」

     長谷部誠著『心を整える。』(幻冬舎文庫)を愛読するのは、埼玉県熊谷市の板倉愛子さん(54)。「勝負の世界には、技だけでなく“心”が必要とされることを学びました」

     長崎市の河村健郎さん(52)のイチ押しは、はらだみずき著『サッカーボーイズ』シリーズ(角川つばさ文庫)。「思春期の子どもたちの活躍を通じて、スポーツを楽しむ原点を考えさせられました」。あさのあつこ著『バッテリー』(角川文庫)と並ぶ青春スポーツ小説の定番です。

    サッカー

     世界の多くの地域ではフットボールと呼ばれる。丸い球を蹴って遊ぶゲームは紀元前から世界各地にあったが、19世紀イングランドで近代的なスポーツとして成立した。ルール統一のために協会が作られ、当初は「協会式フットボール」(association football)と呼ばれた。サッカー(soccer)は「association」が縮まった言い方。

    2018年08月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク