文字サイズ
    古今の作家を巡って専門家と読者からの感想、意見を紹介します。

    どっち派? 将棋と囲碁 

     好勝負かと思われた「囲碁の本VS将棋の本」ですが、ふたを開ければ、投稿数で将棋が囲碁を圧倒しました。詳しいルールを知らなくても楽しめる本が将棋に多いからでしょうか。そこで今回は、囲碁派に助っ人を用意しました。勝負の行方やいかに!

    将棋…師弟愛や波乱万丈の生涯

    • 名手・本因坊秀哉(左)と天才・村山聖(右)の一騎打ち?
      名手・本因坊秀哉(左)と天才・村山聖(右)の一騎打ち?

     群を抜いて人気だったのは、大崎善生著『さとしの青春』(角川文庫)。羽生善治永世七冠のライバルで29歳で早世した伝説の棋士・村山聖を描いたノンフィクションです。

     東京都小平市の大沢裕美さん(47)は、師匠の森信雄七段との師弟愛に心を打たれました。「寒い日に体調のすぐれない弟子の手をこすって温めてあげる師匠が忘れられません」。岐阜県八百津町の細江隆一さん(50)も、「幼少から難病に侵され、残された時間が少ないと知りつつ、それでも棋士として上に行きたいと強く願う姿に感動しました」。


    • 『真剣師 小池重明』(幻冬舎アウトロー文庫)
      『真剣師 小池重明』(幻冬舎アウトロー文庫)

     団鬼六著『真剣師 小池重明』(幻冬舎アウトロー文庫)の主人公も実在の指し手ですが、舞台は賭け将棋。破天荒な才能を持ちながら放浪を繰り返し、破滅へと向かう人生は鬼気迫るものが。茨城県日立市の田所秀之さん(58)は、「将棋はまさに勝負の世界。そのダークサイドをのぞき見る気分です」と書きます。

     小説では栃木県佐野市の蓮見晴義さん(43)が推す、橋本長道著『サラの柔らかな香車』(集英社文庫)を。「天才少女を巡る喜怒哀楽が三人称の視点で語られます。将棋を知らなくても楽しめます」


    • 『天才棋士 加藤一二三 挑み続ける人生』(日本実業出版社)
      『天才棋士 加藤一二三 挑み続ける人生』(日本実業出版社)

     棋士自身が書いた本からは、まず升田幸三著『名人に香車を引いた男』(中公文庫)。埼玉県北本市の斉藤正敏さん(52)は、「波乱万丈の生涯に引き込まれました」。続いて升田の後継者と言われる通称「ひふみん」こと加藤一二三著『天才棋士 加藤一二三 挑み続ける人生』(日本実業出版社)。茨城県日立市の中郡ちゅうぐん久夫さん(57)は、「40歳を過ぎて名人位を取った努力の人。私にとってのヒーロー」だそうです。

     そして羽生善治著『決断力』(角川新書)。新潟市の早川和雄さん(63)は、「将棋にまつわる『狂気』を自覚しつつ、それに取り込まれない常識を兼ね備えた努力家。人生のヒントが詰まっています」。

     最後に、作家がアマチュアの視点で書いた、山口瞳著『血涙十番勝負』(小学館)を。神奈川県横須賀市の佐藤良美さん(65)は、「飛車落ちで挑んだプロへの畏敬の念と将棋への愛が詰まった熱戦の記録に涙しました」。棋界の奥の深さをあらためて実感させてくれます。

    囲碁…観戦記の手本、AIに衝撃

     一手一手にドラマがある将棋と違い、囲碁は長期的な戦略眼が妙味。だから物語になりにくいのかもしれません。そんな中でのイチ押しは、川端康成著『名人』(新潮文庫)。不世出の囲碁棋士で家元制最後の名人だった本因坊秀哉しゅうさいの引退対局を冷徹な筆でつづった名作です。

     宮崎市の野村寛さん(67)はアマ七段格で、この本に触発されて地元紙に観戦記を書き始めたそうです。「囲碁を知らない人でも読める観戦記のお手本です」

    • 『ヒカルの碁』(集英社文庫)
      『ヒカルの碁』(集英社文庫)

     そして、この作品を落とすわけにはいきません。ほったゆみ原作、小畑健漫画『ヒカルの碁』(集英社文庫コミック版)。主人公ヒカルは平安時代の天才棋士の霊の命じるままに碁を打ち始めます。埼玉県上尾市の平山ちやこさん(45)は、「熱心に読んでいたのにルールはサッパリわからず……。でも、面白い!」。ご安心を。私たちの同僚の一人も、まったく同じことを言っていました。これぞ名作の条件かも。


    • 『素子の碁 サルスベリがとまらない』(中央公論新社)
      『素子の碁 サルスベリがとまらない』(中央公論新社)

     千葉県柏市の香川智哉さん(33)が推薦するのは、新井素子著『素子の碁 サルスベリがとまらない』(中央公論新社)。作家でアマチュアの著者が上級者になるまでの日常がユーモラスに描かれています。「肩の力を抜いて碁の面白さを思い出したい時に最適の一冊です」

     いわゆる技術書ですが、兵庫県川西市の川口正浩さん(80)が最近の話題本として推すのが、大橋拓文著『囲碁AI時代の新布石法』(マイナビ出版)。「世界最強の棋士を負かすソフトの登場は衝撃でした」。泉下の客となったいにしえの天才たちも、うかうかしていられません。


    • 『盤上の夜』(創元SF文庫)
      『盤上の夜』(創元SF文庫)

     今回は囲碁本の投稿が少なかったので、最後に本紙の囲碁担当(律)記者のお薦めを紹介します。宮内悠介著『盤上の夜』(創元SF文庫)。四肢を失った女流棋士を通して「ゲームとは何か」という深遠なテーマが店主には魅力でした。壮大なスケールのSFをぜひ楽しんでください。

    2018年09月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク