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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『画家たちの昭和』 中野淳著

     昨年3月に死去した画家の著者には、戦中から戦後まもない頃の洋画界を回想した『青い絵具の匂い 松本竣介と私』(中公文庫)という著作がある。その続編に当たる遺稿と、雑誌などに発表した文章を収めた。

     若き日に兄事した松本竣介をはじめ、麻生三郎、岡鹿之助など数多くの画家、彫刻家らの言葉や表情が印象深く描かれる。それは前著と同じく、そのまま美術史の貴重な証言となった。

     絵画投機ブームなど時代の波に翻弄ほんろうされた画家もいた中、下町の運河風景や家族像を黙々と描き、50歳を過ぎてから武蔵野美大で教えた。画業を語る謙虚で飾らない言葉は、アルチザン(職人)であることに徹し続けた著者らしい。個展会場でお会いした時の温顔が、つい昨日のことのように思い出される。(中央公論新社、3000円)(高)

    2018年06月20日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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