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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『ファシスト的公共性』 佐藤卓己著

     ぎょっとするタイトルはポピュリズムへの警鐘である。プロパガンダ研究の泰斗である著者は、第2次大戦における日独の総力戦体制と戦後の変容を、歴史家の視点から比較検証し、ラジオなどのメディアを通じた情報操作が、市民の「参加」と「共感」を軸に、ファシズムを出現させた過程を明らかにする。

     本書は、過去25年間に発表された論文を改稿集成したものだが、今日の「ポスト真実トゥルース」を巡る議論を先取りしている。フェイク・ニュースが人々の政治行動を左右する状況は、既に戦前の日本にもあった。

     ファシズム的寡頭政治の再来を防ぐには、「情報を集めることより、俗ウケを狙った不正確な情報を取り除く作業こそが重要になる」。教育的で未来志向の歴史学が提唱されている。(岩波書店、2600円)(良)

    2018年07月11日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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