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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『漱石の地図帳』 中島国彦著

     武蔵野台地を大小様々な川が浸食してできた東京は実は、丘と谷、坂の多い街だ。現在の地形ブームが訪れる100年前、この地の特徴を生かして小説を書いた作家がいた。夏目漱石だ。

     漱石研究の第一人者による本著は、起伏に富んだ東京・山の手の地形を生かして漱石が創作したことを読み解く。『三四郎』の主人公とヒロイン美禰子の淡い恋に、東京帝大のある本郷台地や池、川の存在がいかに彩りを与えたか。二つの台地の存在が微妙に人間関係に影を落とす『それから』。東京の住民を伝統的に区分する山の手(台地)と下町(低地)の関係を変えた市内電車の拡大が、作中に書き込まれていること――。

     平面の紙の本に書き留められながら、立体感を持って迫る漱石の小説の魅力の秘密に触れさせる。(大修館書店、2100円)(待)

    2018年07月18日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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